なぜ理解できるのか、彼らは知らない
予想以上に蔦が伸びた。
絡め取られたバルスくんは姿が見えません。
蔦に絡め取られたのは見えたんだけど蔦が大量に出現していて全く見えません。
「ば、バルス生きてる?」
「バルスさーん?」
「な、なんとか無事だけど……俺どうなってる!? 全然身体が動かないんだけど」
焦った声が蔦の中心部分から聞こえてきた。
身体に問題はなかったみたいだけど見動きは完全に封じられたみたいだ。
さすがマーブル・アイヴィ。
「でも、これ、どうしたらいいんですかユイアさん」
「さぁ。アルセイデスの蔦に絡まれたら死ぬまで解けないというし……」
「う、嘘だろ!?」
僕はアルセの頭にぽんと手を置く。
アルセが僕を見上げてくるけど、笑顔を見せるだけだ。
もう、アルセ、あの子許してあげなよ。さすがにこのまま森に放置は可哀想だよ。
「ブヒぶひ」
バズ・オークが臣下の礼を取りながらアルセに何かを告げる。
首をこてんと傾げるアルセ。
ちょっと不満そうな顔になった。
むぅーっと唸ったかと思えば、手で蔦に触れる。
そして頭上の葉っぱたちが眩い光を放ち始めた。
おお、また光った!
すると、地面を割り砕き成長したマーブル・アイヴィが急速に枯れ始める。
何この能力!? 初めて見るんですけど!
新能力なのか、元からある自分が生やした蔦を打ち消す能力なのかは謎だけど。
「す、凄い。こんな能力初めて見たかも」
「アルセイデス自体希少種だしね。いいなぁ。私もアルセイデス見付けたらテイムしてみようかな。可愛いし」
「あ、いいですね。私もアルセイデスいいなって思ってたんですよね。なんか妹みたいに可愛がれそうで」
ユイアとエンリカは楽しそうに笑い合う。
マイペースと言うか、完全にアルセ達に気を許してるな。
それでいいのか冒険者。相手は確かに安全な魔物ではあるけどオークとアルセイデスですよ?
「ふはぁっ。ああ、驚いた。どうなってんだよ一体……」
「バルスさんの早とちりです」
「どうもこの二体の魔物は王国御用達の従魔みたいよ。ようするに冒険者仲間同士で戦ってたの」
「冒険者仲間……ああ、仲間ってそういう意味。なんだ。そうかよ」
ようやく理解できたらしいバルスはそのまま地面に座り込む。
緊張が解けてしまったらしい。
大きく息を吐き出し安堵する。
「なんだよ。ただの魔物じゃないとは思ってたけど、王国御用達とか、切らなくてよかった。いや、俺の腕じゃ討伐されかかってたけどさ」
「本当。このオークさん強いですよね」
「ぶひ」
「え? 自分なんてまだまだ? そんな謙遜しなくても。本当にパーティー内にもっと強い人いるんですか?」
「つかエンリカは普通に会話してるように見えるんだけど?」
「さっきからあの子察しがいいのよね。結構相性いいのかもしれないわよ」
マジで!?
いや、確かにエンリカさんバズ・オークと会話が成り立ちだしてるけど。
ていうか豚人族の鼻息が何で理解できてるの?
「そうなんですか。依頼者の人が暴走してパーティーが離れ離れに。今捜索中なんですか」
だから、なんで鼻息一つでそこまで理解できてるの!? エルフ恐い。
「なぁ、エンリカってオークとかゴブリン物凄く毛嫌いしてなかったっけ?」
「幼い頃からオークやゴブリンは害悪だって教わってたらしいからね。魔物として本能で生きてると聞かされてたし女性のエルフは特に綺麗だって拉致されたり襲われたりするから。見つけ次第殺せみたいには言われてて恐がっていたわね。ただ、話の通じる相手だと知ったせいで恐怖のドキドキが他の物に変わったとか?」
「マジかよ……狙ってたのに……」
本音出ました。
料理長、本音一丁入りましたーっ!
「あんた……やっぱ新人のエンリカ迎え入れたのはそういう魂胆か」
「い、いや、つか幼馴染なだけのお前には関係ないだろ。俺が誰を好きになろうが」
「……そうね」
ああ、幼馴染の恋心に気付かない鈍感主人公発見だ。
テンプレ入りましたー。
料理長、甘く切ない青春ラブコメ三角関係風味一丁!
若干周囲の気温を下げたユイアが冷めた視線をバルスに向けていると、とことこと歩いてきたアルセ。
バルスの背中に向け、一蹴り。
ええ!? ちょ、アルセ何してんの!?
「痛っ。ちょ、なんだこのアルセイデス!?」
「あらら?」
さらにもう一蹴り、げしげしと蹴りつけられたバルスがその場を退けると、アルセはバルスが座っていた場所にしゃがみ込み地面をぺしぺしと叩き始めた。
「なんだ?」
「さぁ? アルセイデスなんて見たのも二度目だし。一度目は見敵必殺で倒したでしょ」
「だな。森の中で何してるとか全く知らないかも」
しばらくぽんぽんと地面を叩いていたアルセは、何かを成し遂げた顔で立ち上がると、僕のもとへと歩いてきた。
目算あやまりぽふんと足に体当たりして来たので、頭を撫でてやんわりと引き離す。
両肩掴んで向きを変えてやり、バルスたちが見える状態で手を繋いでやることにした。
「ぶひ」
「そうですね。パーティーの皆さん心配ですしそろそろ探しに行きましょうか」
だからエンリカさん、なんでバズ・オークの言葉が分かるんだ?




