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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その増え続ける敵を彼らは知りたくなかった

 レックスとヲルディーナは未だ苦戦を強いられていた。

 たった二人で50を超す軍勢を相手にしているのだ、未だに保っている方が凄いといえる程だった。

 オタ信さんとその軍勢は一気呵成に攻め寄せ、ヲルディーナを後衛にして前に出るレックスへと殺到している。


 ヲルディーナの魔法による援護と、英雄としてレベルアップしていたレックスだからこそ対軍戦闘をこなせているが、冒険者見習いである彼には少々荷が重い闘いであった。

 背中にヲルディーナがいる。英雄の背中というスキルが発動し、不退転の決意で獅子奮迅の活躍をするレックスだからこそ現状の戦線を維持できているのだ。


 徐々に減っていく軍勢にオタ信さんが焦りだしている。

 回復魔弾もまだまだある。これならなんとか倒せるか?

 突撃して来る兵士を切り伏せたレックスが勝利を見た次の瞬間だった。


「きょえぇぇぇぇいっ!!」


「なんだ!?」


 突如叫び出したオタ信さん。その背後から、何かが出現する。

 ワープゲートとでもいえそうな渦巻く真円。その奥から、ガシャガシャと音が近づいて来る。

 軍勢だ。100騎はいるだろう軍勢がオタ信軍に加勢しに現れたのだ。


「嘘だろ……?」


「ひでぇ吉! 手伝えぇっ!」


「ウゼェオタ野郎!」


 手に持っていた鞭でオタ信さんを叩いたのは、増援として現れた兵士に紛れていた背の低いサル顔の男。刀咲き誇る兜を着込み、全長を水増ししている彼は、悪態付きながらレックスに視線を向ける。


「アレを駆逐すりゃいいのか。ハッ雑魚が」


 ひでぇ吉が鞭をしまい軍配を掲げた。


「オタ公に代わり俺様が指揮を執る! 全軍死んでも突撃し続けやがれ!」


 100騎とオタの軍勢がさらに苛烈に攻め寄せて来た。

 正直、既に限界近かったレックスは、成す術などなかった。

 負ける? それでも不安そうに自分の背中を見つめるヲルディーナを意識して、剣を握り込む。


「まだだ。まだ、負けられないッ!!」


 だが、多勢に無勢は確かであった。

 迫る無数の剣を避ける術が無い。

 いくら強くなろうとも、避け場の無い場所で隙間ない攻撃を加えられればレックスの敗北など確定したようなモノだろう。


惑わしの草地ストレイ・ソッド!」


 負けるものか! せめて最後まで、全ての攻撃を受けたとしても相手に一太刀でもくれてやる。

 そんな思いで剣を構えた彼に、迫る無数の剣は一つも当らなかった。

 ひでぇ吉の軍勢達は、なぜかレックスを避けるように剣を振り、空振りや同士討ちを行っている。


「なんだ?」


「うきぃっ!」


 ここから先は俺に任せな! 仲間のピンチに、来たぜ俺! さぁ活目せよ俺様の降臨だ!

 とばかりに一匹の盲目猿が戦場に割り入りオタの軍勢を蹴り上げる。


「ミー……ザル?」


 呆然と呟くヲルディーナ。

 その言葉で参戦して来たのが自分たちの仲間だとようやく気付いたレックス。

 外れた行動をし始めたひでぇ吉の軍を一人一人斬り伏せる。


「へへーい、アニアちゃんが助っ人に来てやったぜぃ。どうよレックス。惚れた?」


 そうこうするうちにレックスの顔横にやってくる妖精が一匹。

 胸を張ってふふんと鼻を伸ばす彼女はハッスルダンスを踊り仲間の攻撃力を底上げし始める。


「惚れはしないが、本当に助かった。もう、上のボス倒したの!?」


「ふっ。アニアちゃんにかかれば楽勝ってなもんよ」


 ミーザルとアニアの二人だけでボスであるネアンデールの群れを退けた事に驚きながら、そんな頼りになる仲間が助っ人に来てくれた事に勇気が湧いて来るレックス。

 まだまだ負ける気がしない。


「よし、やるぞミーザル、アニア。四人でここのボスを……」


 勢い付けて倒しに行こう。そう思った時だった。

 オタ信さんとひでぇ吉の間に、再び現れるワープゲート。その奥から、新たな軍勢が現れる。


「そんなっ。まだ増援が来るのか!?」


 折角アニアとミーザルが来てくれたというのに、再びピンチに逆戻りだ。


「イェェェェェェイッ、暇かぁオタ信、ひでぇ吉。遊びに来たぜぇぇぇイェェェイ」


 オタ信さん第三陣増援部隊。イエイエ康の登場だった。

 何かを感じ取ったミーザルがぎろりとイエイエ康に顔を向ける。

 イエイエ康も何かを感じ取ったのか、二人は戦場の中央に歩み寄りイエイエ康が馬から降りて対面する。

 双方同時にばっと腕を動かした。ミーザルは自分を指し示し、イエイエ康はピースサインを存分にひけらかす。


「うっきぃっ」

「イェーイッ!」


 無駄な自己主張合戦が始まった。

 ミーザルが戦線から抜けたせいで再び窮地に立たされるレックス。

 アニアの御蔭で囲まれても攻撃を全方向から受けるリスクは無くなったものの、守る者が二人に増えた分負担が多く圧し掛かる。

 だが、彼はそれでも英雄だった。

 仲間を背にして闘う英雄に、戦友は確かに応えるのだ。


「先手必勝っ! 助太刀いたしますわ!」


 扉から部屋に入ると同時に、その令嬢はソードガトリングランチャーを掃射した。

 ひでぇ吉

  種族:偽人 クラス:殿

 ・ドS系の偽人。馬上からよく人を見下ろして来る。背が低い事を気にしている。

  自分より背の高い相手には苛烈な攻撃を仕掛けて来る。

 ドロップアイテム・十又槍・刀咲き誇る兜・麻痺針鞭


 イエイエ康

  種族:偽人 クラス:殿

 ・馬上からイェーイと自己主張してくるおっさん型偽人。

  基本攻撃よりも自己主張の方が多い。

 ドロップアイテム・イエ康ブロマイド・イエ康サイン色紙・イエ康印の甲冑、翡翠のナイフ

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