その真偽確認方法を僕らは知りたくなかった
僕らは呆然としていた。
そこはどう見ても祈りの間などという場所ではなかった。
眼の前には巨大なグーレイ像が祭壇を左右から両手で包み込もうとするような圧迫感のある部屋となっております。
あれ、動き出して祭壇の人物プレスしたりしないよね?
なんかどっかのラスボス戦でこんな画面無かったっけ?
あの銀像破壊したらクリアかな?
祭壇は今いる僕らの場所から階段を昇った先にあり、魔法陣が床に描かれている。
四角い祭壇の左右にはグーレイ像の手が包み込もうとするように設置されており、目の前にはグーレイ像の顔が覗き込むように存在している。
やはりアレを見るとついつい破壊したくなるなぁ。
猊下様は祭壇を昇り、壇上からこちらを振り向く。
そしてアルセの名を呼んだ。
どうやらここから先はアルセと猊下様しか向ってはいけないようだ。
いや、僕は行くんだけどね。
アルセと共に階段を上がる。ルクルさんは留守番で。リエラに止められてました。
おい、そこのストーカー、お前も来んな!
アルセを追って来ようとした見えないおっさんの腹に蹴りをくれてやる。
うごほっと声が漏れて皆が誰の声? と周囲を見回していたけど誰が漏らしたかは分からなかったようです。
ふっ、りっぱな階段落ちだったぜ。
アルセが祭壇に辿りつくと、猊下が手を差し伸べ階段から祭壇へと引き上げる。
その時、アルセが猊下に笑みを向けた。猊下の顔が赤く染まった。
ちょっと、そこ、見逃せない変化したよな今。ちょっと猊下、あんたまさか……
「で、ではそちらにお立ちください。何もする必要はありませんので」
「お?」
え? 踊っちゃダメなの? アルセが心外とでも言うような顔をする。
アルセ、本当に踊るの好きだね。え? 新作あるの!? みたい。ソレは見たいよアルセ!
「それでは、これより神の声を聞きたく思います」
厳かに宣言するとともに猊下が祝詞を唱え始める。
初めて聞いたけど、なんかむず痒くなる讃美歌だなぁ。これで降臨するとかあのグレイ神どんだけ褒められたいんだよ。
あ、グレイ像、じゃなかったグーレイ像が光り出した。
マジで降臨するんだ。
「お聞かせ下さいませ神よ。この魔物アルセは新たなる神であるか、なしか」
―― 神では ない ――
おお、グーレイさんの声が聞こえた。っておい、それはアルセが偽神だと言ってますかグーレイさん! 喧嘩ですか、やっぱり喧嘩ふっ掛けますか?
アルセのためなら僕は神にすら噛みつきますよ。
「では、アルセは神ではなく神を主張する魔王であると?」
―― 神では ない されど 神に もっとも 近き者 ――
んん? 神じゃないけど神に近い存在ってこと?
―― 今は まだ 神ではない 名状しがたき 存在なり ――
名状しがたきってちょっとアルセに大して失礼じゃないですか。あんたの容姿の方が名状しがたいだろ。SAN値下がるぞ。
―― このまま崇められた ならば 祖は 神へと至るだろう ――
つまりグーレイさんが言う事には、アルセはまだ神と呼べる存在じゃないけど、このまま崇め続けたならば本当に神様になれるよって事らしい。
どうするアルセ、神様成りたい?
ああうん。分かってないね。早く踊りたいって顔だよこれは。
「つまり、この魔物、アルセは神と成りうる神候補である。そう言う事ですね」
―― 然り ――
「では、邪神や偽神ではなく、このままで構わないと?」
―― 我等は アルセ神を 歓迎する ――
おお、神敵呼ばわりしてるわりにはグーレイさんが認めたよ。
というか、グーレイ像の頭の上にグーレイさん自身が居るんだけど。
ちょこちょこっとこっちの様子を窺うために顔だししながら、多分だけどボイスチェンジャーみたいな機能使って話してるよね。お前はどこの頭脳は大人な人だ?
ありがとうございました。と神のお声にお礼を告げる猊下様。
おっと、気が付けば下の方にはいつでもリエラ達を拘束できるようにかなりの神官が集まってるぞ。全員神の声を聞いて呆然としていらっしゃる。
まぁ、神自身からアルセを歓迎と言ってるんだから驚きだよね。
神公認の神候補か。アルセ凄いねー。って、ああっ。アルセが耐えきれず踊り出した。
って、それBABAーBA洞窟で聖歌隊が歌ってた踊りじゃないか!? アレ覚えちゃったの!?
猊下さん、これ喜びの表現じゃないよ、ただ踊りたかっただけだってば。
ああ、猊下が凄い楽しそうな顔をというか、これ、見惚れてる?
アルセの踊りはババァがジジィへ求愛する踊りの一つだった。
つまり、猊下さんが見てるのはアルセが求愛して来ているかのような踊りなのだ。
あー、これなんかまずくないですかね? アルセは嫁にやりませんよ?




