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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その肉体美VS野獣の闘いを僕は知らない

「?」


 思い切りにっくんを蹴りつけた湿混合神像。

 しかし、足先に何かを蹴った感覚が無かった。

 なんだ? と思ってにっくんを探すと、一人の少女がにっくんの首根っこを咥えて攻撃を回避していた。


「ふぃー。あぶないあぶない。一応丸々してて美味しそうだけど食べないようにしなきゃ。ワンバーちゃんみたいに回復しないからねー」


 びくんっとにっくんが得も知れない恐怖に怯える。

 捕食者の視線に晒され本能的に思考停止に陥ったようだ。

 そんな事を知らない少女はにっくんを口から離し、湿混合神像に身体を向ける。


「暑苦しい人嫌いだし、食糧にもならないからちゃちゃっとぶっ倒しちゃうね」


「プリカ……手伝う」


 にっくんを救ったのはプリカ。その横に並んだパイラがゴスを半分咥えながら湿混合神像へと相対する。

 食べ物のことでは争う事もある二人だが、結構気が合う二人でもあるのだ。

 とくに、食べ物関連では協力することだってある。

 にっちゃんやにっくん、そしてワンバーカイザーが攻撃される前に、叩き潰す。


 二体の野獣が放たれた。

 左右同時に迫る野獣たちに湿混合神像もモストマスキュラーで応対する。

 ムキリと筋肉が盛り上がりパイラに渾身の一撃が襲いかかる。

 だが、パイラに当るより先にプリカの蹴りが腕を弾く。


 さらにパイラが突撃し、渾身の抜き手が鳩尾に突き刺さった。

 ごふっと呻きをあげた湿混合神像が背を丸めて鳩尾を抑える。

 するとプリカの蹴りが脇腹に抉り込んだ。

 つま先が筋肉を突き刺すようにクリーンヒット。


「がぁっ!?」


 呻く湿混合神像にパイラが腕に噛みつく。

 次の瞬間、悪夢はついに現実に進出した。

 その光景を見たアメリスは周囲にアイコンタクトを送りプリカ達に気付かれないようにボス部屋の先へと移動する。


「湿った肉、これもまた有り」


「あれ、それなりに喰えるんだ。じゃあ……御言葉に甘えて」


 そんな言葉が聞こえた気がしたが、一同は気にせず扉を閉めて先へ急ぐことにしたのであった。

 プリカとパイラだ。放っといても負けることはないだろう。

 二人とも野獣化が進んでいるのかどんな肉だろうと喰えれば良いらしい。

 アメリスは彼女たちとも付き合い方を考え直そうと本気で思うのだった。




 ――……めよ……目覚めよ――


 そんな言葉を聞いて、そいつはゆっくりと意識を取り戻した。

 被りを振るって周囲を確認する。

 彼が出現した始まりの場所に戻っていた。


 どうやら敗北してしまい、死に戻ってしまったらしい。

 正直いつもの事なので気にする事はないのだが、今回はなぜか前回の記憶が残ったままになっている。

 随分と酷い闘いだった。

 まさか自分が敗者に回るとは夢にも思わなかった。


 にっくき少女が脳裏に浮かぶ。

 とてつもない笑顔でさぁどうぞ。と鍋を勧めて来たあの憎き緑の少女の顔を。

 悔しかった。鍋は自分の専売特許。しかも闇鍋の乱で完全隔離した場所で、一杯喰わされたのである。


 ――力が ……欲しいか?――


 何かが囁いた。

 男は考える。

 そもそも自分は魔物の一種。

 ただ倒されるだけの存在だ。敵である冒険者に対して怒りなどあるはずも……


 否、思いだした。

 鍋のルールを破ったあの見えない存在は許せない。

 あいつは自分の後に鍋をつつかせるつもりだったのだ。なのに自分が倒れフィールド解除されたせいであいつは唯一食していない。


「なべっ!!」


 どこの誰かは分からない。だが、頼む。

 奴等にひと泡吹かせるだけの力を、我に力を!


 ――よろしい ならば、受け取れ――


 身体が闇に包まれた。

 意味が分からず叫ぶ。しかし、何故だろう、闇は実に身体になじむ。

 まるで旧来の友人と再会したような、不思議な感覚。


 身体が闇に染まっていく。

 漆黒の兜は更なる闇に。

 昏き甲冑を携え、彼は再び立ち上がる。


 いざゆかん、合戦の場へ。

 闇鍋奉行、改め、クラスチェンジした彼の名は、闇鍋将軍。

 アルセとバグへのリベンジに燃える神の使徒が、ついに動き出すのだった。



 ぶるり、突然アルセは悪寒を感じて震えた。

 神様が追って来る気配はない。100階層からは出て来ないようだ。

 代わりに、出現する敵が無駄にパワーアップし始めているみたいだけど。

 なんでボスキャラである飛行鬼たちが普通にダンジョン徘徊してるんですかね?


 バグはそんなことを思いながらリエラたちと上層を目指す。

 リエラがいなければ簡単に詰んでいただろう。

 今のリエラならほぼ無傷でこの通常エンカウントボスを撃破できるみたいなので、アルセと二人リエラの応援へと回るのだった。


 リエラは回復能力も高いためフォローをする必要もなく、ほぼほぼ敵が連撃の餌食となってしまうため彼らがフォローにする入る余裕がない。

 完全にリエラの独壇場だった。

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