その教国の狂信具合を彼らは知りたくなかった
「ここが、グーレイ教国?」
リエラが呟きながら周囲を見回す。
凄いな、街の入り口にグレイの銅像が二つ立ってるぞ。阿吽像みたいに向い合ってるけどかなり恐い感じに仕上がっている。
門をくぐると目の前に飛び込んで来る五メートルくらいの巨大なグレイ像。
門からやってくる旅人を睨みつけるかのように真正面から見つめている姿をしている。
おそらくだけど悪意を持つ人間が街に入らないか見張ってるとかそんな意味を持つ像なんだろう。
立ち並ぶ民家と思しき物は皆がマイネフラン国にあった教会みたいな形状をしており、その全てにグーレイ教を露わすレリーフが刻まれている。正直ここまで揃えられると気持ち悪い情景も綺麗に見える。
お、アレは宿屋か?
一応宿屋の看板が付いてるしそうなのだろう。
入口付近から見える光景を見まわしていると、兵士の一人がとある建物を指差す。
どうやら本部に告げに行った者が戻るまでここで待っていろと言う事らしい。
ここは兵舎のようだ。数人の兵士達が突然やって来た僕らに驚いた顔をするが、一緒に入って来た兵士が理由を告げると、成る程神敵か。とか言いだした。
アルセを神敵とか、本当にここは酷い場所だな。信望する神の程度が知れるよ。
そんな神様は先程から私のせいじゃないからね。とかツンデレみたいな念話を送ってきてます。
多分空耳だと思うけど、なんか声が届いて来る気がするんです。
「待ち時間が面倒ね。ウチの教会も連絡の仕方を変えた方がいいかしら、セインに今度伝えておこうかしら」
「考え方が完全に管理者になってますよアカネさん」
「まぁ、つい先日までアルセ教の教祖してたからねぇ。ふふ。なかなか面白かったわよ。こういう経験もなかなか出来ないし」
「教祖かぁ。でも、確かに普通な冒険だと出来ない事結構してきたなぁ」
思い返すリエラ。彼女の脳内では僕らとの冒険がノンストップで流れているのだろう。
一杯冒険したなぁ確かに。その度にアルセが謎変化してったわけで。そう言えばアルセ、容姿はクラスチェンジしてもかわらないね? ランクアップの方だっけ? まぁどっちでもいいけど。
アルセは暇になった途端に踊り出した。
今回はのじゃ姫も踊りに参戦し、その周囲でにゃんだー探険隊が踊りだしていた。
なぜかアルセとのじゃ姫の間から僕ら側に突き出た場所にチューチュートレインがいて、僕らに向けて回りまくっている。
僕らは何を見せられているんだろう? 魔物参加型の踊り? おひねりいるのかな?
プリカとパイラはルクルさんにお任せだ。カレーならほぼ無限に出せるだろうし、好きなだけ喰うが良い。
あ、踊りににっくんとにっちゃんが参加した!?
ちょ、ミーザル邪魔。なぜ僕の視界からアルセを隠すように自己主張するの!
しかも僕じゃなくてアニアに向けてるでしょ、なんでこっちまで邪魔して来るの。アルセが見えないだろっ。
「暇、ですねぇ」
「そうね。というか、今気付いたんだけど」
ん? どうしたのミルクティ?
「このメンツ、男少ないわね」
「少ないというか、あそこの世紀末系下っ端以外魔物か女性じゃない。オスってルグスとミーザルくらいでしょ。にっくんとかにっちゃんとかワンバーカイザーに性別ってあんの?」
アカネさん、僕、僕がいますよ。男、僕男ですよ。
自己主張しようとするけど残念、僕は見えないので自己主張ができません。
こういう時はミーザルが羨ましいな。
「失礼しました。許可が出ましたのでご案内させていただきます」
小一時間後、兵士の一人がやって来て告げた。
僕らは彼に案内されるままに教国内を移動する。
しかし、なんといえばいいのか、街を歩いてると気付かざるを得ない程に、狂信者感が溢れているなぁ。
皆が信者服っていうのかな。白いワンピースみたいな布を身に付けている。緑色の帯で止めてるので、中世かそれ以前の街並みにしか見えなくなってくる。
時折、何の脈絡も無く目の前にそびえる大教会に祈りを捧げだす国民たちが異常にしか見えなかった。
だって突然しゃがみ込んだと思ったら両手を組んで額の前に差し出し、おお、神よ。みたいに祈りだすんだからな。恐いわっ。
一応、店を幾つか見掛けた。武器屋や防具屋、道具屋などはあるのだが、どうにも酒場などは無いらしい。
信者には必要無いそうで、兵士達も酒を飲むのはミサなどで出されるワイン位なのだそうだ。
どっかの影兵さんには生きづらい国だろうな。
今回向うのは目の前に見える巨大な教会。かなり長い階段があり、数千段と思われる階段を昇った先に存在する教会だ。
こっからでも分かるくらいにグレイ像が鎮座して城下町を見守っている。
城、と言うより、神殿といえる場所だった。
お参りの人も多いな。絶えずにぎわっているというか、ここに参る以外の暇つぶしが無いといったぐらいの交通量だ。
正直はぐれそうで怖い。仕方無いのではぐれないように左にリエラ、右にアルセの手を繋いで間を歩かせていただきました。




