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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十一部 第一話 その新たな出会いがあることを僕らは知らなかった
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その卒業式の特別卒業者を彼女は知りたくなかった

「それでは、今年の卒業者を発表する」


 本日、冒険者学校では今年度の卒業式が開催されていた。

 僕はアルセ達と一緒に在学生席に行儀よく座っている。

 アルセは放っておけば踊り出しそうなので、僕が膝上に乗せて動かないように拘束してます。

 一応、空気を呼んだのかアルセも行儀よく座っていて、興味深そうに周囲を見ている。

 隣にはリエラ。何故かルクルの席も逆隣りに用意されており、二人に囲まれる形です。

 うん、パルティが居なくてむしろ良かったかも、椅子の取り合いで賑やかになってそうだし。


 本年度の卒業者は27名程らしい。結構多いそうだ。

 それもそのはず、本年度は去年卒業予定だった連中が時代劇の逆塔に籠ったままだったせいで卒業を逃し、今年の卒業式には間に合ったので今年の卒業生と合同で卒業するらしい。


 名前を呼ばれるごとに立ち上がり、壇上へと向かう卒業生たち。

 全員が校長から卒業証書を授与されると、校長が壇上から去り、卒業生代表者である成績優秀な人が代表で前に出る。

 自分たちが卒業した後の学校をよろしく頼むとか在校生に宣言し、これからの未来に付いて語ったりしながら壇上を去る。


 うん、こっちの世界でも卒業式って長いんだなぁ。

 既に一時間座りっぱなしだよ。

 アルセがウズウズしだしてるんだけど、踊らせちゃだめですか?


「特別卒業生、発表」


 うん?


「セキトリ・バチコイ・ドドスコイ」


 ああ、そういえば今年卒業するとか言ってたな。

 確かこの後自国に戻って殺されるんだっけ?

 ああ、違った国王になるんだ。


「リエラ・アルトバイエ」


「ふえ!?」


 まさか呼ばれるとは思っていなかったリエラさん。

 慌てて立ち上がったせいで周囲から失笑が漏れる。

 緊張した顔で手足が揃った状態で歩き出すリエラさん。

 もはや見た瞬間に笑ってしまう状態だ。


 校長先生もしてやったり顔が崩れて笑いをなんとか堪えている顔をしている。

 話を聞くに、リエラが時代劇の逆塔クリアしたのが卒業の切っ掛けになったらしい。

 ということは、一緒に最後まで向ったアルセも……?


「アルセ」


 やっぱり呼ばれた。

 名前を呼ばれて「お?」と首を捻るアルセを立たせ、手を引いて一緒に卒業証書を貰いに行く。

 リエラが戻ってくるのを横目に見送り、校長先生の前にアルセを連れて行った。

 卒業証書を受け取り、座席へと戻る。


「ケトル・エーゲ・フィグナート」


 ありゃ? ケトルたちも?

 ケトルの後にチグサ・オギシマの名前も呼ばれる。

 どうやら王族と勇者である二人も卒業のようです。


「パルティエディア・フリューグリス」


 え? パルティも!?

 しかし、パルティは今神様の居る場所にいるのでここには来れない。

 そもそもこの地上では死亡扱いになっているのですが。

 どうやら校長もそれは知っているようで、長々彼女の凄さを皆に説いている。

 そして、死亡したことも伝え、全員を起立させた。


「我らが戦友、パルティエディア・フリューグリスに、黙祷!」


 パルティさん、なんか死んでから特進みたいな感じで卒業させられてますよ。

 皆が黙祷を捧げる。

 アルセも真似して目を閉じてるけど、分かってないよね。

 途中薄眼を開いて周囲を見てまだ黙祷中? と再び目を閉じたの見ちゃったからね。もう、黙祷止めるの早いよアルセ。


「冒険者には死が付き纏うもの。この卒業者の数名が、いつかパルティエディアの後を追い、天に召されることだろう。だが、君たちの未来は絶えず輝き広がっている。死を恐れるな。名誉を求めよ。我等は冒険者、危険を冒しまだ見ぬ世界を見る者なり。卒業者たちよ、冒険心の赴くまま、世界へ羽ばたいてゆけい!」


 ばっと手を開いて叫ぶ校長。一瞬ちょっとカッコイイと思ってしまったが、その姿のまま固まられるとちょっと間抜け感が……


「返礼、特別卒業生代表、アルセ」


 アルセ!? え? 何すればいいの?

 アルセは僕の太ももから降りて立つと、とことこと先程と同じルートで壇上へ。

 慌てて僕も後を追う。


 アルセは校長に譲られるように壇上に向う。

 しかし背が足りない。

 僕が追い付いて来たのに気付いて両手を僕に向けた。

 だっこ。と言われた気がしたので抱き上げてあげる。


 壇上に両手を付いて前のめりになったアルセは在校生達を見回す。

 何を言うのか? 期待半分、魔物に言葉が話せるのか? 楽しみ半分の在校生達。

 アルセはそんな彼らに言った。自分の今の気持ちを、これからの抱負を、そして在校生達へのメッセージを。全てを込めて、言った。


「おっ!」


 片手を上げて、笑顔で告げる。

 たった一言に込められた言葉に、なぜか涙を流す在校生たち。

 どうした? 皆何があったの!?


 そしてなぜかアルセがネギを取りだし壇上に這い上がると、踊り出す。

 流れ出す校歌。歌い出す在校生。

 え? なに、誰かこれ事前に打ち合わせしてた? ねぇ、僕の知らないところで打ち合わせあったの?


 アルセは指揮者のようにネギを振りまわしながら踊り、曲が終わると同時に満足したようにネギをポシェットにツッコミ、在校生に向けて一礼。

 壇上から僕に飛び降りて来たので、受け止めて降ろしてあげる。

 一仕事やったよ。といった様子のアルセと共に椅子へと戻るのだった。

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