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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その融合生物を僕は知らない

「よし、ようやく45階層!」


 葛餅と合流したアメリス一行が45階のボス部屋に辿りついた時だった。

 突然開いても居ないボス部屋が開き、二体のアブラギッシュなお兄さんたちが現れる。

 白い歯が煌めく満面の笑顔に左右対称のサイドチェスト。

 思わずひぃっと女性陣から悲鳴が上がる。

 そんな彼らの反応を見ながら、男達は背後の何かをひっつかみぺいっと放り投げて来た。


「ぎ、ギースさん!?」


 放り投げられたのはギース。

 どうやら今まで闘っていたが負けたようだ。

 ただし、何故だろう、彼は幸福の絶頂にいるかのようなだらしない笑みを浮かべて気絶している。


「ハッスル・ダンディは変態ばかりなのかしら?」


「アメリスさん?」


「いえ、何でもないわ。それよりギースが破れたってことは他のパーティーが闘い終わるまでしばらくここで待たないといけないわね」


「あー、それだったら先行っていいぞー。俺ら急ぎじゃねーし」


 アメリスの呟きに、ボス部屋へ挑むために並んでいた一人が告げる。

 いいのだろうか? 皆が思ったが、他の冒険者たちも気にすんな。と告げて来た。

 どうもここのボスは厄介らしくもう少し休んでから挑みたいのだとか。

 後に回せるなら後に回したい。そういう敵だそうだ。


「モスリーン、他の皆も、直ぐ行けるようならご厚意に甘えましょう。にっちゃん。行きますわよ」


 アメリスは即行することに決めたようで、にっちゃんと共に歩き出す。

 葛餅も一緒に行くらしく、サリッサを促しパーティーメンバーのクァンティたちを引き連れボス部屋へと向かった。


「ほら、レーニャも、プリカさんとパイラさんもそんなモノ欲しそうな顔しない。食事なら少し前に魔物食べたでしょ」


 そして彼らは全員でボス部屋へと入り込む。ハッスル・ダンディのメンバーだけはもう少しハッスルしたいと35階に残ってしまったし、ギースは療養も兼ねて冒険者たちに預けて来た。

 部屋に入ると、手前に出現する二体の男。


 あふん像はサイドトライセプス、うふん像はフロントダブルバイセプス姿を見せつけ新たな冒険者たちを待っていた。

 二人の脂ぎった男達を前に、女性陣が少し引いた顔をしているが、代わりに葛餅が前に出る。

 さらにその横に並ぶにっちゃん。


 にっちゃんと葛餅のタッグがあふん像、うふん像と対峙する。

 二体の魔物が迫ったのに気付いた二つの像は、にやりと笑みを浮かべ、左右対称のサイドリラックスを見せる。

 まるで掛かってくるがいいとでも言っているようだ。


 にっちゃんがたわみ、葛餅が触手を伸ばし海栗のように刺々しく変化する。

 転がり突撃する葛餅をうふん像が受け止める。

 突き刺さった触手に悲鳴を上げるうふん像。

 にっちゃんの突撃を受けたあふん像は、しかし、彼をなんとか受け止める。


「嘘っ!? にっちゃんの一撃が受け止められた!?」


 そしてまるでぬいぐるみ可愛い。とばかりに抱きしめるようにしてさば折り。にっちゃんの身体に骨があれば確実にボギッと音が鳴っているほどにぶにょんとにっちゃんの身体がピーナッツの殻のようになる。

 このまま押し潰す。力を強めるあふん像に焦るにっちゃん。それを救ったのは……


「にっ!」


 無数の魔法があふん像に襲いかかる。

 慌てて避けるあふん像は、両足に直撃した氷の魔弾により足が止まり、さらに雷球が後方から股間を直撃した。

 声にならない悲鳴が漏れる。


「にっ!?」


 にっちゃんが解放され、あふん像は股間を押さえて崩折れる。

 倒れ伏したあふん像がびくんびくんと悶絶し始めたのを見たうふん像が葛餅を投げ飛ばす。

 自由を手に入れたうふん像はあふん像に肩を貸して立ち上がらせた。


 無事か兄弟? あ、ああ。すまない兄さん。

 そんな言葉が聞こえそうな程の男達は、互いに濡れた熱い瞳で見つめ合う。

 やるしか、ないようだよ兄さん。そうか……では、行くぞ兄弟。

 自分たちではこの冒険者たちを倒し切れない。そう悟った二人は、突然公衆の面前で抱きしめあう。


 女性陣から悲鳴が起こった。

 男達が全身を絡め合うように抱きついた次の瞬間、光が溢れだす。

 男達は溶け合うように融合し、そして、光の中にたった一人の男が立っていた。


 湿混合神像。二体の像は始まりにして終わり、それが合わさることでその像は出現する。

 腹筋より上の筋肉を存分に見せびらかし、最も強気男であると強調するように、そいつはモストマスキュラーのポーズで葛餅たちを見る。


 さぁ、本当の闘いを始めようか?

 湿った皮膚を持つ男が構えた。

 来る。そう思った葛餅が、にっちゃんが、構えた次の瞬間、オリバーポーズで走り出す湿混合神像。


 否、その速度はあまりに速く、足が動いているようにすら見えない。

 オリバーポーズのまま迫り来る、ある種恐怖の突撃で、葛餅もにっちゃんも反応すら出来ずに吹き飛んでいた。

 驚く面々を他所に、湿混合神像はさらなる敵へと向かっていた。

 無防備なにっくんに接敵した湿混合神像の蹴りが迫った。

 湿混合神像

  種族:有命武具 クラス:リビングスタチュー

 ・スキンヘッドでパンツ一丁の像。

  あふん像とうふん像が抱き付き合い融合した姿。全体的に湿っている。

 ドロップアイテム・木彫りの湿混合神像・独鈷杵・漢のローション

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