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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その仲間たちの到着を彼らは知りたくなかった

 軍勢が迫る。

 悪夢のような波が迫り寄り、レックスとチグサを呑みこんでいく。

 今までの比ではない。もはや何処に仲間がいるかすらわからない状態だ。


 必死に腕を動かすしか出来ない。

 考えなど自分に迫る武具を避けることにしか使えない。

 もはや目に見える場所にいるのは血走った目をした敵の軍勢しかなかった。


 時折ガトリングランチャーから発射されたソードの群れが敵軍を薙ぎ散らしてくれるのだが、数が多過ぎて直ぐに道を塞がれる。

 もはや風前の灯だった。


 必死にロリコーン侯爵とケトルが守ってくれているからアニアとヲルディーナが怪我をすることなく済んでいるが、これを突破されればまず二人に被害が出てしまう。

 なんとしても、それだけは回避しなければならない。

 ヲルディーナをここに連れて来たのは自分なのだから。


「俺は負けない。負けられないッ!」


 気合いを入れ直しレックスは剣を振る。

 既に闘いを始めてどれ程経った事か? 一番最初から戦闘をしているレックスとヲルディーナは既に限界を迎えつつあった。

 だが、まだ倒れられない。ここで自分一人倒れるだけでパーティーは瓦解する。


 英雄として、仲間の前で無様など見せられなかった。

 だからこそ、彼は英雄としてあり続ける。

 それに応えるように、戦友ともはそこへ、現れる。


「待たせたわね皆ッ!」


 ばんっと扉が開かれ、無数の男女が入り込んで来た。

 勢力図が再び書き変わる。

 黄色い毛玉が閃光となり駆け抜けるのが見えた。

 無数の火炎弾が乱れ舞う。


「フハハハハっ、もう安心せよ我が姫の下僕どもよ。この不死王たるルグス・タバツキカが来たからには……」


「語ってる暇あったら牽制しろ牽制っ、ほら、デヌだって黙々闘ってるでしょうが!」


 ミルクティに怒鳴られ声を噤むルグス。

 アメリスが鞭をしならせ、のじゃ姫がワンバーカイザーに跨り迎撃、プリカとパイラが獅子奮迅の活躍を見せ、レーニャが駄眠を貪る。

 デヌが極大魔法を打ち込み、ランドリックが吹っ飛ばされ、ロリコーン侯爵の攻撃を掻い潜りヲルディーナへと斬りかかる偽人を割り入ったファラムが殴り飛ばす。


 ネフティアがチェーンソウを構えて走る。地面に付いた切っ先から火花が飛び散り、斜め右へと繰り出された一撃で無数の兵士が血華を咲かせた。

 ハロイアの元にはモスリーン、マクレイナ、エスティールが合流し、護衛対象を一纏めにして葛餅がフォローに入った。

 ローアやサリッサ、キキル、セキトリも護衛対象として合流し、防衛役にクァンティ、ラーダ、カルアが入る。このため自由になったロリコーン侯爵とケトルも戦場に参戦し始めた。


「凄い、一気に形勢逆転だわ。少数なのに」


「それはファラムさんたち魔王クラスが結構いますから。皆ここに来るまでレベルアップしてますし」


 ほぼ全員集合である。

 ハッスル・ダンディのメンバーは来ていないが、彼らはそもそもここまで上がってくるつもりすらないようだったのでギースも像のボス部屋前に置き去りにしたままである。


「ぐぬぬ、なぜだっ、この軍勢でなぜ勝てん!?」


「仕方無い、ひでぇ吉、イエイエ康に小倅どもの増援を」


「奴らをか?」


 オタ信さんとひでぇ吉の会話が聞こえた。

 未だに自己主張を続けるミーザルとイエイエ康に歩み寄るオタ信さん。小声で告げるとむっとしたイエイエ康がワープゲートを開く。


 これ以上まだ増援が?

 思わず顔を青くする面々に、再び地獄の軍勢が迫る。

 イエイエ康の歴代子孫の偽人たちが、軍勢を引き連れ現れた。

 その数、今居る敵の倍近い。


 既にかなりの仲間が限界を迎えようとしている中での敵の増援。

 増援に次ぐ増援でレックスの限界も近かった。

 それでも、回復魔弾で体力だけは回復させて戦場に望む。


 自分が倒れる訳にはいかない。

 パルティに、ここを任せろと告げたのだから。

 アルセとルクルを残すことなく、下層を任せると、残ったのだから。

 彼女たちが帰ってくるまで、自分たちが負けるわけにはいかないのだ。


 だから、必死に耐える。まだ、まだ負けない。負けてはならない。

 仲間たちが次々に戦線を離脱し、葛餅が守る場所で休息を行う中、レックスだけは必死に剣を振り続けた。

 皆を守るんだ。俺が守るんだ。だから、絶対に負けられない。


 手が痺れ、もはや感覚すらも消えていた。

 必死に剣を振り、何度も切り裂き、そして、限界を越えた手は剣という名の武器をとり落とす。

 あっと、呆然としたレックスに、迫る上段からの切っ先。


 英雄の絶体絶命。その状況に、彼らはやはり、やって来た。

 皆が現れた上層からの扉とは逆方向。下層への扉が向こう側から開かれる。

 雪崩れ込むのは二人の女性と二人の魔物。


 出現と同時に地面に何かが無数に蒔かれ、カレーを乗せた皿が乱れ舞う。

 赤紫の髪が舞う。無数の兵士を槍で刀で切り裂いて、一人の少女の血路を開く。

 開かれた道を飛翔するように走るのは、ここに来ることになった理由の少女。

 元気に走り、レックスを狙う兵士に詰め寄る。


「リエラさんッ!」


 リエラ・アルトバイエが仲間を救いに現れた。

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