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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十部 第一話 その騎士団を抜けた者たちのその後を僕は知らない
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その覇王の武具を僕らは知らない

「よぉ、何度も悪りぃな」


 禿げあがった男がそいつの到着を知ってよぉっと手を上げる。

 ここはゴボル平原。男の後ろには巨大な何かが存在し、布が被されている。

 男以外にも無数の厳つい男達が彼らの到着を待っていた。


 バイクと呼ばれる武器から降りたポンパドール男達が、禿げあがった男の前までやってくる。

 代表の白ラン男は、居並ぶ男達をじろりと睨みながら禿げあがった男に視線を向けた。


「オルァ」


 あんたらの作ってくれたこのバイク、大切に使わせて貰っている。

 そんなニュアンスを込めた声に、禿げた男は快活に笑って頷いた。


「そうだろそうだろ。辰真。テメーらのために職人どもが必死こいて作ったんだ。乗り手が満足できる武器を作る。職人冥利に尽きるってな」


「おい武器屋の。世間話なんぞ後にしろ。こっちは紹介したくてうずうずしてんだよ!」


「おるぁ?」


 紹介? と辰真は首を捻る。

 そもそもゴボル平原に呼び出されたのはなにやら新しい武装を彼らがお披露目するためのはずだ。

 毎度新しいバイクを作ってくれるのには感謝しているが、そろそろツッパリ全員にバイクが行きわたりそうになっている。もう要らないとは流石に言えない辰真は困った顔をしていた。


「本日呼んだのはな、ちょいと暴走し過ぎて作っちまったモンスター、なんとか使えないかとおもっ……オイコラ、布取ってんじゃねェ!?」


 武器屋の親父の言葉が終わるより早く、隠してあった武装の布が取り外されて行く。


「お、オルァ!?」


 それはあまりにも巨大な二輪のバイクであった。

 否、それをバイクというにはあまりにも歪。

 タイヤの代わりに円筒型の金属が取り付けられ、座席など飾りとばかりの巨大なモンスターカーが現れた。

 現代人が見ればこう言うだろう。これはもう、バイクじゃなくてロードローラーだ、と。


 世紀末にでも走っていそうな指揮官用のバイク。それも仁王立ちした指揮官が周囲を押しつぶしながら走るような一物である。

 その姿を見た瞬間、辰真の全身がぶるりと震えた。

 暴れ馬。なんてものじゃない。まさに荒ぶる竜と相対したような気分である。

 自分の数十倍はあろうかと思われるそのバケモノ車に、辰真は言いようのない高揚感を覚えた。

 乗りこなしたい。思わず思ってしまったのも仕方無いだろう。


「枢機卿の協力でこいつのエンジンは核融合エンジンだ。半永久機関らしいからな。この巨体に似合わずものすげぇ速い。生身の人間じゃ動かす事は出来ても速度に付いて行けずに死んじまうかもしれねぇ。まさにツッパリのための武器だ」


「オルァ」


 上等だ。

 辰真はふらふらと誘惑されるかのように漆黒のロードローラーへと乗り込む。

 最初こそ武器屋の親父による動かし方のレクチャーがあったものの、すぐにエンジンがかかり、モンスターがついに始動した。


 物凄い異音を響かせながらゆっくりと、そして徐々に加速し始める。

 重量物が全てを押しつぶし草原を平らにならして行く。

 驚き逃げまどうオオカミモドキを押しつぶしながら、辰真は適当に円を描くように一週し帰ってくる。


 確かに速い。だが、自分の愛機程の速度はない。

 否、これはこいつの本気ではないと辰真は気付いている。

 説明はされなかったが、本能で理解した。このボタンを押してくれと、この武器が叫んでいる。


 赤いボタンを押した瞬間だった。

 ボシュっと何かが聞こえた。 ボッボッと何かが点いたり消えたりする。

 次の瞬間、ロードローラーの背後から爆発するような音とともに炎が噴き出した。

 一瞬で加速するロードローラー。先程までの比ではなく、まさに時速300キロを越える速さへと突入する。


 地面を破壊しながら超高速で走るロードローラー。逃げまどうオオカミモドキを巻き込みながらただ真っ直ぐに突き進む。背後からは炎を噴き出し、耕した土を焼き払いながら血河を作りだして行く。

 辰真は知らず、雄たけびを上げていた。

 腹の内から湧き上がる歓喜が止められない。

 まるで自分の身体の一部がついに見つかったような、カチリと何かが填まった気さえする。


「あの野郎、ロケットダッシュシステム教えてねェのに使ってやがる……」


「すげぇな辰真の兄ちゃん。ふふ。作り終えた時にゃヤリ過ぎたかと思ったが、いい仕事だった」


「そろそろツッパリの人数分作っちまっただろうしな。次は何を作ろうか?」


「折角だ。皆で意見を出し合おうぜ?」


 職人気質の男達は新たな武器防具を作る話を既に始めていた。

 武器屋の親父はソレを見ながら頭を掻く。

 少し前までいがみ合っていた武器屋と鍛冶屋。防具屋やら道具屋やらを巻き込んで、いつの間にか仲良くなってしまった。これもアルセ姫護衛騎士団の御蔭という奴だ。


「アルセの嬢ちゃん用に、なんかプレゼントでも作ってやっかなぁ」


「「「「「「「「「「それだっ!」」」」」」」」」」


 独り言のつもりだった武器屋の親父の言葉に、男達が反応する。また男達のアイデアでやりすぎな物品が出来あがることになりそうだった。

大きさは大体、地ならしできる某MCアドラ○テアあたりと同じくらいw

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