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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十一部 第一話 その新たな出会いがあることを僕らは知らなかった
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AE(アナザー・エピソード)その冒険者たちの偉業を彼は知らない

 皆さんの好意でアルセちゃんが何処からともなく取り出した紋付き袴に着替える。

 リファインさんという方が魔法を使って私の服を洗濯してくれて、服が乾くまで街の外でキャンプを張るメンバー。

 そこから代表としてアカネさん、リエラさん、アルセちゃん、ルクルさん、セキトリ君が私と共に街に向う。どうやらこの五名がこのアルセ姫護衛騎士団のメインメンバーらしい。


 いや、私が聞いたわけではないのだが、彼女たちがパーティーを率いているように見えるからだ。

 リーダーはリエラさん。おそらくアカネさんは副リーダーなのだろう。しっかりしているのはアカネさんの方のようだが、それは元日本人だからのようだ。

 彼らの中には元日本人が何人かいて、アカネさんとチグサさん、ローアさんという方も日本人だったらしい。驚きなことにルグスという不死王とよばれる魔族も元日本人だったのだとか。


 彼らと共に冒険者ギルドにやってくる。紋付き袴姿なのが少し恥ずかしいが、服がこれしかないので仕方無いと割り切るしかない。

 替えのスーツが欲しいところである。


「でよぉ。俺は言ってやったの。おっさんやるぅってよぉ。いやー、冴えねぇおっさんの護衛とかやるんじゃなかったぜ。まぁ依頼の相場しらねェバカでよかったぜ」


「マジキモかったよねーサーロ。私の胸めっちゃ見てたしぃ」


 あの二人……

 仲間だろう数人の似たような冒険者に囲まれていたのはサーロとルーシャ。

 特徴からアカネさんも察したらしく、小声であいつら? と聞いて来たので私は頷いておく。


「いいわ。今は無視して受付に向うわよ」


「は、はい」


 六人でぞろぞろとギルド内を歩く。私に注目が集まるが、どうやら前の姿とかけ離れているせいでサーロたちも気付かないようだ。サーロがあの服良くね? とか訳のわからない事を言っている。

 受付の列に並んでしばらく、アカネさんが代表するように受付嬢に対面する。


「いらっしゃいませ。本日はどんな御用ですか?」


「この人の出した依頼、今どうなってるのかしら?」


「この人……ああ、今朝の」


 この受付嬢には見覚えがあった。今朝私の依頼を受理してくれた受付嬢だ。


「服装変えたんですか唯野さん。なんだか見違えたくらい恰好良くなってますよ」


 サービストークが栄える。やはり綺麗な受付嬢に言われると思わず照れてしまうな。サービストークと分かっていてもついついにやけてしまう。おっさんの哀しいサガだ。


「えーっと唯野さんの依頼は……あ、完了してますね。新しく受けるつもりだったんですか? 残念ながら既に成功で受理を……」


「それ、偽報告よ。ギルドの規約違反」


「え? いえ、でも、ちゃんと報告を」


「依頼人である彼が成功したと言ったの?」


「え? いえ。でも、あの二人はよく依頼を受けて人当たりも良くてその……」


「だからなに? 唯野さんが魔物に襲われかけていたのに見捨てて逃げたらしいわよ。それなのに誰が依頼を完了したと言ったの? 成功報酬渡したの?」


「あ、あの、でも……」


「あ、アカネさん、私はその。別に気にしておりませんので、生きて戻れましたし……」


「唯野さん。貴方挨拶回りした事ある? 得意先の社長の元とか」


「え? あ、はい」


「貴方がその社長だったとして、頼んでいた作業を子会社が放棄したらどうする? しかもそれを成功しましたと誤報告してきて、謝りにもこなかったら? その会社にまた仕事を頼みたい?」


「い、いえ……」


「成功報酬だけ貰って嘘報告。それは詐欺よ。ギルドとしても会社としても絶対に見過ごしてはいけないもの。なぁなぁで終わらしてはいけないものよ。例え知り合いが相手でも、断固として適正な処理をするの。泣きを見るのは依頼して来た民間人なのだから。だから……貴女じゃ話にならないわ。ギルド長を呼びなさい」


「え? ぎ、ギルド長? いえ、その、そこまでするわけには……」


「ギルド自体の重要要件よ? 貴女の判断だけで大丈夫なの? 大丈夫なら今直ぐ判断して頂戴?」


「す、すぐに呼んでまいります」


 慌てて奥に駆けて行く受付係。にこやかな笑みを浮かべてくれていただけに心が痛む。

 これではクレーマーではないですかアカネさん。周囲から凄く視線が……

 彼女たちは手慣れているのか平然としているし、アルセちゃんに関しては向って来た視線ににこやかに笑みを見せている。


 若干おっさん連中の顔がゆるんでいるのは仕方無いだろう。あの太陽のような微笑みを受けたらどんな厳つい男だって頬が緩む筈だ。

 しばらくして、面倒臭そうにギルド長らしき厳つい男がやってくる。


「俺のギルドにいちゃもんつけるクレーマーってのぁ誰だ? あ? お前らか」


 完全に私達が悪者になっているのですが……

 ギルド長の後ろに隠れた受付嬢さんが意地の悪そうな顔をしている。

 なんだかさっきの笑顔とギャップがあり過ぎて同一人物と思えない。騙された感が酷い。


「あら。随分な言いようね? 初めましてドドスコイ王国ギルド長さん。私、アルセ姫護衛騎士団、アカネ・トドロキと申します。ああ、アルセ教枢機卿と言った方がいいかしら」


 ニタリ、悪どい真っ黒な笑みを浮かべたアカネさん。

 恰好良く登場した頼れる上司感を出していたはずのギルド長は、即座に気を付け姿勢から深々と礼を行った。

 あの。「我がギルドが失礼いたしましたっ」とはどういうことですか……アカネさん、もしかして凄い偉い人?

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