そのエレベーターを彼女は知らない
「なんですかここ?」
僕に手を引かれてエレベーター内に入ってきたリエラは小さな箱部屋を見まわし首を捻る。
興味を覚えた他のメンバーも集まってきた。おっとルクルさん、そんなところに居なくていいから入って来なされ。
アカネさんがニヤニヤしてるけど口出しはしないっぽい。
折角だし僕も何もせずリエラさんにお任せしてみよう。
「なんですかリエラさん。ここは?」
「え? えーっと」
ケトルに尋ねられ、先陣切ったリエラは困った顔をする。
メリエとリフィも部屋の中に入ってくる。
事情を知っているチグサが口を出そうとしたのだが、即座にアカネさんに止められた。
折角だからこの世界の住人がどんな反応するか見ようってことらしい。
大人しく二人とも室内へと入ってくる。
「ふむ。内部の入り口側面には幾つかのボタン。上方には何かの数字が表示されているな」
「アメリス、見て、内部に手すりがあるわ」
アメリスとミルクティは内装に注目。
なんやかんや言いながら仲良いよね二人とも。実はもうデキてるんじゃないの?
「お? おー? おおー」
部屋の中を見回しながら狭い室内でリエラに抱っこされるアルセ。詰め込まれるように沢山の人が部屋に入って来たので驚いているようだ。
プリカとパイラも内部に入って物珍しげに見まわしている。
お、天井の板に気付いた。
一応脱出路とか点検用に天井が外せるようになってるんだよこのエレベーター。
「ヒャッハー。気になるかぁネフティアぁ。こいつはなぁ、えれ……」
ブーッ
楽しげにぶっちゃけようとしたアキオ君だったが、ネフティアの後にエレベーターに乗ろうとした瞬間、ブザーが盛大になった。
アキオ君は口を閉じ、無言でエレベーターから出る。ブザーが収まった。
皆の非難めいた視線が集中する。
無言のまま、もう一度エレベーターに足を乗せる。
ブーッ
はい、人数オーバーです。
ネフティアは無言のままアキオ君を見て、ふっと鼻で笑った。
アキオ君の後ろからひょこっと現れたミーザルがお前だけダメみたいだな。みたいにウッキャウッキャ笑いながらエレベーターに入ってくる。
ブーッ
「ウキャァ!?」
驚くミーザルが即座に飛び退きアキオ君の横に向う。
自分まで拒絶されたと気付き、なぜだ!? と驚愕していた。
だから人数オーバーですってば。
「あっ」
そしてアルセが閉じるボタン押しました。
リエラが下手なボタン押さないで。と告げるより先に、ミーザルとアキオ君を置いて閉まって行く扉。驚くメンバーだったが、アカネとチグサがにやにやしているのに気付き、問題は無いのだと安心する。
「ふむ。このボタン、閉じると書いてあるな。こっちは開く。扉の開閉ボタンという訳か」
アメリスがふむ。と頷く。
その間にアルセが楽しそうに全部のボタンを上から順に押して行く。
うん、子供が良くやるよねエレベーター乗るとさ。
そして別の階層で乗って一番上に行きたいお客さんとかがイライラしながら後ろで待って、親が謝りながらエレベーター内で目的階層まで一緒に居続けると。
次の階層である三階に上がるようで、ガコンっと動き出すエレベーター。
突然の反応に皆がパニックになりだした。
リエラやアメリス、ミルクティが慌て出す。
あれ? そういえばミルクティさんって異世界人だったよね? 僕らと似たような世界じゃなかったっけ?
あの人の世界にはエレベーターないのかな?
アメリスと一緒に驚くミルクティさんはどう見ても本気で驚いている様子。
僕はリフィとリエラに抱きつかれ、身動き取れない中でただただゴスを食むパイラと指を口に含んでパイラを見ているプリカを視界に収め続けるのだった。
あいつら、全然動じてねぇな。
各階層。といっても全部で五階までしかなかったけど。全ての階層に止まりながら最上階の五階で扉が開かれる。
ここまで来るとこれがどういう存在なのかは理解出来たようで、リエラ達は感心したような顔でエレベーターから脱出し、五階を見回す。
「驚きですね。部屋ごと移動するんですね」
「エレベーターっていう昇降機ね。下の階から階段を使わず上に上がって来れるの。ここは五階ね」
アカネさんがここでネタばらし。リエラとリフィが感心しながら聞き、ミルクティは知ってたけどね。とアメリスさんに無駄なアピールをしていた。
ミーザルとアキオ君は? まだ二階に居るのかと思いきや、エレベーターが勝手に動き出し、二階まで下がって行く。
どうやら彼らも後から来るようだ。
「でも、あの音が鳴った後の体感は余り好きじゃないな」
アメリスはエレベーターが上がる体感が苦手らしい。今度からは階段を使うと言っていた。
「さて、五階にあるのはアレだけみたいね。神の間?」
おい、神ェ。なに自分の部屋作ってるの?
僕らは神の間という謎の部屋に向ってみることにした。
何が待っているのか、ワクテカです。




