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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その少女が神々の御許に旅立ったことを彼らは知りたくなかった
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エピローグ・その真実を彼女達は知りたくなかった

 その日、エルフの貸し部屋で、皆が沈痛な表情を浮かべていた。

 部屋の中心に佇むリエラは顔を伏せ、両手で隠している。

 もはや、やっちゃいました。といった姿が痛々しい。


 そんなリエラから真相を聞かされた皆もまた、やり場のない言葉を飲み込むしか出来てなかった。

 パルティ、実は死んでませんでした。

 リエラから齎されたこの情報は、皆にやっちまった感を植え付けただけでした。


 まぁ、パルティが戻って来た時に驚かれるよりはいいんだけど、エルフ集落にパルティの墓がちゃんと墓標に名前付きであるんだからなぁ。

 中に入ってるのはパルティの死体ではなくカレーライスだけど。


 きっと神々の御許でこの状況を見て例えようも無い感情に震えてるだろうパルティを思うとこう、ごめん。としか言えなくなってしまう。

 エルフたちも村全員で泣いていらっしゃったので今更勘違いでしたと告げる勇気もなく、パルティの墓はきっとこれから先もこの地に残るのだろう。


 そして、真相を知ってしまったアルセ姫護衛騎士団の面々は、エルフたちに声を掛けられる事が苦痛と感じたのだろう。

 夜半に村長に暇を告げ、逃げるように立ち去ることにしたのだった。

 この旅で、僕らはまた成長した。成長方向はいろいろずれた気もするけど、全体的にはまた底上げされた感じだ。


 一部、百合疑惑ができたり神々の御許に旅立ったりとあったけど、まぁ、なんだ……帰ろうか、僕らの家アメリス別邸に!

 月明かりの夜空をエアークラフトピーサンが風を切る。

 周囲を編隊組んだ空軍カモメが飛び交い、まさに軍隊飛行を行いながらコルッカの街へと向かうのだった。


 そうだなぁ。しばらくしたら今年の卒業生の卒業式があるらしいし、その後は数週間の休暇があるからこれを機に世界を旅してみるかねリエラさん。

 アルセに新しい世界を見せてあげよう。

 夢は広がりますな。


 深夜、アメリス邸に戻って来た僕らは各々部屋へと戻って行く。

 僕とアルセとリエラだけは中庭にやって来ていた。というのも……


「「「「「「「「「「にゃー」」」」」」」」」」


 にゃんだー探険隊、ルグスに付いて来ちゃって……

 仕方無いからアメリス別邸の庭に解き放つことにした。アルセによりアンブロシアを与えられたにゃんだー探険隊にリエラから人間に害を成さない、できるだけアメリス邸の敷地から出ないことを教えられる。にゃっとばかりに敬礼していたのはちゃんと理解できていたからだろうか?


 彼らの世話はアメリスがメイドたちに任せると言っていた。

 メイド長がまた仕事が増えたとブツクサ言っていたけれど、ルグスに纏わりつくにゃんだー探険隊を見て思わずキュンと来ていたのは気のせいじゃないと思う。


 しかし、こうして考えると、にっちゃうだろ、ワンバーだろ、カレーニャーだろ、ミーザルににゃんだー探険隊、エアークラフトピーサン率いる鳥軍団。ここ、いつの間に動物王国に成ったんだろう?

 しかも猫が多いな。犬系がワンバーちゃんだけか、もう少し犬系の魔物連れ帰るかいアルセ?


 けど、なんか最近本当に入れ替わりが激しいな。

 デヌたちもそうだけど、まさかパルティまで居なくなるとは思わなかった。

 まぁ、戻ってくるとは分かってるからいいんだけど、誰かを入れると別の誰かが去って行くというか、まるで誰かの呪いみたいな……呪い? そう言えばパーティークラッシャーなあの人入れてからだよなぁ、パーティーから脱退者出始めたの。

 アレが今も続いてるとか?

 ふむ……ちょっと神様に尋ねてみるか?


「ふぅ……なんだか、怒涛の冒険でしたね」


 にゃんだー探険隊が散って行くのを見届けて、リエラが呟く。

 にゃんだー探険隊は新しくやって来たアメリス別邸を探索するそうだ。新しいダンジョンだ! とか眼を輝かせていらっしゃった。


 にしても、確かに怒涛の冒険ラッシュだったな。

 ここまで闘いが続くとしばらくはいいかなって思うんだよね。ね、アルセ。しばらく町でゆっくりしちゃう? それともまた新しい冒険に向う?

 僕の視線に気付いたのか、アルセは僕を見上げてこてりと首を傾げる。


「ふふ。アルセどうしたの?」


 アルセの所作を見たリエラが苦笑して、夜空を見上げる。


「パルティは、神様のところで何をしてるのかな?」


 状況的にいうならば、多分リエラと対等になりたかったとかじゃないかな?

 次に会う時はリエラ並みのチート存在になってそうで怖いな。でも、パルティが無事だと分かってちょっと安心できた。

 また会う時を楽しみにしとこう。


「ところで、その、ルクルさん。そんなカレーライス手に持って私を威嚇するのはやめませんか?」


 前回デバガメ時にリエラにカレーをぶつけてからルクルさんがリエラを露骨に警戒し始めています。特に僕とリエラだけの時は滅茶苦茶間近にやってきてこんな感じにカレー構えていつでもお前の顔をカレー塗れにしてやるからな。と威嚇して来るのだ。

 あ、でもルクル、今日はアルセ居るよ?


「るーっ!」


「ええっ!? ちょ、私何もしてないですよね!? なんで怒り顔で迫って来るんですかっ」


 何かが癪に障ったようで近づいて来たルクルから逃げ出すリエラ。

 なんか、いつもの日常って感じだよね。

 僕はそんな光景を見ながら夜空へと視線を移す。


「待って待って待って、話し合いましょうルクル。言葉分からなくても話せば分かる、話せばっ」


「るーっ」


「ひゃあぁっ……? あっ」


 いつまでも、こんな日々が続いて行けばいいな。

 アルセが居て、リエラが居て、ルクルが居て、パルティも戻ってきて、ずっと、姦しいくらいの日々が……はぶっ!?


 突然僕の視界が、茶色い何かに阻まれるのだった……

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