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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その教国で起こった拉致を彼らは知りたくなかった
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そのリエラさんの(笑)な状況を彼は知りたくなかった

「ぎゃああああああああああああっ」


 猊下の声が響く。

 凄い声だね。いや、分かる気はするよ。

 背後を迫るのはティアラザウルス。

 正直こんなとこにも出現するんだねコイツ。


 走る猊下とアルセは何故かティアラザウルスから直線的に逃げている。

 あれじゃ追い付かれるのも時間の問題だ。

 仕方無いのでアルセの腕を掴んで真横へ。

 アルセが繋いでた手により猊下も一緒に逸れて来た。

 丁度叢を越えた先だったのでティアラザウルスの視界から突然消えたように映ったようだ。


 僕が叢にアルセの身を潜めさせると、ティアラザウルスは周囲を見回した後、あれ? おかしいな。今人間か何か居た気がするんだが?

 首を捻るディアラザウルスは納得いかない顔で踵を返して去って行った。


 ふぅ、危ない危ない。流石にあの巨体を相手にするのは骨だぜ。

 丁髷砲は豆鉄砲と変わらなくなるし、居合斬も鱗で止められる。

 正直この生物にはバグ以外打つ手がないんだよ。

 なので余程の事があればバグらせるのもありだけど、今回は二人が安全に逃げ切ったので見逃しておく。


 バグ使ったらこっちがヤバいしね。

 それにしても、やっぱり僕とアルセと猊下だけだとちょっと危ないな。ルクルさん、そろそろ見つけてください。じゃないといろんな意味でヤバそうです。


「だ、大丈夫アルセ?」


「おっ」


 大丈夫か聞きたいのはこっちだよ。ポンタ君。君運動不足だろ。もう息上がってるし。

 というか、運動不足なのによくもティアラザウルスから逃げられたな。ちょっと火事場の馬鹿力に驚きだ。


「アルセーっ」


「お?」


 どこからかリエラの声が聞こえた。

 結構近いぞ。

 だんだん近づいて来る声に、アルセがおーっと感心した声で鳴く。


「あ、見つけたっ」


「るぅ~」


 リエラとルクルが森から姿を現す。

 ルクルさんご機嫌だ。どうやら僕らの無事を確認できて一安心したようだ。


「猊下様。神官長と神殿長が心配していますよ。帰りましょう」


「え? あ、でも……」


「それに、今アルセには猊下拉致の疑いが掛かってるんです。アルセを救う意味でも……」


「おー……」


 しかし、アルセは少し残念そうだ。まだ目的を達せてない。そんな顔をしています。

 猊下もそれに気付いたようでどうしようかと戸惑っているようだ。

 リエラが苦笑気味に、さ、帰りましょう。と手を差し伸べる。

 その手を……


 猊下は手を取り駆けだした。

 リエラから遠ざかるように、アルセの手を引っ張って。

 呆気に取られたリエラはただただ握られることのない手を虚空に突き出したまま固まる。


 とりあえず、もうちょっとアルセに付き合ってくるよリエラ。

 じゃ、そういうことで。

 見えはしないだろうけどしゅたっと右手を上げてリエラに伝えた後、僕はアルセを追って走り出す。

 ルクルが居るし、リエラは後から付いて来ると良いよ。それで危険な時は助けてね。


「ちょ、ちょっとアルセ、猊下様ー!? なんで逃げるんですかーっ」


 これが救世主(笑)の実力か? 追い掛けようとしたリエラが木の根っこに躓いて「はぶっ」と地面と激突してました。

 見ちゃったよ衝撃の瞬間。

 しかも後ろを走ってたルクルもリエラに躓いて手に持っていたカレーをリエラに落とすという大惨事に……負けるなリエラ。


「おー?」


「アルセは、どこか行きたいところがあるんでしょ。行こうアルセ。皆に連れ戻される前に! 僕が、僕が守るからっ」


 決死の覚悟で叫ぶポンタ君。ちょっと君、アルセになれなれしすぎないかな。もうちょっと離れ……あ、ちょっとアルセ、なんで僕を邪魔するの。え? 一緒に連れて行くのこいつを? いや、分かるけど、なんでそんな僕を邪険に……まさか、これが噂の反抗期!?


「のじゃーっ」


 ワンバーカイザーとのじゃ姫出現。

 のじゃ姫なのじゃーっとばかりに両手を突き上げる彼女を見た瞬間、猊下は直線を折れて彼女から遠ざかるように走る。

 ところでアルセ、どっち向ってるの? え。このままでいいの?


「の、のじゃーっ!?」


 なぜ逃げるのじゃー。と叫ぶのじゃ姫は、しかし叢から現れたリュックラビットとの戦いに入ってしまった。リュックサック背負った兎って。なんだそれ?

 その次に現れたのはにっくんとにっちゃん。


 一瞬ただの魔物かと勘違いしかけたのは内緒だ。

 猊下も魔物だと思ったらしく再び方向転換して斜め左に走り出す。

 そこでアルセが指を使って指示。「おっ」と短く伝えるだけで猊下がそちらに向きを変える。


「おいアルセ。何処へ行く気か知らんがそろそろ戻るぞ」


「森の中結構強い敵も居るからあんまり走らないでよ。魔物が寄って来るわ」


 アメリスとミルクティの出現に、しかし猊下は無視して走り抜ける。

 おお、疲れを察したアルセが猊下にポーション差し出したぞ。そこはバグ化した回復アイテムじゃないんだね。

 リュックラビット

  種族:魔兎 クラス:マギラビット

 ・アイテムボックスの代わりにリュックを背負うラビット種。良く落ちているモノを拾ってはリュックにしまっている。

  当り外れはあるものの、稀にリュックの中に金塊などを入れているリュックラビットも居るという。

 ドロップアイテム・兎肉、ウサ耳、リュックサック

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