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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
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彼らが屯う理由を町民は知らない

 やっと戻って来ました。

 バズ・オークに任せたら普通に森から抜け出せた。

 町並みが見えた瞬間、アメリスが泣き崩れていたが、これはメイドさんとリエラが上手くフォローしていたので問題無し。


 それにしても、カインはどこに行ったんだろう?

 僕じゃカインが居ないのを教える手立てがないし、ネッテたちが気付くのを待つしかないか。

 ん? あれ? なんか町が騒がしい?


 なにやら険呑な雰囲気が流れているというか、兵士が、冒険者が、忙しなく行き来している。

 町民は見当たらない。皆家に入っているようだ。

 森に入る前とは全く違った町の様子に、アメリスも何かを感じて泣きやんでいた。

 というか、にっちゃうつう゛ぁいが物凄い形になってるんですけど、ぎゅっと抱きしめるの勘弁したげて、なんか凄い窮屈そうだよ。


 案外、逃げた理由はこの拘束力が嫌になったからなんじゃ……

 ああ、つぶらな瞳がこっちを見てる。

 助けてって気持ちが伝わってくるようだ。

 僕は見えないんだけどね。アルセ、見ちゃダメだよ。僕たちじゃ助けられないからね。


「皆様、アメリスお嬢様も無事に戻られましたし、報酬の方はギルドに振り込ませていただきます。明日にでも手続きを行ってください」


「わかりました。でも今日は屋敷までお届けしますね」


「そうですね。なにやらキナ臭い様子ですし、お願いいたします」


 ネッテの言葉でギルドより先にフィラデルフィラル伯爵邸へと向かう事にした。

 といっても向って直ぐにアメリスとメイドさんと別れ、彼らが屋敷内に消えるまでを見送るだけだったんだけど。

 これで依頼完了だ。

 アメリスに外傷もないのでネッテ達の危機も無し。

 めでたしめでたしである。いや、カインいないけどさ。


「とりあえずギルドに行ってみましょ。何か街中の様子の理由が分かるでしょうし」


「そうですね。バルスさんたちも行かれるんですよね?」


「ああ。とりあえず依頼完了の報告を済ませないとな」


「その後は換金ね。今回は結構な大物退治できたし」


「そうだったな。では死体を取り出すぞ?」


「ちょ!? クーフ。ここでは止めなさいっ!」


 クーフ大先生。今までもしかしたらとは思っておりましたが、まさか天然入ってますか? ボケてますか? 街中で魔物の死体取り出すとか、大パニックですよ?


「むぅ? そうか?」


 素で取り出す気満々だった。止められなければ確実な大惨事+兵士様の御厄介になっていたはずだ。

 そんな一歩間違うだけで危険なやりとりを終えた僕たちは、まずはギルドに寄ることになった。

 そしてギルドに入った瞬間である。


「見つけたあぁぁぁぁぁ――――ッ!!」


 ギルドに入った瞬間、コリータさんが僕らを指差して叫んだ。

 当然意味が分からず呆然とする面々。ギルドに居た冒険者たちは僕らをガン見しだした。


「え? っと、なんですか?」


「これ、これあんたたちのアルセイデスですよね!」


 と、羊皮紙に書かれた似顔絵を両手で見せつけながら迫って来る。

 物凄く眼が血走っていて恐い。


「そ、そうですね……たぶんアルセです」


 頭の葉っぱの数からしてアルセだろうね。間違いなく。


「よかった。これで町が危機から救われる」


「町が? あの、どういう事ですか?」


 いきなり安堵し始めたコリータさん。意味が分からずリエラが聞いていた。


「町のゴボル平原入り口見てないの?」


「森から戻ってきたばかりなので」


「行ってみればわかるわ。いえ、強制命令です。行きなさい。これはギルドの指名依頼。町門に屯するツッパリをどうにかしてください!!」


 ……なんか、聞いてはいけない単語が出た気がします。

 屯する……ツッパリ?


「えーっと、詳しく教えてくれません?」


 ツッパリと聞いて心当たりのあるネッテが冷や汗混じりに告げる。


「つい先程よ。群れを成したツッパリたちが大挙して押し寄せて来たの。その数100名は居るわ。別に町に攻め入るわけじゃなくゴボル平原入口側で待機して行きかう人々にこの似顔絵を地面に書いて威圧してくるの。ツッパリの集団に威圧されるなんてまさに悪夢だわ。こんな事態生きて来て初めての大事件よ。王国では兵士の招集も始まっているし、大戦争が始まるかも。それよりは指定されたアルセイデスを探しだして差し出す方が幾らかマシだわ」


 ……ああ、これ、僕理解しちゃった。

 多分、お礼参りだ。

 アルセにメンチで負けた個体がリーダー格に泣きついて皆でリベンジマッチに来たんだ。

 あ、アルセがヤバイ!?

 100名のツッパリというかリーゼント不良集団が屯する場所へアルセを向かわせろというのかこの女!? お前は悪魔か!?


「これは国とギルドからの強制依頼です。断った場合国家反逆罪と認定させていただきます。申し訳ありませんがアルセイデスを連れてツッパリたちのもとへ向って下さい」


 コリータに聞こえない声で叫ぶ僕。でもその背後からギルドマスターまで出て来て頭を下げられてはどうにもならなかった。というか、国家反逆罪ってどういう事ですか!?

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