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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十部 第一話 その騎士団を抜けた者たちのその後を僕は知らない
816/1818

その記者たちの明日を僕らは知らない

 ロックスメイアには報道部という名前の各国の情報を放映する機関が存在する。

 袴姿の男女からなる和風の服装をした使節団であり、魔法具を使って報道対象の写真を撮り、ソレを載せた記事をロックスメイアにばら撒くことで収入を得ているのである。


 本日、彼らはついに件のマイネフランへと足を運んでいた。

 魔物王国として名を上げ始めた王国であり、魔物との融和を謳った世界初の国である。

 昨日は王都を回り、様々な情報を手に入れた。


 アルセ教本教会では純金のアルセ像を見て感嘆し、幼き教皇の教えに思わず涙を流したものである。

 観光名所と化したヘンリーを背景に写真を一枚。

 黒死のネズミンランド跡地も観光地の一つとなっており、有名な各所を回った後は、酒場で聞いたこの近くに存在するという復活した古代国家の噂を知り、セルヴァティア王国へと足を伸ばしたのである。

 この際、新米パーティーを護衛に選んだのだが、オオカミモドキの猛攻が想像を越える怒涛であり、あわや壊滅。といったところでバイクという武器に股がるツッパリ軍団に救われたのは当然ながら見開きを使った記事になる予定だ。


 全滅の危機に颯爽と現れた暴走軍団。その指揮官魔王辰真の晴れ姿は、思わず絵になる一枚として写真に収めてしまった。

 ロックスメイアでは危険生物と言われているツッパリだが、どうやらマイネフラン近郊のツッパリは人と意思疎通が行えており、魔王辰真という存在の元、一つに纏まっているのだと言う。

 彼らは定期的にこの高原をバイクで走り、オオカミモドキを狩っているそうだ。


 なんとかセルヴァティア王国に辿りついた記者団は、国王アルベルトとの謁見に成功。

 記者の女性陣がアルベルトの正妻にならないかと誘われたりもしたが、宰相が話の分かる人であったため、無理矢理手籠にされるということもなく、無事に謁見が終わった。

 後から聞いた話だが、あの好色王は水晶勇者本人であるそうだ。

 数千年前のおとぎ話の人物と出会えたことには驚きだったが、多少現実と空想の違いに気付かされてショックを受けた記者団であった。


 また、宰相クーフから国家再建と昔話を聞き、次の記事の構想も纏まった。

 題名は新国家セルヴァティア王国滅亡と再興の実録。だそうだ。

 マイネフランの話を今回の号で載せるつもりなので、次号以降となるが、ここまで詳細に聞いた伝承の真実は、きっと世の人々に想像以上の衝撃を与えるだろう。


 一般的な古代人にも聞き取り調査を行い、さまざまな逸話や、小話も交えるため、久々に分厚い記事となるだろう。

 今から楽しみで記者団のにやにやが止まらなかった。

 欲を出した記者団は、セルヴァティア王国とマイネフランで噂になっていたオークキングの噂の真相を確かめておくことにした。


 どうやらセルヴァティア王国を囲む森の中に、オークキングが生息しているそうなのである。

 それだけなら、まだ討伐隊を向かわせて討伐すればいい話なのだが、問題はそのオークキングの妻なのだそうだ。

 オークマザーが強過ぎてセルヴァティア王国もマイネフラン王国も全く手を出せないという噂である。


 放置すれば二国が滅びかねないのではないか、ロックスメイアでこれを記事にしてぜひとも全世界から連合軍を派遣して国家安寧を目指すべきではないだろうか?

 微力ながら、マイネフランやセルヴァティア王国の役に立ってやろう。そんな思いで記者団は森の探索を始めた。


 しばらく迷っていると、泉を発見。ツッパリとレディースの憩いの場である事を知った記者団は、これも記事になると様々な情報を収集する。

 おかげでツッパリとレディースの生態がある程度解明されたと思われる。

 ツッパリたちに別れを告げ、森の深部へと踏み入る記者団は、きゅーきゅーと可愛らしい鳴き声を耳にする。


 なんとこの森にはツッパリとレディースの他に、スマッシュクラッシャーまでが生息していたのである。

 本来縄張り意識の強いスマッシュクラッシャーがツッパリと共生していることに驚くが、どうやらリーダー格同士がそれなりに交流があるらしく、よく模擬戦を行っているようだ。


 彼らの縄張りをも越えると、ついにオークが姿を露わした。

 あまりに突然の遭遇で、暴走した護衛冒険者が斬りかかり、対話すらできずにオークとの戦闘に入ってしまう。

 幸い、オークが逃げ出したので助かったが、今度は仲間を連れて再び現れた。その数数千匹。

 当然逃げた。

 逃げた先にもオークが現れ、記者団は散り散りに逃げ伸びることになった。


 新人冒険者等に頼るのではなかった。

 記者団リーダーは思わずそう一人ゴチたが、彼はなんとかセルヴァティア王国に逃げ帰ることに成功する。

 しかし、一日経っても、他のメンバーが彼の元へ戻ってくる事は無かった。

 記者団リーダーはやきもきしながらメンバーの帰還を待つ。

 果たして彼らは無事にこの森を脱走出来るのか、それは……

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