その猊下との会談を彼らは知りたくなかった
教会は大盛況。多くの信者が祈りを捧げては去って行く姿を見ながら、関係者用通路を通って教会内部へと向かう。
グーレイ教教会本部はもう、城といってもいいぐらいの広さだ。廊下すらも人が5、6人並んでもまだ空きがあるくらいだ。
神官たちが歩いているのだけど、赤色の神官服の男女には、必ず青色神官が数人後ろを付いているし、緑色神官の後には赤色神官が付き従っている。
この事から見るに、神官の中にも位が存在し、緑、赤、青の順に高い位になってるんだろう。青が一番下になるのかな?
マイネフランの教祖たちは全員青だったよな。もしくは無地だったはず。
おお、何だあのおっさん、金色服だよ。すげぇ成金感パネェ。付き従うのは黒服神官だ。
兵士はそのおっさんの元へ向うと、一礼して僕達を紹介する。
ふんっと鼻を鳴らしながら面倒なことだ。とお小言告げて、おっさんは僕らを連れてさらに歩き出す。
兵士さんはここでお役御免らしい。職務へと戻って行ってしまった。
「ここだ。我らが猊下様と銀色神官長がお前達に話があるらしい。全く、この私の手を煩わせないで頂きたいモノだな」
ふんっと再び鼻を鳴らして去って行く金服のおっさん。ふむ。どうやらグーレイ教は神様が銀色なせいか金より銀の位が上位に位置しているようだ。
僕らはおっさんが居なくなってから部屋をノックし入室許可を貰ってから部屋へと入る。
「ようこそお越しくださいました」
そして、対面に出向える猊下と銀色神官長。
銀色神官長は狐目の老人で、見るからに老獪な狸親父、いや、むしろ狐親父といった容姿だ。
絶対に汚職に手を染めてますと顔が言ってます。
ふむ。これが銀色でアレが金色と。この教会絶対汚職塗れだよ。
そして、それを纏める猊下様が……
青い髪に長細い帽子を被った少年だった。
帽子や着ている神官服は白を基調とした銀色で、銀色神官長よりも煌めいて見える。
しかし、猊下というよりは猊下の服に着られた子供としか見えない。
あきらかに傀儡政権の申し子である。
少年は僕らがやってきたのを見て、椅子から立ち上がると、デスクを迂回してリエラ達の前で礼をする。
「あの、この手紙ではアルセが神を偽っているとされているようなのですが、どういうことですか?」
「グーレイ教会以外に教義が生まれたのはここ数百年ありませんでしたから、必ずこの教会で神の許しがあるかどうかを調べねばなりません。神が邪教と言うならば、我々はアルセ神を偽神、あるいは邪神と位置付けるつもりです。もちろん、真偽を問う儀式を行い、その結果グーレイ神とは別の神であると分かれば我が教会はアルセ教を認め、多神の一柱と認知することとなります」
難しい言い回しで分かりにくいんだけど、要するにアルセ神とか言いだす自称神の魔物が現れたからソレが邪神かどうかの真偽をここで問いたいということらしい。
知らんがな。と言ってしまえばそれまでなのだけど。また面倒なことになりそうだなぁ。
「ふーん。グーレイ教は何様なのかしら?」
「ちょ、アカネさんっ」
「何者と言われましても、全国に布教している我が教団としましても新規に起こったアルセ教は捨て置けない存在なのです。我が神と同一か、あるいは別の神か、それとも神に仇名す存在なのか。もしも仇名す者であると言うのならば、私たちは邪神と認定せねばなりません。邪神がこれ以上力を付ける前に消さなければ世界が滅びかねませんから」
ほほぅ、アルセが邪神とな。
それは僕への挑発と思っていいのかな猊下くん。僕はアルセに関する挑発なら高く買わせていただきますよ。御代はバグってるけどねぇ!!
「猊下が言われている事は我らが教団の総意ですな。アルセ神と呼ばれるその魔物がどういう存在なのか、我々も扱いかねておるのです。ぜひとも儀式を無事に済ませ、我々が安心できる存在であると証明していただきたい」
「成る程。あんたたちの主張は良くわかったわ。でもアルセ教枢機卿として言わせて貰うなら……」
アカネさん、あんたいつの間に枢機卿なんて偉そうな役職に就いたんだ?
「貴方達の方が邪教であるかもしれないのに、そこに御神体であるアルセをのこのこ行かせる訳にはいかないわね」
「ご安心くだされ、儀式についてはそちらの皆様も共にご見学いただけるよう手配しております。と言っても流石にアルセ神以外の魔物を連れ込む訳には参りませんが」
結局、こいつ等何がしたいの? リエラ達は分かってて頷いてるの?
多分だけど、どっかの室内で儀式を行うんだろう。ソレ如何によってはアルセを邪神認定すると。神様、そこんところどうなのかな?
面白そうだからってことで邪神認定したら僕は何するか分かりませんが?
とりあえず彼らは既に用意を整えていたようで部屋に案内次第早速儀式を執り行うらしい。
ところで、儀式って何するの? アルセは安全なんだよね? バグらせちゃってもいいのかな? かな?




