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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第ニ話 じゃじゃ馬嬢を止める術を彼らは知らない
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忘れられた存在がいることを誰も知らない

 バルスとユイアは問題無くブラックドッグと対戦していた。

 やはり長い間パーティーを組んでいるんだろう。

 無駄のない闘い方でブラックドッグを追い詰めている。


 バルスがアタッカーで背後からユイアが魔法でフォローしていく。

 バルスの隙を窺うブラックドッグが隙を突こうとした瞬間、タイミング良くラ・ギの魔法が襲い掛かり逆に体勢を崩される。

 そこにバルスの攻撃。

 ぎりぎり避けるブラックドッグだが、この連携に成す術なく追い詰められていた。


 一対二なら十分対処できるらしい。

 森の少し深い場所まで来てるだけのことはあるようだ。

 あ、今の一撃でブラックドッグの前足が一本斬れた。

 これはもう詰将棋だね。


 バルス達は問題無さそうなので僕は他の面々に視線を向ける。

 バズ・オークとネッテが闘うのはマダラオロチだ。

 マダラオロチには毒があるらしい。

 ただ噛みつくだけではなく、毒を吐いてくるらしいのだ。


 ネッテがバズ・オークに細心の注意を払うよう告げている。

 バズ・オークもついさっき吐き出してきた毒をなんとか避けたばかりで、相手の厄介さを認識しだしているようだ。

 一定距離を保ったまま硬直状態に入っている。

 どうやらあれ以上近づくと毒吐きに対処できないようだ。


 けど、その間合いも、ネッテには関係ない。

 バズ・オークの背後に隠れるようにマダラオロチの視界から消え、側面に飛び出してのコ・ルラリカ。

 変温動物のマダラオロチには氷結魔法は絶大な効果を生み出すようだ。

 この二人は完全に魔物を圧倒していた。

 こちらも放置でいいだろう。


 さて、問題は……

 僕はもう一つの戦場を見る。

 エンリカとリエラが対応する初見の魔物、レッドマンティス。


 こいつがかなりの曲者だった。

 両手の鎌を顔を守るように構えてじりじり近づいてくるレッドマンティス。

 アルセソードを持ったミミック・ジュエリーを装備したリエラが斬りかかるが、その瞬間、鎌から繰り出される無数の斬撃。

 慌てて飛び退くリエラの頬に浅い傷がつく。


「な、何今の!?」


「リエラさん気を付けて、レッドマンティスは攻撃と同時に風の魔法を使ってくるわ」


「え? じゃあ今の風魔法!?」


 風圧攻撃で相手を切り裂くってヤツだね。

 厄介な攻撃持ってるな。

 ……ふと、思ったんだけどさ、油断なく構えて獲物に近づくレッドマンティス、背後や横からの攻撃は、見えてるんだろうか?


 そっと僕は歩み寄る。

 それに気付いたリエラとエンリカがアルセ? と疑問を口にするが、何かやらかすと気付いた二人は押し黙る。

 次の瞬間、僕は思い切りレッドマンティスのお腹を蹴りあげた。


 びっくんと驚くレッドマンティス。

 ダメージはそれ程でもないみたいだけど不意の一撃で完全に思考が止まったらしい。

 好機を見付けたエンリカが速射する。

 一、二、三と三連撃を見舞った。

 一撃は鎌に弾かれたが、二撃めが身体に、三撃めは左目に突き立つ。


 そこへリエラの渾身の一撃。

 右上から左下へと駆け抜けるアルセソード。

 さらに追撃とばかりにミミック・ジュエリーが刀を返す。

 真一文字に切り裂く一撃が加わり、レッドマンティスが四つに分解した。


「な、なんとかなった?」


「アルセちゃんの支援がなかったら危なかったかもですね。魔物なのに凄いねアルセちゃん」


「レッドマンティス、いえ、マンティス系の魔物は側面からの攻撃に弱いみたいですね。これからはもっと楽に闘えそうです」


 エンリカとリエラは互いに片手を振り上げパシンと合わせると、同時に笑みを零した。

 その戦闘が終わった時には、既に他の闘いも終わったらしい。

 既にバズ・オークとクーフが解体を始めていた。


「依頼のにっちゃう・つう゛ぁいも見つかったみたいだし、帰りましょうか」


「ぶひ!」


「帰り道ならバズ・オークさんに任せてほしいそうです。匂いで覚えていると言ってますよ」


「さすがバズ・オーク。信頼してるわ」


「バルス。私達も一度戻りましょ。さすがに疲れたわ」


「そうだな。すいませんけど同道いいですか?」


「ええ、問題無いわ。一緒に帰りましょ。その方が安全でもあるし」


 と、いうことで、バルスパーティーと共に僕らは町に戻ることになった。

 クーフとバズ・オークの解体が終わると、皆が帰り支度を始めて歩きだす。

 警戒をするのはバズ・オークとクーフ。本当に頼れる方々だ。

 用心棒のクーフ大先生が居ればカインが居なくとも十分……


 ……カインは?

 カイン居ないよ!? どこだあいつ!?

 まだ見つかってないの忘れてた!

 っていうか、皆帰る気満々なんだけど、一人忘れていませんか!?


「うーん?」


「どうしたのリエラ?」


「ネッテさん、私、何か忘れてるような気が……」


「忘れてる? あ、あなた魔銃どうしたの?」


「え? あ、本当だ。どこに……」


「ああ、それならバ我が回収しておいた。アメリス嬢を追っている時に落としていたぞ。次からは気を付けることだ」


 クーフが柩から魔銃を取り出しリエラに渡す。

 それでリエラ達は忘れている何かが魔銃だと認識したようだ。

 ダメだ。忘れられてる。パーティーリーダー、忘れられてますよーっ。

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