その神官長と神殿長に何が起こったのかを彼らは知らない
神の間を探索し終えた僕らは三階と四階を見回ってから噴水? 広場へと戻ってきた。
ここ、噴水じゃないよな、上から流れ落ちてるだけだし。でもある種噴出してるから噴水でいいんだろうか?
まぁ、どうでもいいか。
ロビーでは信者たちがまだ呆然と泉を見守っており、所在無げな猊下が戻ってきたアルセに気付いて顔を上げたくらいで、他の反応は無かった。
アルセは何が気に入ったのだろう? 猊下の手を取ると楽しげにエレベーターに向って行く。
僕も追おうかと思ったら、なぜかリエラさんが気を利かせて私が一緒します。とアルセ達に付いて行ってしまった。
あれ? もしかして僕、ハブられてます?
ルクルさん、肩叩かないで。おっさん、テメェ何しれっと後付いて行こうとしてんだ。
アカネさん、あれ、やっちゃっていいんで。
「ん? 何よエロバグ……って、何アイツ? ミルクティ、アレ!」
「何アイツ、行かせるかッ!」
気付いたミルクティが速射。
コ・ルラリカ弾がストーカーおっさんの足を固めた。
驚いたおっさんは女性陣に取り囲まれてなんか言い訳始めた。
あっちの制裁は任せておこう。くたばりやがれ(はーと)
さて、結局バグ打ち込めなくて放置中の神官長と神殿長。神様に対しては改心したみたいだけどさ、アルセについてはどうなのかね?
ルクルと共に近づいて行くと、ルクルに気付いた神官たちがこちらに身体ごと振り向いた。
「るー」
「アルセ神の護衛だったな」
代表するように神官長と神殿長が歩み出る。
「この度は手酷い事をしてすまなかった」
「我等の非礼を許して戴きたい。神はアルセ神を認めておられた。我々がアルセ神に対して何かをすることを望まれてはおらぬようだ。我らも心を入れ替え……ん? なにか衝撃が」
神に対しての恐れや敬いはわかった。ルクルへの謝罪もあった。でもアルセへの謝罪は一つもなし。うんギルティ。
言葉の途中にバグ弾生成してまずは神殿長に、ついでに神官長もバグらせておく。
悪いとは言わないぞ? アルセに対し斬首を企てた罪は万死に値するからね。
「し、神殿長!?」
「ん。どうした?」
神官の一人が焦った声を出す。
なんとあのでっぷり肥ったおっさん神殿長が、スリムもスリム、ぼんきゅっぼんな美女に……って、TSバグ来ちゃった!?
神殿長は自身を見回して胸を触り、慌てて下半身を確認する。
「な、ななな……ある。え? ある?」
男のシンボルは現存してるようです。
身体だけ女性っぽくなったのか。
服が合ってないせいでだぼだぼで臍出しルックになってます。なんかちょっとセクシーです。
元がおっさんって知らなかったら男どもの注目の的だろうなってぐらい美人だな。
なんか、自分が行ったバグだけど納得できない。
これじゃバツにならないような……
「し、神官長にも変化が!?」
「む、私にも……なんだこれは!?」
恐っ!? 神官長の体色が銀色に。メタル神官長ですか!?
バグり方がおかしいよねこれ!
「い、一体何なんだ。これは何が起こって……」
「し、神殿長、そ、それは……?」
「ん、まだ何か……なぁぁ!?」
気付いた神殿長が慌てて胸を隠しながら逃げようとして、何処にも逃げ場が無かったようで泉に飛び込んだ。
「ひぃぃ、止まらないっ、何なのだコレはあああっ」
何故だろう、泉が黄色と乳白色に染まって行くのですが。
排水場所から流れて行くから泉が染まり切ることは無いみたいだけど、なんか大変な……
図鑑見てみるか。
ルクルさんを操ってルクルが図鑑見てるみたいにしながら神殿長と神官長を確認。
神官長は体色変化・銀と短小化。何が小さくなったかはあえて言うまい。
神殿長は女体化ではなくTSと男性化が混在。さらに常時漏れ症のスキルを強制入手したようです。
これはまた可哀想というかご愁傷様というか。
よし、満足したし、アルセ迎えに行って帰るか。
二人がバグったのを確認し、僕はルクルと共に五階へ向うことにした。
「大丈夫ですか神殿長」
「う、うむ。しかし、これは一体どうなって……」
「し、神殿長、なんか凄く女性っぽくなられましたね」
「全く、何がどうなっておるのか、小便も止まらぬなどありえんぞ」
「そ、それに付いてなのですが、確かアルセ神に敵対を示した勇者ヘンリーと同じように、突然ステータスに変化が起きているように見えるのですが」
「む、むぅ? そ、それはまさか、儂と神官長がアルセ神の怒りに触れたというのか!? 馬鹿な、先程あの小娘に謝ったばかりではないか!」
「そ、それについては私ではなんとも……」
「全く、なぜ儂がこんな目に……おい、お前はなぜ胸を揉むのだ」
「あ、す、すいません神殿長、あまりにも立派だったもので」
……なんかヤバい人が目醒めそうな気がしないでもないけど、まぁいいか。




