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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その復讐者を彼は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その不毛な戦いを僕は知らない

「ククク、フハハハハハ。この不死王たる我、ルグス・タバツキカと相対した不幸を呪え小娘が」


 巨大生物ペンたん。

 ずんぐりむっくりのペンギンのキグルミを着込んだような可愛らしい女の子の容姿をしているが、少女ではなくこの姿がデフォルトの生物である。

 ぼぉーっとした目は遥か下で喚くルグスなど見ている訳がなく、ずっと虚空を見上げてぼぉーっとしている。


 おそらく地上に出れば雲を突き抜ける程の巨大な生物だろう。

 しかしルグスは怯えもしなければむしろ勇猛果敢に攻め立てる。

 マントを開き、無数の魔法弾をペンたんへと見せつけた。


「さぁ、逃げまどうがいい。その図体で出来ればの話だがなァ!!」


 無数の弾丸が飛び交う。

 ……ペンたんの巨体を全て避けて。

 まさに弾幕とも呼べる連射の悉くがペンたんだけを器用に避けて背後の壁を床を天井を爆撃していく。


 ペンたんは全く動かない。

 むしろ攻撃されてるとすら気付いてないかのように出現からずっと同じ体勢で虚空を見上げたままだ。

 ルグスの魔法が背後から色とりどりに彼女を色どり、いっそ華やかな絵でも見ているかのように思える


 そんな無意味な砲撃がどれ程続いただろうか?

 疲れた面持ちでボス部屋へと辿りついたモスリーン達が、この光景を見て息を飲む。

 全く、たった一つも魔法が当っていない。


 ルグスは昂揚しているのだろうか? 逃げまどえ逃げまどえぇい、フハハハハハと厨二病全開の台詞を吐きながら高笑いを浮かべていた。

 どうやらギャラリーも邪魔者も居ないと思い、相手も攻撃してこないので遊びだしているらしい。

 挙句、左手のひらで顔を額を押さえて高笑いの始末である。


「先、行ってましょう」


「のじゃ」


 モスリーン達は流れ弾に当らないように気を付けつつ、部屋を素通りすることにしたようだ。

 モスリーン達が通過した後もルグスは魔法弾を打ち込み続ける。

 かれこれ一日以上放ち続けているが、無尽蔵とも言える魔力にモノを言わせた連撃を絶え間なく放ち続けてもまだまだ余裕があった。




「楽しい、楽しいなぁ、アァ、オイ?」


 気分の乗っているルグスは気付かない。

 そんな彼を呆然と見つめる五人の瞳を。

 最後尾をひたすらに駆け抜けていたアメリス達が追い付いたのだ。


 一応、五階下で大食い選手権を繰り広げていた二人を回収し、五人になったアメリスたちもまた、ルグスの奇行を見て唖然としていたのだった。

 まさかの三巡目に強制参加させられたせいでアメリスの顔がやつれて見えるが、パイラとプリカは逆に生き生きとしていらっしゃった。

 モスリーン達同様横を通って行くか。とプリカやパイラに告げて歩き出そうとしたまさにその刹那。


「ぎゃぅっ!?」


 一発の魔法弾がついにペンたんに直撃した。

 思わず誰かの「あっ」という声が漏れる。

 そして、ペンたんの怒りがルグスを襲った。


 ペンたんはペンギンの羽となっている片手で顔を隠す。そして手をどけた時、そこには怒りの顔があった。

 拳、否羽を握り込み力を溜めて、ルグス向けて思い切り打ちこむ。

 攻撃が来ると思っていなかったらしい、直撃した。


 床が衝撃で破壊され、粉砕されたルグスがその中心に倒れている。

 さらにダメ押しの一撃、両羽を合わせての打ち降ろし。

 床が飛び散り四散する。

 ルグスもぐっちゃぐちゃに骨を折られて敗北していた。


 完全にペンたんの圧勝である。

 衝撃的な光景を見てしまったアメリス達が呆然としていると、ペンたんがギロリと視線を合わせる。

 どうやら完全にルグスの仲間と思われたようだ。


「にっ!」


 アメリスに逃げろとでもいうように嘶き、にっちゃんがたわむ。

 バゴンと床を破壊して特攻。

 ペンたんと激突した。


 顎に直撃を喰らったペンたんが傾ぐ。

 にっちゃんの一撃を喰らって傾いだだけだった。

 よろよろと数歩下がったペンたんは、さらに怒り狂ったようで、口を大きく開く。


「アメリス、パイラッ!」


 とっさにプリカが二人をひっつかみ飛ぶ。

 にっくんも慌てて飛んで壁に自ら体当たり。自分の柔らかボディを存分に使いゴム毬のように弾んで逃避。

 次の瞬間、ブリザードブレスが彼らが一瞬前に居た場所を爆散。凍りついた空気がスターダストとなってキラキラと舞い落ちる。


「凄い一撃ね。まともに闘うのは危険だわ」


「青い狐、うまし」


「って、あんたまだ喰ってたのかいっ」


「次は……ペンギン?」


「あれ、喰うの? ……食べ物かぁ……じゅるり」


 アメリスを手放しプリカとパイラが走り出す。

 アメリスが立ち上がる頃にはペンたんの悲鳴が轟いていた。

 暴れる彼女を見ないようにしてふぅっと息を吐く。


「やれやれだぜ」


 そして一人、他人の邪魔をしないよう静かにボス部屋の隅に移動するのだった。

 そんな彼女の後をにっくんが付いて行く。

 にっくんも自分が今回火力不足であると気付いているようで、無駄にターゲッティングされないようにアメリスの横で見学することにしたようだ。

 ちなみに、トドメはにっちゃんが刺したらしい。

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