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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
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その宿敵(とも)の死を彼は知りたくなかった

「うきぃっ!?」


「い、イェイ……」


 床に倒れたイエイエ康に駆け寄ったミーザルは彼の頭を抱き起こす。

 何がどうなってるのか目が見えないミーザルには分からないようだが、共に自己主張を認めあったばかりの宿敵ともが倒れた事だけは理解したようだ。

 あー、その、何かごめん。


 死ぬなッ、俺はまだお前に俺を認めさせてないッ!

 うきぃうきぃと叫ぶミーザルに、イエイエ康はイエイと力無く応える。

 儂の自己主張力に付いて来られたのはお前が初めてだ。胸を張るがよい。


 ふざけんなっ、折角、折角俺が一番だと認めさせたい奴が現れたんだぞ! こんな結末ってあるかよ? 俺を、俺を見ろっ、俺に注目してくれ、俺が一番だとお前に認めさせたいんだっ。

 ふっ。それは叶わん願いというモノだ。だが、儂はこのまま一番で勝ち抜けさせてもらうが、お前もまた自己主張強き者。ならばこそ、儂以上の主張強きモノと成れ。


 俺は世界一になりたいわけじゃないっ、今はお前に俺を認めさせたいんだっ。

 今は、それでいい。だが胸を張れ、そして行け、お前の自己主張力をこの世界に見せつけてやるがいい。儂の、儂の屍を越えて往けぇぇぇッ――――カクリ。

 イエイエ康ぅ――――――――――――――――ッ!!!


 宿敵ともの腕の中。最後にミーザルの姿を焼きつけながら、イエイエ康が消えて行く。

 涙を流し友の死をむせび泣くミーザルに、掛ける言葉は見つからなかった。

 いや、もう、何してんのお前?


 俺は、俺はあんたを越えると約束するよイエイエ康。

 自己主張の頂きに向って見せる。

 世界中の全てが俺を見つめた時、改めてお前を振り向かせて見せよう。遥か高みから見ていろイエイエ康。俺を、そう、俺様だけを!


 すぅっとミーザルは腕を天に突きつける。そして、親指を自分に向けた。

 見ているがいいイエイエ康! 俺は、ここにいるぜッ! 俺がお前の分まで目立ちまくってやるぜ! 俺を、見続けろッ!!


 なんて感じで自分にひたるミーザルから視線を逸らす。

 あいつはもう、どうでもいいや。

 イエイエ康が消えた御蔭で室内に存在していた敵兵も順次消えて行く。


 人が多過ぎたから分からなかったけど、アルセ姫護衛騎士団が全員ここに揃ってる。

 ここから少し過ぎたところにあるポータル使ってさっさと外出れるな。

 皆の話聞いた限りじゃハッスル・ダンディの人たちは適当に切り上げて戻るらしいので地上で合流するんだとか。


 影兵さんがさっきまで居たけど、敵がいなくなったと知るや影から護衛を再開したようだ。

 アルセには居場所がばれていたようで手を振られていた。

 ありがとーっと手を振るアルセに女の子の方が手を振り返して影兵さんにげんこつ落とされていた。


 皆、ボスを倒せたとようやく安堵の息を吐き出していた。

 今回はホント皆に負担掛けちゃったからなぁ。ありがとうといいたいけど、何か贈り物した方がいいのかな?

 えーっと、何かないかな? ブロック・オリーの死骸じゃだめかな? あ、アレは熊たちの居た山で全部出しちゃったな。えーっと……


 不意に、扉が開かれた。

 僕たちが来た方角の扉だ。

 そちらに僕らの仲間は一人も存在しない、はずだった。


「なべっ!」


 見つけたぞ! とばかりに声を発したのは、全身黒甲冑の男。脊中には旗を一つ脊負っており、我生涯鍋一筋という昇り旗が揺らめいている。

 なぜこんな場所に闇鍋奉行? と、思ったのだが、違う。こいつ、闇鍋奉行じゃない。甲冑がちょっと豪華になっていて、顔に凄味がある。


 図鑑を手にして相手の情報を見るのと、闇鍋の乱が展開されるのは同時だった。

 暗くなった手元から図鑑をポシェットに入れる。

 この暗さじゃ見れないから落とす前に図鑑はしまう事にした。でも、名前だけは確認したぞ。

 闇鍋将軍。おそらく闇鍋奉行の上位存在だろう。ボス部屋にまで入って来たことを見るに、あの野郎、多分神様の差し金だと思う。


「なべへへへっ」


 多分だけど笑い声。闇鍋将軍は軍配を振るって自らを淡い緑の光に包みこむ。

 彼の前には鍋が設置され、そこに無数の具材を放り込んでいく。

 そして、軍配を振るい、アルセにスポットライトを当てた。


「具材を鍋へ!」


 フェアに行こう。お前達も最初に具材を入れろ。そう告げる闇鍋将軍に、アルセが困った顔をしながら僕を見る。

 うーん、流石に皆が鍋をつつく場所に種やら鉄人参を入れるのは……って、ちょっとそこのアホっ、何入れてんの!?


 パイラさんが迷うことなくゴスをざらざらと投入。闇鍋将軍の頬がひくっと引く付いた。

 確かに彼女は食べれるからいいけど、普通ゴスは食べれないよ?

 って、プリカさん、ソレ何っ!? 今なんかデカイの鍋に入ったよね?


「プリカさん、それ何入れたの!?」


 慌てた声を出したのはおそらくパルティ。


「20階層のボス。美味しかったから数体非常食として持って来たんだけど?」


 具材としてでか過ぎるよ!? ほら、闇鍋将軍の頬が完全に引き攣ってる。

  闇鍋将軍

 ・一目で将軍と分かる出で立ちの偽人。闇鍋奉行と比べるとかなり立派な武装。

  十手を持っており、敵を見付けると「なべ!」 と叫びながら襲いかかって行く。

  目の前で鍋を作ると割り入って来て指示を飛ばしてくる。

 種族:偽人 クラス:丁髷族

 装備:十手、和服

 種族スキル:

  威嚇・極

  ひっとらえよ!:うっかり御用だを多数生成する。

  真空波斬:横一線に走る剣閃にさらに衝撃波が加わる。

  武器破壊:十手で受け止めた刀などを破壊します。

  待たれよ!:相手が鍋を始めていると突然現れ待ったをかける。鍋に関して事細かく指示を出す。

  まだ煮えておらぬわ!:相手の攻撃を確実に受け止めるスキル。30%の確率で発動。

  鍋こそ我が人生:鍋物を食べることでHP・MP・TPが全回復。稀に瀕死または状態異常。

  逆鱗:鍋物を粗末にした者に対し全能力超強化。

  貴様が、鍋に、何をした!!:鍋物を粗末にした者に対し死ぬまで怒涛の連続攻撃を行う。

  闇鍋の乱・EX:暗闇のフィールドを生成し、相手に強制的に闇鍋参加を促してくる。このフィールドを解除するには箸で必ず何かを掴まなければならず、掴んだ物は絶対に食べなければならない。食べる順番を選択できる。

  確率操作:安全な鍋の具を選ぶ確率を高める。対象1体ごとに一回。

 ドロップアイテム・十手・和服・鍋・闇鍋の具・鍋の旗

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