その復活方法を彼女しか知らない・ぜっとえむ
ぐるぐるぐるぐる
ネズミどもが回っています。
ドッペルゲンガーとして現れたネズミ共も回っています。
もはや勝敗が着くのかどうかすら不明。
おそらく着かないだろう。
ソレはいいけどワンバーちゃんが自分の番は? みたいに戸惑ってるよ?
室内では未だにアニアによるお説教がミルクティだけに展開されている。
ミルクティは一人正座させられてイラつきが増しているようだ。
可哀想に。誰のせいだろうね?
というか、グレイが戻って来ないんだけど。コレ大丈夫? 青い泡口から噴き出したんだけど。
気持ち悪いので皆彼を見ないようにして連結鼠どもの意味不明な闘いを見つめている。
うん、気のせいかな、回転速度は増した気がするな。
お? なんか満足したのか連結鼠どもがこっちに戻って来るぞ。
どうでしたか姫様。みたいな感じてアルセの前にやってくるとくるくると回りだす。
ほんと、こいつらって何なの?
連結鼠が戻って来たのでワンバーちゃんが試練の間へと突撃。
ワンバーカイザーVSワンバーカイザードッペルの闘い開始です。
まずは互いに威嚇から。
咆え猛る二匹のワンバー犬は、タイミング一緒にハモるように咆え始め、終わる時も同時だった。
まさしく同じ生物と言えるだろう。
次に唸りを上げ、強い口調の吠え声を一つ。
そして体当たり。
寸分違わぬ攻撃で、互いの頭が陥没する。
痛かったのかそのまま地面を転がりまわって悶絶。
体勢を整えると同時に口内の油を相手に飛ばした。
凄いな。実力が拮抗するとワンバーカイザーの強さが理解出来る。
今までが被食者側だったからなぁ。
彼も随分と強くなったものである。
いや、むしろ実は強かったのか。一応ボスの一体だし、魔王だっけ?
今更過ぎる気はするけど。
ワンバーカイザー同士の闘いは殆どが突撃だった。
互いに遠くに離れて勢いを付けての頭突き。
牙も爪も一切使わない。
一度相手とぶつかれば、互いに被りを振って体勢が整うのを待ち、再び距離を取っての助走。
そして全力の体当たり。
パン同士が無様に潰れ、内部のミンチ肉が千切れ飛ぶ。
ピクルスがすぽんと飛びだし肉汁が飛び散った。
それでもワンバーカイザーたちは一撃一撃、相手が体勢を整えるのを待ってから体当たりを行い続ける。
なんか、地球の動物番組でこんな生物見たな。
確か決着が着くのはどっちかが諦めた時だったっけ? 最長三日ぐらい体当たりし続けたとかテレビで見たことあるぞ。
永遠に続くかと思われた頭突き合戦は、唐突に終わりを告げた。
一際巨大な音が響く。
互いの頭が激突し、そのまま動かなくなった。
最初に気付いたのはのじゃ姫。
マジックミラーの窓に張りつき、のじゃ? と不安げに声を出す。
次第、皆も気付きだし、ようやく起き上がったグレイが口元拭いながらワンバー達を見て一言。
「あれ、死んでないか?」
「のじゃぁっ!?」
慌ててのじゃ姫がワンバーカイザー回収に向う。
おお、ドア開いた。入っちゃっていいの?
召喚された殿中でござるの群れがワンバーカイザーを抱えてこちらに戻ってくる。
うーん。ワンバー死んじゃったのか?
というか、普通復活するはずだけど、その気配が無いぞ?
ワンバーカイザーに縋りつき泣きだすのじゃ姫。
「あー、ダメだよのじゃ姫ちゃん。ワンバーちゃんの復活にはコツがあるんだよ。ちょっと待ってね」
と、のじゃ姫を押しのけたのはプリカ。
ワンバーちゃんとずっと一緒だった時期があるからこそ、彼女だけは知っていた。
あらゆる方法でワンバーカイザーを喰らい、復活させてきた彼女だからこそ、ワンバーカイザーを誰よりも知っているのである。
そんなプリカは迷うことなく……ワンバーカイザーに齧り付いた。
「って!? 何してんですかプリカさぁぁぁぁん!?」
「参戦っ」
驚き止めようとするリエラと迷うことなくワンバーカイザーに齧り付くパイラ。
ちょっとお二人、何してんの?
少し胸焼けする状況がございました。手足と尻尾だけになったワンバーカイザーに僕は静かに黙祷を捧げる。
さようならワンバーカイザー。結局捕食されるのは確定してたんだね。可哀想に。
だけど、さすがプリカと言うべきか、ムクムクと復活を始めたワンバーカイザー。
先程までの死に体から一転。復活したワンバーカイザーがのじゃ姫に飛び付いた。
「ええっ!? 食べられて復活した!?」
「ふふん。ワンバーちゃんのことは私が一番わかってるんだから」
「のじゃっ!」
得意げに胸を張るプリカにのじゃ姫がワンバーカイザーを庇いながら叫ぶ。
対立姿勢の二人は、しかしプリカが全く相手していない不敵な顔で微笑むだけで終わった。
頑張れのじゃ姫。ワンバーカイザーをまっとうな道に戻すのは君しかいない。




