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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第ニ話 じゃじゃ馬嬢を止める術を彼らは知らない
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その豚がモテる理由を僕は知らない

「凄い、凄いですよオークさん。私魔物と意志疎通出来たの初めてです!」


 アルセの登場でバズ・オークが冒険者側と知れた二人は、恐る恐るバズ・オークに幾つか質問をしていた。

 それに真摯に応えるバズ・オークに、次第彼女らはバズ・オークへの危機感を消して行った。

 最後には握手まで交わしてなんか女子同士の会話をバズ・オークを挟んで話し始めた。

 バズ・オークさん両手に花状態です。


 凄く困ってるのが見ていてわかる。

 彼女いるんですか? の問いに戸惑いながらもコクリと頷くバズ・オーク。

 アルセかと問われると物凄い速度で首を横に振っていた。


 いうなれば。姫に懸想など恐れ多いとかだろうか?

 左右からのユイアとエンリカはさらに掘り下げるように聞いて行く。

 やっぱり女の子って他人の恋愛話が好きって本当なんだなぁ。

 聞いてどうするんだろう?


 僕としては意中の相手に好きな男がいるとか許せないんだけど。

 なので聞きたいとは思わない。

 まぁ知りたいとは思うけど、どんな彼氏でどれ程ラブラブ生活送ってるとか言われても全然嬉しくもなんともない。


「へぇ。ということは自分の村に残ってるんですかその幼馴染さん」


「ぶひ」


「一途ねぇ。あんたくらいの容姿ならモテるでしょうに、正直その幼馴染さんより可愛い子、いなかった?」


「ぶ、ぶひっ!?」


「じゃあ、私は? その幼馴染さんと比べてどっちが可愛いですか~?」


 ちょ、エンリカさん、豚人間とエルフを比べるのは酷すぎます!

 そんなの確実に、いや、バズ・オークからすればエルフより同じ豚人間か?


「ぶー」


「え? わ、私の方が可愛いですか!? ど、どうしよう、ユイアさん、私の方が可愛いって!」


「いや、まぁ一般常識でそうでしょう。オークでもその認識でいいみたいね。……ふふ。じゃぁあぁ、私とエンリカなら、どっちが可愛い?」


「ぶひっ!?」


 おお、バズ・オークが物凄くたじろいでいる。

 これはまさに茨の選択。

 どちらを摘み取っても手に怪我をする事請け合い。

 さぁ、どうするバズ・オーク!


「くそっ。オーク強過ぎ。二人とも無事かっ!!」


 そこへ登場バルスくん。

 ちょっと、もう少し邪魔だよバルス。

 もう少しで珍しいバズ・オークの戸惑い顔が見られるのに。

 あの幼馴染のオークに怒られた時くらいしか見てないんだからな!


「あ、バルス、無事だったのね」


「まぁ、オークさんは冒険者を殺さないよう手加減してくれてたみたいだし、当然ですよね」


「え? 何? 何この状況?」


 説明しよう。

 バズ・オークにより吹っ飛ばされたバルスくん。戻ってみるとそのバズ・オークの両隣でバズ・オークに詰め寄る仲間の少女たちの光景。

 これ、すなわちTHE・ネ・ト・ラ・レ。ですよね!

 もはや何が起こったのか理解できずにただただ呆然とその光景を見つめるバルス。

 ふふ、イケメンの間抜け面。この面は……イイ面だ。


「えーっと、ユイア、その、オークは敵、だよね?」


「違うわバルス。彼は私達の(冒険者)仲間よ」


 おや、バルスの頬がひくついたぞ?


「エンリカ……何でそんな豚の魔物に、近寄ってるんだ?」


「え? ああ、ついさっきまで彼女がいないか聞いてました。今はユイアさんとどっちの方が可愛いか質問してるところですよ?」


 その答え、聞きようによっては彼女になりたいからどっちの方が正妻候補かと聞いています。みたいに聞こえるんですけど。


 唇をギリリと噛むバルス。

 手にしていた剣をぎゅっと握りしめる。


「おのれこのクソ豚がァ!! チャーム使うとかふざけんじゃねぇ!! その二人は俺の(仲間)だァッ!!」


 漢の魂の叫びを聞かされた気がする。

 余りの殺意にびくりとしたアルセが僕の手をぎゅっと握ってきた。

 だ、大丈夫だよ。バズ・オークならなんとかしてくれる……はず。


「チャームって、バルス!?」


「バルスさん、俺のだってどういう意味ですか!? 私達をそんな目で見てたんです……ってきゃあぁ!?」


 一直線に踏み込んだバルスの渾身の一撃。

 危険を感じたユイアとエンリカが慌てて逃げると同時に、屠殺用ナイフを咄嗟に引き抜いたバズ・オークはギリギリで攻撃を受け止める。


「殺してやる! 俺が二人を守るんだ! 豚の苗床になんてさせるものかッ!! くぅたぁばぁれぇぇぇッ!!」


 す、凄い連撃だ。がむしゃらだけどあのバズ・オークが押されてる。

 防戦一方とか、これはヤバいのでは?

 くんっ。と僕の手が引かれた。

 見るとアルセがバルスを指差す。


 バルスのもとへ連れて行けってこと?

 よし、僕に任せろアルセ。

 君の行きたい場所は、僕が全部連れて行ってあげるからな!


 アルセと共にバルスの背後に歩み寄る。その瞬間。

 アルセが地面に掌を向け、頭上に向けて手を上げた。

 呼応するように地面が裂ける。割り砕かれた大地から、無数の蔦が爆発的に伸びあがった。


「なん!?」


 そう、アルセは自分の危機でもないのにアルセイデス特有の能力、マーブル・アイヴィを使ったのだった。まさか、バズ・オークを守るために!?

 凄い、凄いよアルセ。ついに仲間と敵の区別が付きだしたんだね!!

 思わず頭を撫でてしまう僕だった。

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