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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十部 第一話 その騎士団を抜けた者たちのその後を僕は知らない
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そのロックスメイアで売りだされた記事マイネフラン編第二回を僕らは知らない

知らない国に行ってみた第74回

       マイネフラン王国編~枢機卿が全裸好きだと知らなかったのか?~


 前号からの続きで本日もマイネフランに付いて紹介して行こうと思う。

 この国は今まで大した特産品は無いものの、国王の采配でそれなりに強い国としての体裁を保っていた。

 昔のままでも充分活気ある国であったのだが、アルセ神が出現してからは一気に国力を高め、各国からの注目も高まりつつある国である。


 実は、この国は数か月前に滅亡の危機を何度も味わっているのである。

 さかのぼる事半年程前であろうか? ゴブリンの大量発生が確認されたそうだ。

 ただのゴブリンではない。魔王種とゴブリンマザーの二匹を含む、オーガの入り混じった数千にも上る大発生だ。


 正直そんな事態がロックスメイアで起こればほぼ確実に滅亡していただろう。

 我々がもしもマイネフラン国民だったと仮定すると良く生き残れたものだと今でも生きている事が信じられないことだろう。

 だが、まるでアルセ神はこれを事前に察知したかのように次期国王であるカイン王子の冒険者パーティーと出会い、数々の仲間を集め、このゴブリン大量発生をマイネフランに乗り越えさせたのである。


 当時、戦場で魔王ごぶりんを見た兵士に話を聞いてみたところ、ツッパリの魔王辰真とごぶりんが激闘を繰り広げ、マイネフランの大英雄と呼ばれるくずもちという名前の新種の魔物がごぶりんにトドメをさしたのだという。

 彼は当時の話を詳細に話してくれ。興奮気味に我々に分かりやすく教えてくれた。

 まるで英雄の冒険譚でも聞いているような話しであったため、後のコラムで纏めたいと思う。題名はアルセ姫護衛騎士団の軌跡。とでもしておこう。


 とにかく、この闘いでアルセ姫護衛騎士団が有名になった事は確かである。

 次に国に振りかかった不幸は、ロックスメイアの姫ツバメ様もいらっしゃった勇者カインと第三王女ネッテの結婚披露宴であった。

 四つの国が勇者ヘンリーの導きによりマイネフラン壊滅を掲げて攻め寄せたのである。

 だが、運の悪いと言うべきか、そこにはアルセ姫護衛騎士団が勢ぞろいしていたと言う。


 魔王、拳帝、英雄、戦乙女。さらにはアルセ神が呼び込んだ魔物の群れが一堂に集ったのである。

 まるで謀ったようなそのタイミングで、各国の精鋭はさんざんに討ち滅ぼされ、集っていた別の国々にマイネフランを魔物の王国として震撼させたのである。

 以後、マイネフランは魔物との融和を前面に押し出し、この後に各国に伝わったあのアルセ神の奇跡と呼ばれる黒死蔓延と鎮圧が起こったと言われている。


 その時に出来たのが、ロックスメイアでも記憶に新しいアルセ教である。

 アルセ神を神と崇め始めたマイネフラン国民の強い願いから教会が建てられ、さらに集まっていた他国の王侯貴族の一部までが崇拝を始めたことで、各国に普及していった。

 その普及率はあまりに速く、さらに各国の特色を持ったアルセ教会は各地のアルセ教ファンの巡礼地となり、写真収集家たちが今、こぞって各教会を訪問している熱狂ぶりである。


 本教会に顔を出して見た我々は、丁度タイミング良く教皇の交代時に居合わせる事が出来た。

 本来ただ説法を行うだけだった元教皇、今は枢機卿が冒険者に戻る事を宣言し、今まで育てていたらしい少女に教皇の地位を譲ったのである。

 その少女はセインという名前の元孤児であったという。

 マイネフラン貧民層の最底辺にいた少女は、アルセ神に黒死を治して頂いたことで彼女を熱狂的に信奉し、その熱意でついに教皇となったのである。


 いきなりの交代劇に面食らった我々だが、次に起こったことは筆舌尽くしがたい。

 我々は、本物の奇跡を見てしまった。そう表現するしかなかった。

 何が起こったのか、今でも信じられないくらいだが、教皇セインが宣言を終え、アルセ神の像へと祈りをささげた時だった。周囲を光の球が飛び交いだし、満ちた光がアルセ神像へと集ったのだ。その光は天高く昇る柱と化し、上空へと打ち上げられた後、教皇セインを包み込むように舞い降りた。


 誰もの口から洩れた。聖女だ……と。その姿はあまりにも神々しく、まさに神に認められし聖女の姿であった。アルセ教に二人目の聖女が現れたのである。

 思わず写真を撮ってしまったが、教会側に規制されることはなく使ってよいということだったので、右に載せておこうと思う。新聞であるため白黒になってしまっているのが辛いほどの改心の出来だった。もしもご興味があるならばロックスメイア記者団本社を訪ねてほしい。


 聖樹の森近郊にあるネズミンランドは、数年前からマイネフランの唯一の観光地となっていたのだが、奥に黒死の原因個体が生息することが判明し、今は封鎖されている。もう二度とダンジョンとしても復活する事は無いだろう。


 また、聖樹の森に行ってみようとしていた我々に、教皇セインが快く同行を申し出てくださった。教皇セインは天真爛漫な少女であり、彼女単体で見たのであれば、彼女が教皇であるなど、まして最下層の貧民であったなど想像もつかないだろう。

 本当に、何処にでもいそうな平民の少女にしか見えなかった。


 しかし、聖女の片鱗は何度となく見せつけられた。

 なんと彼女は森の守護者と呼ばれるアルラウネとのコンタクトに成功していたのである。

 彼女の協力で我々は伝説的聖地と呼ばれるアガスティアの樹を写真に収めることに成功した。

 もしもここまで容易に辿りつく事が出来れば、マイネフランの最強の観光名所となることだろう。これもまた白黒になっていることが悔やまれる。


 なお、教皇セインに枢機卿の秘密を教えて貰ったのだが、実はこれ、マイネフランでは周知の事実であるらしい。なんと枢機卿は、衆人環視の元で全裸になるのが好きな人であるらしい。

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