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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第ニ話 じゃじゃ馬嬢を止める術を彼らは知らない
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それが魔人か植物か、僕は知らない

 がさり。

 茂みを揺らして葉っぱが現れた。

 いや、なんていうの、全身に葉っぱが付いて身体を覆い隠された人型生物だ。

 手には剣を持っている。


 どっかの冒険者かな?

 そう思ったが違うらしい。

 なんか意味不明の言葉を吐きだした。


「にょきっ! にょきにょきにょっき!!」


 葉っぱ人間の鳴き声はうきょろきょろんではないらしい。

 初め、それが何者かすら理解できず、リエラとアメリスはそいつを見たまま固まっていた。

 が、剣を構えた葉っぱ人間を見てごく自然にリエラは抜刀していた。


 振われた剣をアルセソードが切り裂く。

 多分受け止めようとしたのだろうけど、予想以上に切れるアルセソードは相手の剣をスパッと両断していた。

 受け止める体勢だったリエラはそこで止まったが、勢いを殺されなかった葉っぱ人間はそのまま剣と共に前に向けて倒れ込む。


「にょきぃっ」


「な、なんなんですかあなたは!?」


「ちょ、冒険者、それ人間ですの!?」


「え? あ。た、多分魔物? 魔人、と、とにかく倒さなきゃ」


 自分しか闘えない。それに気付いた途端リエラの身体が震えだす。

 ダメだ。あんな状態じゃ。

 葉っぱ人間も体勢を立て直してしまい、折れた剣を構えて油断なくリエラを見る。

 素人目にも今のリエラは隙だらけなのだろう。

 若干戸惑いながらも再突撃を始める。


「リエラっ!」


 僕は咄嗟に近くにあった物をぶん投げる。

 リエラに刺突を繰り出す葉っぱ人間の顔面に、ミミック・ジュエリーが飛んできた。

 ……すまんミミック・ジュエリー。丁度良いところにアルセの頭があってお前が居たのが悪いんだ。


 不意の一撃で視界が塞がれた葉っぱ人間は慌ててミミック・ジュエリーを引き離す。

 離れたミミック・ジュエリーは地面に投げ捨てられた。

 べしゃりと地面に落下したミミック・ジュエリーは直ぐに盛り上がって空色葛餅へと変化する。


 その一撃は、リエラにも変化を齎した。

 突如飛んできたミミック・ジュエリーが僕の仕業だと気付いたのだ。

 頼りないかもしれないけれど、僕がまだここに居る、それを認識し、震えが止まったらしい。


「いけ、リエラ!」


 思わず、僕は叫んでいた。

 呼応するようにリエラが剣を構える。

 体勢を立て直した葉っぱ人間が走り出す。


「にょきぁっ!!」


「せ、あぁッ!!」


 気合いの入った刺突をリエラも気合いを入れて弾き飛ばす。いや、切り飛ばす。

 また刃先が少なくなった。

 葉っぱ人間はそれに気付いて壊れた剣を投げ捨てる。

 ちょっ!? ミミック・ジュエリーに刺さった!?


「にょきっ!」


 懐の葉っぱから小ぶりのナイフを取り出す葉っぱ人間。

 慌ててリエラも対処しようとするが、葉っぱ人間が狙ったのはリエラに剣を振らせることだった。

 ナイフに対処しようと剣を振ったリエラの柄元を葉っぱ人間が蹴りあげる。

 ああっ。アルセソードが!?


 アルセソードがミミック・ジュエリーに突き刺さった!

 み、ミミック・ジュエリ――――っ!!?

 ま、剣は効かなかったみたいだけどね。

 自分で柄を飲み込んで引き抜いてます。


 そして柄を自分の体内に入れて剣を立たせたミミック・ジュエリーは、まるで怒りを露わにするかのようにぐにょんと伸びると葉っぱ人間にアルセソードで斬りかかった。

 予想外の攻撃に、ナイフでリエラにトドメを刺そうとした葉っぱ人間が慌ててナイフで受け止める。

 が、アルセソードの威力を彼は忘れていた。

 折角防壁として突き出したナイフは完全に粉砕され、袈裟掛けに浅く切り裂かれる葉っぱ人間。

 咄嗟にバックステップしたのでぎりぎり避けられたらしい。


「これは……そうだ!」


 それを見たリエラが走る。

 ミミック・ジュエリーを抱き上げるとごくりと息を飲んで言った。


「言葉を理解してくれるか分からないけど、手伝ってミミック・ジュエリー! あの葉っぱ人間、私達で倒しましょ!」


 理解したのかしていないのか、ミミック・ジュエリーは身体の一部をリエラの右手に浸食させるとそのまま固定化してしまう。

 捕食される!? と焦った僕だったけど、なぜかリエラは嬉しそうにありがと。と告げていた。

 なんで!?


「行くよミミック・ジュエリー!」


 リエラが走る。

 アルセソードを持ったミミック・ジュエリーを両手で構え、大上段からの渾身の一撃。

 武器を失った葉っぱ人間は慌てながらもなんとか受け止めようと白刃取りの構えを取る。

 上段からリエラの一撃。タイミングはドンピシャとばかりに両手で受け止めようとする葉っぱ人間。が、その瞬間剣を振る速度が加速した。

 硬質化したミミック・ジュエリーが一部軟化して剣を振ったのだ。


 これは……すごい!

 受け止められずに頭にアルセソードを突き入れられた葉っぱ人間は「にょぺっ」と謎の言葉を残して絶命した。

 そして、この瞬間、リエラの攻撃方法に革新的な何かが生まれた。


 手応えを確かめるようにリエラは自分とミミック・ジュエリーの結合部を見つめる。

 力が抜けたのだろう。へなへなとその場に座り込むリエラ。

 口からは、やった。と自分が敵を倒せたことに喜びを感じているようだった。

 葉っぱ人間

  森の深くで出現する魔物の一種。たぶん植物ではないはず。

  初見では人間と見間違いかねないが、れっきとした魔物。

  武器は倒した冒険者から手に入れたりしているようだ。

  にょっきと鳴きながら集団で戦闘を行う魔物。

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