表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
763/1818

AE(アナザー・エピソード)その増援部隊を彼らは知りたくなかった

脳内挿入歌、ディス○イア『戦○よ』

 ソードガトリングランチャーの掃射音が響き渡る。

 苦戦し始めていたレックスたちの周囲から偽人たちが一掃されて行く。

 助っ人に来たのはハロイアだった。


 彼女のすぐ後ろから、掃射終了と共にセキトリ、ロリコーン侯爵、チグサ、ケトルが現れる。

 全員即座に走りレックス達と合流すると、ロリコーン侯爵がヲルディーナとアニアの護衛に入る。

 御蔭でレックスが自由に動けるようになった。


「ちぃっ、おらクソ共、突撃だッ、全員ぶっ殺せ!」


 ひでぇ吉の怒号が飛び交う。

 オタ信さんの声をかき消すその言葉で、残っている兵士達がさらに苛烈に突撃して来る。

 しかし、残念ながらこちらの戦力が上回ったようだ。


 チグサが刀を煌めかす。

 無数の兵士が折り重なるように倒れ伏す。

 流石勇者と呼ばれるだけあるのか、彼女一人が居るだけで瞬く間に敵が消えていく。

 ケトルとレックスは完全にフォローに回ることになり、チグサの独戦場に早変わりだ。


 切っては捨て切っては捨て。迫る刃を巻き込み弾き、返す刀で喉を裂く。

 回転するような足捌きで周囲を巻き込むように切り刻み、上段から斬り伏せようとしたオタ信兵を袈裟掛けに切り裂く。

 止まらない。チグサの動きはまるで一つの動画のように、止まらず途切れず、ただ只管に敵を切り伏せる。


「ちぃ、オタ信、サナダを呼べ! 俺は十本槍を呼ぶ!」


「お、おぅぅっ」


 上から目線で命令するひでぇ吉に、怯えた様子のオタ信さん。

 二人の左右に再びゲートが開く。


「また増援!?」


 現れたのは双方10人の偽人たち。いや、サナダの方は指揮官が一人いるから11人か。合計21人の増援だ。


「「きもちわるっ!?」」


 思わずケトルとハロイアの声がハモる。

 それもそのはず。偽人と思われるサナダとその兵士は、どう見てもサナダムシと人を掛け合わせた姿だ。


「サナダムシ村、サナダ十勇虫推参!」


「ひでぇ吉十本槍、全員揃ってございます!」


 二軍は上司に報告すると、チグサ達へと走り出す。

 流石のチグサもサナダ軍には躊躇したらしく、思わず飛び退き距離を取る。

 割入るようにレックスが彼女の背後に回り込む。


「こっちは俺が受け持ちます!」


「レックス君? 助かるわ。寄生虫はあまり好きじゃないの」


「好きな人っているんですか?」


 軽口叩きながら背中合わせに武器を構える。

 21人の敵が二人を囲むように動きだす。


 レックスとチグサが抜けたせいでひでぇ吉とイエイエ康軍の兵士がヲルディーナ達に殺到する。

 怯えるアニアに飛んで来た矢をケトルが叩きと落とし、彼女がフォローしきれなかった敵をロリコーン侯爵が叩き潰す。


 ハロイアは彼らに守られる形でカートリッジを交換し、再びソードガトリングランチャーを掃射、一気に敵軍を蹂躙し始める。

 戦力はほぼ拮抗したといってもいい。

 否、レックスとチグサに対して過剰戦力を投入したからこその拮抗であり、彼ら二人が敗北すれば途端に戦況は傾いてしまう。


 その戦況の変化も、チグサとレックスが苦境に立たされることで直ぐに始まろうとしていた。

 背中に感じるチグサの熱が、レックスに英雄であれと語りかけて来る。

 不退転の決意で戦に臨む。


 何度か斬られた傷も、死にそうな傷も、回復魔弾を使えば即座に塞がる。

 致命傷さえ貰わなければ、二人が早々死ぬ事は無いのだが、それでも21人の連撃を二人で相手取るのはかなり不利と言わざるをえない。


「ったく、しゃぁねぇ。加勢すっぞシャロン」


「姿見せるでありますか?」


「影は全員始末した。後はもう、リエラちゃんたちにゃばれてるし今更だろ、行くぞ!」


 刹那、レックスに斬りかかって来たサナダ十勇虫の一人が上空から現れた男に切り裂かれる。

 同時に上空から降って来た女がクナイを飛ばし、十本槍の二体の額を突き刺し倒す。


「あ、貴方達は!?」


「話は後だ。殲滅するぞ」


「仲間ってことで、いいのかしら?」


「当然であります!」


 たった二人増援に現れた。それだけでサナダムシ村たちがどんどん倒されて行く。

 これを見たひでぇ吉がほぞを噛んで悔しそうに唸る。

 ワープゲートが開かれる。

 まだ増援が来るのか!? 驚くレックスは、そのゲートの数に思わず顔を青くした。


震玄しんげん拳信けんしん褌秀みつひで……」


 ひでぇ吉が名前を呼びあげていく。

 その数、果たしていくら居るのだろう? ネームドモンスターだけでも100は居るのではないだろうか?

 正直この軍勢に勝てる気がしない。


「お、おいおい、こんなに現れるとか聞いてねぇぞ? 誰か神の怒りでも買ったんじゃねぇか?」


 レックスの隣にいた男が思わずといった声をだす。

 レックスだって同じ気持ちだ。こんな大軍勢、どんなパーティーが挑んだって勝てるとは思えない。

 それも90層というかなり奥のボス戦だ。当然数の少ない少数精鋭パーティーが辿りつくだろう。そのパーティーがこの大軍と鉢合わせ。勝てる訳が無かった。

 絶対に過剰戦力だ。殺す気で来ていると言ってもいい。


「全軍、突撃ぃッ」


 ひでぇ吉の怒号が飛んだ。

 絶望的軍勢が……迫り来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ