表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十一部 第一話 その新たな出会いがあることを僕らは知らなかった
887/1818

AE(アナザー・エピソード)その神罰が何故下ったかを彼らは知らない

「な、なによこれぇーっ」


 ルーシャの声がギルド内に響き渡った。

 それも当然である。

 ルーシャの身体が光ったと思った次の瞬間、全身に灰色の毛が生えだし、耳が消えて、頭の上に二本の長い耳が生えて来たのだ。

 私はただただ呆然と見つめるしかなかった。


 普通の女性だった存在が、一瞬にして二足歩行の兎人間に変化しているのだから。


「ちょっと、どうなってんのぉっ!?」


 自分の変化が理解できずに掌を見て叫ぶルーシャ。可愛らしくもDQNだった女性は、円らな瞳にモフモフの口元、全身灰色の毛で覆われた兎人族になっていた。


「お、おいおい、ルーシャ、その身体どうなってんだよ?」


「知らないわよ。サーロはなんともないの?」


「俺? いや、俺は変化してないだろ、なぁおっさ……んん?」


 気安くギルド長に話しかけたサーロがギルド長の肩に腕を回そうとして、すかっとギルド長の身体をすり抜ける。


「へ? え? 何、今の何?」


 サーロが憔悴したようにもう一度確かめる。ルーシャの胸を思い切り揉んだ。


「ちょ、何してんのよっ!? って、えええっ!?」


 大衆の面前で揉まれたという事実に抗議と共に張り手を喰らわせたルーシャだが、すかっとサーロの頬をすり抜け空を切った。

 しかも揉んだ筈のサーロの腕はルーシャの胸にめり込んでいる。


「ちょ、何コレぇ!?」


「さ、触れないっ!? 俺どうなってんだぁ!?」


 本当に、これは一体。二人に何が……


「アルセ神の神罰……だ」


 だが、ギルド長は理解していたらしい。

 思わずといった顔で戦慄しながら告げる。

 アルセちゃんの罰?


「お、おっさん、これ、なんで成ったか知ってンのか!?」


「お前マイネフランの外道勇者の話くらい知ってるだろ?」


「外道勇者? あー。なんか居たなぁ、ヘンレイだかエンリーだかいうのが。生き神様に逆らって厳罰食らったつーアホっしょ」


 サーロが楽しげに言う。そういう人がいたらしい。とは分かるのだが、私はこの世界に来たばかりなのでそういう噂は良く分からない。


「そのアルセ神がこちらのお方だ。お前ら多分アルセ神の怒りに触れたんだと思うぞ」


「はぁ? そのチッコイのがアルセ神? マジか? つかお前何なの? 俺と面識とかねーだろ。何してくれてんのなぁ、この……痛っ、いたたたたた。ちょ、何コレ何コレ、止めて、痛いっ!」


 咄嗟にアルセちゃんに詰め寄り叫ぶサーロ。アルセちゃんを掴もうとするがすかっと空振る。

 しかし、その腕がまるで何者かに取られたように腕を固められ、捕縛された犯人のように床に倒れた。


「あー、まぁ。何でそうなったかはアルセ次第だけど、なっちゃった以上はもうその姿で過ごすしかないと思うわよ。自分たちの行いを反省しなさいよね」


 徹底的にやろうと思ったのに……とアカネさんが溜息を吐く。


「ね、ねぇ。これ、返すから、成功報酬返すから元戻してよぉ」


「あ、いえ、私に言われましても……」


 ルーシャがお金を押し付けてくるのだが、これはもう失うつもりでギルドに預けたモノなので持っていって貰って構わないお金だ。押し返されても扱いに困る。


「あ、あの、アルセちゃん。私からも、二人を戻して戴くことはできませんか?」


「お?」


 しかし、アルセちゃんは意味が良く分かりません。といった様子で首を捻る。

 まるで二人に罰を与えた自覚がないようだ。

 もしかして神罰は自動で与えられるのだろうか?


 少しすると、アルセちゃんが何処からともなく図鑑を取り出し、一度ルーシャに白紙の最終ページを向け、ぱらぱらとめくりながら白紙の手前を見始める。

 そこには、なぜかルーシャのステータスが載っていた。


「あの、これは?」


「魔物図鑑よ。人とかも登録できるから知り合いのステータスを確認したり自分のスキルに何が増えたかとか確認出来るんです」


 ルーシャさん、種族が人間じゃなく兎人間ラビトニアンになっちゃってますよ?


「んー? ルーシャさんだっけ、このスキルを見る限り、今までよりむしろ使い勝手いいかもですよ」


「え?」


「脚力強化でジャンプ力が凄く上がってます。走るのもニンゲン時よりずっと速いみたいですし、多分全身の毛を剃れば今までの容姿に戻れるんじゃないですかね?」


「ホント!?」


「そこまでマイナスのスキルは見当たりませんよ。バグ……神罰、手加減されたのかも?」


 容姿が兎人間になっているが、確かにこれはこれで愛嬌がある。先程までのDQN感が全く無くなり、むしろ頭を撫でたくなる小動物系容姿になっている。

 身体能力も高いとなれば、確かにプラスと言えなくもない。


「むしろサーロさんの方が酷いような? あ。なんだろこれ? 神のお情け?」


「どうやら余りにも酷かったせいで神様が救済措置したみたいね。グーレイ神の方だけど」


 リエラさんとアカネさんが図鑑を覗き込んで楽しそうに言う。

 話に付いていけない私たちはただただ蚊帳の外だった。

サーロ

 ・Mカットの前髪のイケメンに近い三枚目チャラ男。

  基本自分中心の性格だが、面倒見は良くリーダーとしての資質は一応あるらしい。頼れる兄貴分のため、新人冒険者たちの人望は厚い。

  性格と容姿の関係で似たような性格の仲間が寄り集まり小さなクランのような状況でギルドに屯っている事が多い。

  バグによりひのきの棒でしか攻撃手段を持たず、誰にも触れない透過状態になっている。ただしオブジェクトを透過する事は出来ず、アルセ姫護衛騎士団の団員からの攻撃は有効。

  種族:ニンゲンA クラス:村人

  装備:ライトメイル、アイアンソード、革の靴、ライトポーション×12、毒消し草×4、煙玉、ひのきの棒


ルーシャ

 ・盛り上げ髪だったギャル系女。ただし、今は兎人間となっており全身が灰色の毛に覆われている。一日一回毛剃りをしているが、一日で元の毛だらけに戻っているらしい。あと回復魔法やアイテムを使うと全身の毛も生えそろう。

  身体能力は獣人よりのため、人間状態の時よりも高い能力値になっている。

  種族:兎人間ラビトニアン クラス:魔法使い

  装備:魔法使い用ローブ、雷の杖、ライトポーション×10、パラライチェック、マジックポーション×4

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ