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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その洞窟が取り持った仲を彼らは知りたくなかった
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そのランドリックの悲劇を僕らは知りたくない

「ひょんひょんひょんひょん」


 謎の声とともにババァが駆ける。

 Tババァことターボババァがひょんひょんと鳴きながら物凄い速度で近づいて来る。

 発光しているせいか恐怖感はハンパない。


―― おじぃがおこらせたまごのため、ばばぁがひとはだぬいだとさ ――


「双牙斬!」


 迫るTババァに一撃必殺。リエラの攻撃が直撃する。

 迷いなく駆け抜けていたTババァは攻撃すら出来ずに倒れ込んだ。

 光が消えたのを確認して僕たちは移動を再開する。


「なんていうか、心臓に悪いところよね」


「徐々に迫るお婆さんとか、こんなに恐怖だっけ?」


―― いとしきわがこのよろこぶかおをみーたいとばばあはうごきだす ――


 広めの部屋に辿りつく。

 光るアルセの周囲に集まり、僕らは部屋を見回した。すると……

 光るババァが一、二、三……なんか凄い数来たァ――――ッ!?


―― ばーばぁがはしるよ、ばばぁがはーしーる ――


 無数のババァが高速で迫り寄る。

 その中で一際動きの機敏なババァ。

 まさに光の速さでカクカクと稲妻のように走る笑顔のババァ。

 Fババァの出現だ。フラッシングババァが彗星の如くババァの群れを掻きわけデヌへと突進して来た。


―― かーぜをおいぬきひかりをこえて、うーちゅうのはてまでひとぉっとび ――


「チィッ!」


「群れの中にさらに速いのが数体居るぞ!」


「ランドリック、気を付けろ!」


「何で俺だよ!? でも細心の注意を払うっ。なんか嫌な予感するんだ」


 ソレは僕も思います。嫌な予感というか、お約束の予感が。

 というか、ババァソング、なんだよその宇宙越えるババァって。

 ババァ最強過ぎだろ。


―― ばーばばばばーばばばばばぁ、ばばあがやってくるー。まーごのうーいかおみるためにー ――


 ……この曲、ちょっと耳に残るのがまた嫌だな。

 もうちょっとイタイ系の歌ならいいのに、なんか孫のために走るお婆さんが脳裏に浮かんでしまう。

 クソ、闘い辛……くは全然ないな。


―― あーああああーあああああぁ、ばばあがもってくるー。ぴーよのくーつでまーごのえみー ――


 Fババァの速度が速過ぎる。

 目視でかなり遠くに見つけた次の瞬間にはほぼ目の前に来てる速度だ。目算を誤れば一気に攻撃を喰らうだろう。

 あ、ランドリックが捕まった。


「な、何だ!? ちょ、離せっ! 離せよっ!?」


「このっ、ランドリックに何をする気だ! 離せこ……ランドリ――――ック!?」


 その瞬間を、僕らは見たくなかった。

 ランドリックの両腕を掴んで拘束したFババァは、何を血迷ったのか暴れるランドリックの口に、熱いヴェーゼを交わしたのである。


 びくんっとランドリックの身体が跳ね、痙攣を始める。

 目がぐるんと上を向き白目に……ああ、なんという悲劇……

 ちゅぽんっと音を鳴らしてババァの口から解放されたランドリックはそのまま地面に倒れ込み、泡を吹いてびくんびくんと悶絶している。


 代わりに恍惚の笑みを浮かべるFババァ。

 「せいやっ!」と気合いの入ったパルティの一撃で撃破されたモノの、犠牲者は既に出た後だった。

 敵を倒し終え、僕らは唯一の被害者の元へと駆け寄る。


「ランドリックっ、すまない。俺が、俺がこんな所に来ようって言ったから……」


「フィック……シタがね、シタが、うねるんだ……」


 ガクリ。ランドリックは謎の言葉を残して真っ白に燃え尽きた。


「ラ、ランドリ―――――――ック!!?」


 享年16歳くらい? ランドリック、ここに眠る。南無ー。




 洞窟内に潜むババァは殆どが走ってくる近接系ババァで、時々BBAバットが襲撃して来る可能性があるくらいだ。

 といっても、走ってくる速度が違うだけでこうも苦戦するとは思わなかった。

 Fババァは脅威だ。しかもおそらくまだ中盤。

 これ以上素早いババァが来れば、おそらくランドリック君の身が持たない。


「どうする? ここで戻る? これ以上進むと結構きついかもしれないわよ?」


 パルティの言葉に、反応したのはランドリック。

 口元を拭い、よろめきながら立ち上がる。


「ライカと仲直りするんだ。だから……行かせてくれ。皆の力を貸してほしい」


 くっ、心に傷を負いながらも進むと言うのかいランドリック。

 チクショウ、涙で前が見えないぜ。


「分かった。俺も協力してやるさ。ここの敵の速度は馬鹿に出来ない。久々に全力で戦える敵に出会えそうだ」


 デヌも腕をコキリと鳴らして同意する。

 皆、引き返すことなくさらに奥に向かう事にするらしい。

 僕とアルセは襲われないから物見遊山気分なんだけどね。さ、行こうかアルセ。


「おっおお、おっおお」


「あはは。アルセこの曲気に入ったの?」


「こんな曲口ずさむなよ」


 呆れた声のフィックサスだが、アルセを止めることはできそうになかった。

 Kババァ

  種族:偽人 クラス:高速ババァ

 ・どこからともなく走ってくる老婆。

  えぇえぇえぇえぇと鳴きながら走る様は脅威。

 ドロップアイテム・ランニングシューズ・タスキ・ババァ汁・使用済みブルマ


 Tババァ

  種族:偽人 クラス:ターボババァ

 ・どこからともなく走ってくる老婆。

  ひょんひょんと鳴きながら走る様は悪夢。

 ドロップアイテム・雲羽の靴・タスキ・ババァチーズ・使用済み体操服


 Fババァ

  種族:偽人 クラス:フラッシングババァ

 ・どこからともなく走ってくる老婆。

  笑顔で光の速さで迫ってくる様は絶望。

 ドロップアイテム・加速装置・タスキ・ババァヨーグルト・新品ブルマ

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