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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その少女が神々の御許に旅立ったことを彼らは知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その少女が見たモノを僕らは知らない

 プリカの家に挨拶を終えたアルセ護衛騎士団一行は、村長から紹介された空き屋を宿として今日一日エルフ村で過ごす事にした。

 男女別、というか魔物と女性陣に分かれての部屋割りで、アニア、レーニャ、ワンバーカイザー、のじゃ姫、ミーザル、ルクル、アルセが一部屋。アメリス。プリカ、パイラ、パルティ、ミルクティ、リエラでもう一部屋という部屋割だ。


 魔物部屋についてはアニアとルクルに一任しているが、リエラは不安そうだった。

 パルティエディアも不安はあるが、向こうには透明人間もいるのだ、大丈夫だろう。という謎の安心感も同時にあった。おそらくリエラも同じ気持ちだろう。

 なんのかんのと言いつつも、二人は姿の見えないもう一人の仲間を信頼しているのだった。


「はぁ~、久々だなぁこの空気。エルフ村って感じがするよぉ~」


 少し間延びした声でプリカがベッドに倒れ込む。口調がエルフ村で出会った頃に戻ってる気がするのはリエラの気のせいではないだろう。少し食事量も減っていた気がする。


「ふむ。貴族邸以外で休むのはあまりないのだが、皆で眠るというのもまたいいモノでは……あるのだが」


 アメリスは不満そうだ。

 何しろベッド数が足りなかったが為に彼女のベッドは、共同なのだ。……ミルクティと。


「なによ。不満? いいじゃない、女同士なんだし」


 あの洞窟の一幕があったせいかアメリスはミルクティを警戒しており、ミルクティもまた、時折見せる動きがアメリスに恋慕しているように見えるのが周囲の危機感を煽っている。

 一応、自分に関わりがないのでリエラもパルティエディアも放置気味である。


「ええい、くっつくな」


「くっつかないとベッドからはみ出るのよ。ほら、もっとこっち寄って」


「あ、こらっ」


 ぎゅっと抱き寄せるミルクティの胸に後頭部が埋まるアメリス。なんかもう怪しい雰囲気が爆発だ。

 暴れるアメリスをしっかと抱きしめ、ミルクティが眠りに入る。

 今のところアメリスが襲われることはなく、ただただ純粋に仲の良い姉妹みたいな間柄に見えるのだが、今のミルクティだといつ壊してはいけない壁を叩き壊しても不思議はない。

 早急にイイ男を宛がわなければアメリスの純潔が散らされかねない。




 それは、深夜の事だった。

 不意に、何かしらの気配を感じたパルティエディアは目を覚ました。

 薄眼を開けて、周囲を窺う。別段危険が迫っている訳ではなさそうで、暗殺者が部屋に侵入しているとかではない。


 気を配りながら働かない頭のまま周囲を見回す。

 隣で眠っているはずのリエラが居ないことに気付くまで、少し時間がかかった。

 周囲を見回す。

 隣のベッドではうなされるミルクティをぎりぎりと抱きしめるアメリスがいた。

 攻守がいつの間にか逆転しているようだ。


 プリカとパイラの方は互いの腕を口に入れてあむあむとか言っている。寝ぼけて噛み千切らないか心配だ。

 ベッドが涎塗れになっているのは御愛嬌と言うべきなのだろうか。

 ちょっと不安だったので二人の口から腕を引き抜いて代わりにパイラが食べ残しているゴスを二人の口に突っ込んでおく。

 一瞬で噛み砕かれた。プリカまでゴス食べていたが、パルティエディアは見なかった事にした。


 どうやら部屋にリエラは居ないらしい。

 外かな? とベッドから抜け出し外へ出る。

 もしかして魔物部屋だろうか?


 魔物達の部屋をそっと覗いてみる。

 まずはレーニャ。彼専用の鍋を村長に貰っており、その中に丸まって眠っている。まさにカレー鍋である。

 ベッドに眠るのじゃ姫は小型化したワンバーカイザーを枕にして抱きつくように眠っている。

 最近はアルセを真似ているのかのじゃ姫まで眠りだしたせいだろう。可愛い寝顔だった。


 少し遠くでは未だにミーザルがアニアの周囲で自己主張をしまくっており、アニアはそれを見ないように眼を瞑って青筋浮かべながら必死に耐えていた。

 妖精郷から帰って来た矢先にこれなのだ、何故耐えているのか分からないけど遠慮なく攻撃していいと思う。

 そんな二人の近くのベッドでは、アルセが鼻提灯をぷぅぷぅ膨らませながら眠っている。

 

 ルクルを探してみたが、彼女は見当たらなかった。

 つまり、彼女が監視しているはずのあの人もまた、この部屋に居ないという事だ。

 なんとなく、嫌な予感がした。

 出し抜かれたという感情が生まれる。


 焦るようにエルフ村を探索する。

 奥まった一角で、ようやく目的の人物を発見した。

 悔しそうにぎりりと唇をかんでいるルクルが茂みに隠れているのを見付け、パルティエディアはその隣までゆっくりと近寄って行った。


 ルクルは彼女に気付いたが、興味無いように一点を見つめている。

 ルクルの隣で茂みから見つめた視線の先にあったのは、倒木に腰掛け、ぽつぽつと話をしているリエラだった。

 そこにはリエラしかいない。その筈だ。なのにリエラは誰かと話をしているかのように隣を見ながら笑ったり、話しかけたりと、見る人によっては不思議に思える行動を取っていた。

 なぜだろう? ソレを見たパルティエディアは、一瞬だけ確かにリエラを……憎らしく思った。

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