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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その教国で起こった壊滅と奇跡とバグを彼らは知りたくなかった
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その神が出てきた理由を彼らは知らない

「正直ねー、私もそろそろ怒って良いと思うんだよ。確かにね、信者たちがいろいろしたのは悪いと思うよ。でもまだ思考段階で実際に迷惑行為を受けた訳じゃないよね? なのに先制攻撃かな? あれはどういう意図でやってくれたのかな?」


 僕の首に腕を回し、肩によっかかって背後から絡んで来るグーレイさん。どう見ても財布君を見付けたヤンキーみたいな絡み方です。

 な、ちょっと跳んでみ、金あるだろ? 貸してくれや兄さん。そんな口調で責めて来ます。


「いやね、私としてもある程度は許容する範囲だったんだよ? アレは無いよね? 他の神々爆笑だよ。私の幼少期だとか駄女神が腹抱えて指差して来んの。この屈辱、分かるかねチミ?」


 いやー、その、わざとじゃないんだよ? ほら、神官長とか狙ったんであってね、意図して像を攻撃したわけじゃないんだよ? ね? わざとじゃないんだよ。許して神様。


「テメーふざけんなよ! 何だよアレ! あれじゃ私がド変態みたいじゃないか! 神像だぞアレ! どうしてくれる! どうしてくれるっ!」


 対面向かされ胸元を掴まれ、がくがくと振られる僕、もはや抵抗できません。グレイ恐い。


「おー?」


「え? あれ? え? 神……様?」


 グーレイさんの大声に気付いた猊下がこちらを見て呆然と呟く。

 その声で、呆然と神像を見上げていた神官たちがこちらに視線を向け、神を見付けた。


「お、おお、神が、我らがグーレイ神が現界……なされた?」


 顔を上げた厳つい神官の言葉で我に返る神様。あ、めっかっちゃった!? みたいな顔で驚いている。


「か、神が、現界……なんという奇跡!?」


 奇跡じゃないよ。この人割りと頻繁に降りてくるよ。ただのグレイ星人だよ。

 グーレイさんは自分が注目されたことに気付いて僕から手を離すと、ん、んっ。と息を整える。


「やあ、初めまして我が子供たち」


 おお、グーレイさんが神様してる。

 僕は今のうちにアルセの元へ向ってグーレイさんから距離を取る。


「か、神よ、我等は裁かれるのでしょうか……」


 恐る恐る神官長が告げる。

 他の神官達も青い顔をしている。


「何かを勘違いしているようだね。猊下は無事、アルセ神も無事。君たちが咎められることは他に何かあるのかい? 汚職のこと? 女性関係? 感心はしないがどれも神罰を受けるほどではない。そして君たちの祈りはちゃんと届いている。罪を与えることは無いよ。私からはね」


 救われたように煌めいた顔をする神官長と神殿長。

 良かったな。お前らの罪放置するってよ。


「そ、それでしたら、あの像は……」


 恐る恐る神殿長が指差すモザイク必須な神像。

 神は困った様子も無く堂々と言い放つ。


「神水を、流す事にした。アルセ神との差別化を図る意味でも我が信望の象徴として、万病に効く絶えること無き泉をグーレイ教に送ろう」


「そ、それはつまり、これは神からの祝福……」


 うわぁ、神様それは無いと思うのですが。

 神様が僕の行ったことを自分の功績にしやがりました。

 と言っても、神官たちは微妙な顔をしてたけど。


 そりゃそうだよね、神からの贈り物がモザイク必須の巨大小便小僧グレイ型だもんね。しかもお母さんと一緒バージョンとか恥ずかしすぎる。

 おそらくそのうち秘匿されるだろうこの教会の像は、きっとこれから先もこの姿を維持するんだろう。


「ま、まぁ折角だ。教会は私が再建しておこう。文字通り、神が作りし神殿だ。この教会に恥じない生き方をしてくれることを望むよ」


 そして、グーレイ神が両手を広げて空へと舞い上がる。

 すると教会の瓦礫が光り輝き光の柱が立ち上る。

 おおっと信者たちが教会に視線を向けた瞬間、グーレイさんは即行逃げるように消え去った。


 代わりに、教会が再び形作られる。

 今まで住んでいた教会とは少し作りが違うようで、グーレイ神像は完全に教会の内部に隠れてしまったようだ。


 あの野郎。自分で建築することで像を隠しやがったな。

 しかも、射出口は完全に隠したようで、階段を流れていた水も途切れた。

 どうやら噴水のようにしたようで、新しい教会の内部にでも回復の泉を作ったんだろう。

 雨流し用の側溝に神殿からの排水が流れだす。神水、下町まで流れるようにしてるみたいだけどこれ、下水だよね?

 クソ、折角のバグが良い感じに纏められてしまった。


「神は、居たんだ。本当に……」


 凄い感動したように猊下が膝を折り、教会に祈りを捧げる。

 この子は純粋だなぁ。

 穢れた大人たちは呆気に取られて呆然と立ち尽くしてるのにさ。


「お」


 ん? 何アルセ、教会の内部みたいの? あ、にゃんだー探険隊が我慢できずに駆けだした。どうやら新しくなった教会を探索したいようだ。

 仕方無いな。ちょっとだけだよアルセ。あ、リフィ達も一緒に行く?

 ルクルさんは確定か、あ、それはいいけどあの影からアルセ狙ってるストーカー先に潰しといてください。

 僕らは教会へと向かうことにしたのだった。

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