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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その教国で起こった拉致を彼らは知りたくなかった
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その合流したリエラの実力を彼は知りたくなかった

「なぜ逃げるのですかーっ!?」


 チグサさんの驚く声が後ろから聞こえる。

 追って来ようとした彼女達を魔物がタイミング良く出現して戦闘に入る。

 なんか凄い手の長いチンパンジーみたいなのと闘ってるせいでアルセと猊下に構ってる暇が無くなったようだ。


 チグサもケトルもアニアも必死に闘う姿を後ろに、僕らは走り続ける。

 凄いな。まるでアルセの逃走を助けるかのようなタイミングで魔物が出現したぞ?

 にしても、何処に行くのアルセ。


 今度はこっち? アルセの指示に従い走るポンタ君。

 その横合いから、叢揺らし、木々をなぎ倒して現れるティアラザウルス。

 またお前かっ!?


「う、うわああああああああああああああああっ」


 わざわざ自分の存在を知らせて一目散に逃げ出すポンタ君。

 いや、今のアイツ気付いてなかったからね。横に避けて叢に逃げ込んでれば問題無く避けれたからね。

 でも、声に気付いたティアラザウルスはアルセ達向けて走り出す。

 よぉし、バグの用意しとくかぁ?


「大丈夫。僕が、僕が君を救うから。絶対に、あいつらの好きにはさせないからっ」


 背後で手を掴んだアルセに必死に元気づけるように告げる猊下。でも待って、アルセ全く理解できてないから。

 何でそんなに必死なの? みたいな顔してるよ。


「アルセ、君は僕が、絶対に守るっ」


「お?」


 あ、リエラ。

 神速突破で走り込んだリエラがティアラザウルス向けて跳ぶ。

 まさに一閃。ティアラザウルスの首に剣閃が走り、血飛沫と共に巨体が数歩歩いて倒れ込む。

 つよっ。最初はカイン達と逃げるだけだったあのリエラさんが、今はティアラザウルスを雑魚敵のように……大きくなって。ホロリ。


「こんなところにいたのねアルセ。皆が待ってるわ。帰りましょ」


 リエラさん、カッコよく登場してるとこアレなのですが、背中、茶色いよ?

 どうやらカレーを拭き取る暇が無かったようで、困惑気味のルクルがリエラの背中を見ながら戸惑っている。

 ああ、いいよいいよ。どうせ帰るまで何も出来ないだろうし。温泉か泉があればいいんだけど無理っぽいし。


 逃げきれないと知ってアルセを庇うように両手を広げ、アルセを背中に隠す猊下。

 リエラが困った顔をしている。


「アルセは僕が守るんだ。あんたじゃないっ」


「子供の冒険の時間はもう終わり。それに拉致なんてして良いと思ってるの? これはもう、子供の手で収められる事態じゃないの。あなたなら分かるでしょ?」


 聞き分けのない子に言い聞かせるように告げるリエラ。どうしたら伝えられるのかと戸惑っているようにも見える。

 しかし猊下は頑なにリエラを敵視しているようで、少しづつだけどアルセを後ろに逃しながら後退している。一定の場所まで逃げたら走り去る気だ。


「知るかっ、僕は……っ」


「わがまま言わないでください。このまま貴方を教国に連れていかないと、拉致の容疑で裁かれるのよアルセが」


「……アルセ、が?」


 想定外だったのだろう。思わず自分の状況を忘れてぽかんとした顔をする猊下。

 アルセが誰も見てないのに私? と自分の事を指差している。


「ええ。神官長さんと神殿長さんはアルセが貴方を拉致したと言ってきて、このまま貴方が戻らないようならアルセを捕まえて……」


 思わずリエラは僕を見る。

 え? 何、なんか聞かせたくないみたいな顔してるけど?

 しかし、リエラは観念するように告げる。


「斬首刑にするって……」


 ……んん? ちょっと待ってリエラ。今、斬首刑って行った? 誰を? アルセを?

 誰が? グーレイ教の神官長と神殿長? へー、ほー。アルセを……ねぇ? グーレイさん、これ、どういう意味なんですかねぇ?


 ―― ちょ、まっ。バグさん待って。話せばわかるよ、話せば……――


「で、でも、アルセが行きたいところがあるみたいなんだ。そこに、せめてそこに行くまでは……辿りついたら、一緒に戻るから、だから……」


 泣きそうな顔で告げる猊下。

 リエラは困った顔をしながらも上空を見上げ。

 観念したように息を吐く。


「分かりました。じゃあ、せめて護衛させてください。私とルクルが付いて行くだけでも安全は増しますから」


「う……わかった」


 ふむ。アルセと猊下はリエラとルクルがいればいいかな。

 僕はリエラの肩をポンと叩く。

 びくんっと震えたリエラさんは何かを察してくれたようだ。


「あ、あの、向こうにはアカネさんとネフティアとアキオさんとミーザル、プリカさんとパイラさんが残ってます。人質になってまして、その……できれば穏便に」


 リエラの言葉が良く分からなかったようでアルセと猊下が首を捻っている。

 大丈夫だよリエラ。それよりリエラ、ルクルも、アルセのことよろしく頼むよ。怪我の無いように見守っててね?


 それじゃあ、ちょっとヤりに行ってきます。

 チンパンパンチャー

  種族:魔猿 クラス:マギチンパンジー

 ・手の長いチンパンジー。長い拳でフックを打ち込んで来る。

  樹の枝を支柱にアーアアアーといいながら飛び交う姿は、異世界人からターザン? と呼ばれている。

 ドロップアイテム・猿肉、猿の手


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