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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その教国で起こった拉致を彼らは知りたくなかった
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その教国がどんな場所かを彼らは知らなかった

「はぁ~、意味が分かんない」


 本日、何度目かになるゴスロリファッション少女の呟きが漏れる。

 はい、アカネさんであります。

 窓? のような場所に両手を付いて360度パノラマ展開な空の上を堪能しているようですが、気付いてます?

 パノラマ展開だから分かりづらいかもしれないけど、それ窓じゃなくてエアークラフトピーサンの体内の肉部分だからね?


「しっかし、私がいない間に随分と人が変わったわね? デヌだっけどうしたの?」


 あ、ちょっと、いきなり爆弾放り込むなよ!


「あー、あの人はその……」


「彼女が出来たから田舎に戻ったらしいわよ」


 舌打ちしてミルクティが告げる。

 へーと相槌打ったアカネは禁句だった事に気づいたらしく次の会話を模索する。

 チグサとケトル、ついでにアニアが関わり合いにならないように別の方向に移動して空を眺め始めた。おお、珍しくリエラもアメリスと一緒に逃げている。


「よぉ新入りぃ、随分とナメた態度取ってンじゃねーかぁ、ああオイ、この俺様に挨拶なしかぁ?」


「……何コイツ?」


 アキオくんがアカネに構って来ました。

 話題が別の話になった御蔭でアカネさんが安堵したのはいいんだけど、アキオの態度にえ? こいつも仲間なの? みたいな顔をする。

 既に一度以上会ってることは記憶にないらしい。インパクトは強いけど所詮は下っ端だからなぁ。


 アキオはそんなことに気付かずミスリル製のナイフに舌を這わせていらっしゃる。それをジト眼で見つめるアカネとネフティア。

 おおぅ、ネフティアいつの間に?

 ネフティアは無言でアキオの膝裏を蹴りつける。げしっと蹴った瞬間ひざかっくんの要領でナイフが舌にささりながら崩れるアキオ、いきなりの流血だ。


「ぎ、ぎゃあああああああ、舌が、俺の舌がぁぁぁ!?」


 倒れて来たアキオの頭をひっつかんだネフティアが人の邪魔しない。とでも言うように頭を掴んだまま引きずって行く。魔銃を使って後手に回復魔弾を打ち込んでやってるのは彼女なりの優しさなんだろうか?

 その近くではプリカとパイラが食事中です。食事の対象はワンバーちゃん。ではなく僕が保存していた魔物の死骸です。アルセが面白がってポシェットから勝手に出してます。


 ワンバーカイザーはのじゃ姫を頭に乗せてお昼寝中。直ぐ横ではにゃんだー探険隊に囲まれたルグスが餌やりを行っており、ミーザルが空軍カモメ達に自己主張を繰り返している。

 うーん、いつも通りの日常に思えてしまうのはなぜだろう。

 結構異様な光景なんだけどなぁ。


「まぁ、とりあえず元気そうなのは理解したわ」


「アカネさんも元気そうで何よりです」


「私は元気に決まってるじゃない。主にあいつのせいでね、あいつの」


 そこでなぜ僕を見るんですかアカネさん。ってかアルセ、そろそろやめて。折角溜めた魔物の死骸殆ど無くなってるじゃないか。非常食兼非常用の資金源ですよ!

 ああ、だからゴスはダメだって!

 ルクル、悪いけどカレーお願い。あいつらの食欲満足させてあげて!


 アカネとミルクティが会話しているのを尻目に僕はアルセを止めに入る。

 ええい、膨れないの。何をそんなに気に入ったのアルセ。僕のポシェットだから無許可で全部だしちゃだめだってば。

 僕がポシェットからモノを出さないようにと伝えたせいだろう。ふくれっ面のまま踊りだすアルセ。踊り方もなんだか乱雑な気がします。


「チグサ、見て、もうグーレイ教国領に入ったよ」


「はい。あちらを。アレがグーレイ教国です」


「ピーサンに命令お願いします。あの国の近くで止められる広場があればそこに着陸してください」


「ミャー」


 ウミネッコの一羽がリエラの言葉に答えて敬礼する。

 しばらくするとエアークラフトピーサンが一番大きな国の近く、草原に着陸する。

 すると、国から異変を察したらしい兵士達がわらわらと出現を始めた。


 気付いたリエラとアカネが慌ててエアークラフトピーサンから出て行く。

 交渉とか説明は二人に任せれば……あれ、ミルクティも行くの? まぁ、この三人に任せればいいか。

 艦内で見ているのもどうかと思い、アルセと共に僕も外に出る。


「で、ではこの魔物はあなた方の乗り物であると?」


「はい。ですから討伐の必要はありません」


「し、しかし、口から入る乗り物? 魔物なのに?」


 まったく理解できないといった表情の兵士たちに、困った顔をしているリエラ達。

 アルセと共に彼らに近づくと、兵士達がアルセに気付いた。


「おっ」


「あ、アルセイデス!? ということは、こいつが神敵!?」


「ちょ、ちょっと、神敵ってどういうことですか? 疑惑があるだけじゃないんですか? それを撤回して貰うためにわざわざ出向いたんですよ」


「む、い、いや、その。失礼。少し取りみだしただけです。ですが、訪問内容は理解しました。国門までご案内しましょう。上の者に来訪を伝えてまいります」


「あ、はい」


「ただ、その乗り物である魔物は……」


「送迎に使いますので帰りにもう一度だけ呼びますが、基本はこの近辺には寄ってきませんよ」


 リエラの言葉に明らかにほっとした顔をする兵士達。魔物には優しく無さそうな国柄というのが如実になる態度でした。

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