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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第九部 第一話 その仲間たちの思いを背負い塔を昇ることになる事を僕は知らなかった
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その鍋奉行の亜種を僕らは知りたくなかった

 残り10階層。

 再び出現する魔物の種類が変化した。

 視線の先を歩いているのは2メートル以上ある巨大な男だ。

 肌は赤く泣きながら歩いているため、少し離れた場所に居る僕らには気付いていないようだ。


「レッドオーガ? それにしては容姿が違いますね」

「るー」

「おー」


 パルティの言葉に同意するルクルとアルセ。しかし残念。魔物の声は鳴き声のためパルティの独り言にしか聞こえません。

 あ、僕に言ってたのパルティ? そうだね。どっちかというと……オーガってより日本版の鬼ってかんじになるのかな?

 お名前は……と。泣いてる赤鬼? そのまんまだね。


「あ、あっちに居るのは青オーガですかね?」


 パルティーが指差す方向には恐る恐るといった様子で歩く青鬼さん。泣いてる赤鬼とはち合わせてウガァァァァ!? と叫んで逃げていった。

 ちなみに名前は怯える青鬼。

 お前らその巨漢でどんだけヘタレなんだよ!?


 パルティとルクルに図鑑を見せて敵の能力を覚えてもらう。

 基本二体とも腕力にモノを言わせた攻撃のようなのでスキルは少ない。

 というか、赤鬼、ぐるぐるパンチってなんだよ。容易に想像できたよ。子供かっ!?


 しばらく進んでいくと、進行方向から黒い甲冑の男がやってきた。従えているのは泣いてる赤鬼が三体と、めちゃくちゃ微笑んでる緑色の鬼だ。

 名前は……うん、にこやか緑鬼だって。巨漢でにこやかとか、逆に怖いわ。

 そしてその大将としてやってきたのが……闇鍋奉行?


「あいや待たれい!」


「わわっ、え? 黒い鍋奉行?」


 驚くパルティに闇鍋奉行が聞いて来る。


「鍋を食べているか?」


 反射的にパルティは首を振る。鍋奉行の場合が場合だっただけに当然の動きだったのだが、マズい。闇鍋はマズいんだパルティ!

 でも、僕が止める暇等、なかった。


 ダンジョンを闇が包み込む。

 鍋が一つ、光り輝くように浮き出た。

 鍋の元へ集え。闇鍋奉行の采配で鬼達が陣取って行く。


 あれ? ちょっとおかしいな。そう思いながらパルティとルクルも鍋の元へと集った。

 マズい、非常にマズい展開です。

 闇鍋には幾つか危険があるんだ。それをパルティーに説明しないと……どうすれば?

 そうだ!


 僕はアルセを連れて鍋、ではなく闇鍋奉行の元へと向かう。

 早く鍋の席に付け。そう言いたそうな闇鍋奉行の裾を引き、アルセの頭をこてんと斜めに傾げて見せる。


「むぅ? 説明がいるか?」


「説明? あ、じゃあお願いします」


 パルティ、相手魔物だけど普通に会話しちゃってるよ。今はいいけど衆人環視の前では止めようね。


「我が出す鍋に入っているモノは闇の中でつつき合う。ゆえに何を掴んだかは食べるまで分からぬ。ルールは簡単。掴んだモノは必ず喰え。それだけだ。いざ、出陣!」


 ルール簡単だけどやっぱり闇鍋だった。

 アルセが鬼に拉致され強制的に鍋の前に座らされ、リエラも同じく拉致されかけたので仕方無く自分で鍋の前に連れていくことにした。


「時計回りに行う。一番手、喰えぃ!」


 鍋の周りの光が消える。

 完全に闇が周囲を支配した。

 鍋がどこにあるかは感覚的に分かるし、手元のお椀の位置も分かってしまう。だが何が鍋に入っているかは分からない。


 具材が入って行く音がするのが分かる。

 何か変なうめき声が聞こえる。

 虫の出すようなぎぃぎぃという断末魔の悲鳴。


 すると、突然鍋の近くに陣取る赤鬼が浮かび上がる。

 なるほど、本人には真っ暗に見えるけど誰が食しているのかわかるように相手が見えるのか。

 どうやら一番手らしい泣いてる赤鬼が、いざ、実食!

 って、それはっ!?


「UGAGE●■(×)ぽ……」


 ズシン……何かが倒れ伏す音がした……


「次、喰えぃ!」


 無慈悲に告げる闇鍋奉行。

 ダメだ。この鍋は危険過ぎる……

 そして指定されたのはルクル。

 困った顔で周囲を見回し、しかし食べなければ進まないことを察して恐る恐る箸を伸ばす。


 どうでもいいけどルクル箸使えるの?

 というかパルティとか箸使ったの見た事無いんだけど、多分だけどこの鍋の時限定で使える設定になるんだろうね。

 固有空間恐るべし。


 果たしてルクルが掴んだのは……おお、よかったなちくわぶだ。

 ルクルだけは見えてないんだろう、怖々と舌先で安全かどうか確かめ、ゆっくりと口に含む。

 ……なんかエロいですルクルさん。


「次、喰えぃ!」


 お次はパルティの番。掬い取ったのは……うわぁ……


「ひぃっ!? なにこれ、ぬめっとしてる。ひぃ、ムリ、ムリムリムリっ。なんかぷにょぷにょしてるしぃぃ」


 おそらくナマコの輪切りと思われるモノを掴んでしまったパルティ。涙目でいやいやするが、闇鍋奉行は許さない。

 やれ! とばかりに采配し、パルティの背後に現れた鬼たちが無理矢理パルティの口を開けて掴んだ輪切りナマコを流し込む。

 酷過ぎる……


 まるで蹂躙されたように涙を流して喉を鳴らして飲み込んだパルティが倒れた……  

 泣いてる赤鬼

  種族:鬼族 クラス:オーガ

 ・ゴブリンの進化系の一種。オーガ種に指定されている。一本角の赤い肌の鬼。

  いつも泣いている。虎縞パンツがトレンディ。

 ドロップアイテム・鬼のパンツ(使用済み)、金棒、鬼角


 怯える青鬼

  種族:鬼族 クラス:オーガ

 ・ゴブリンの進化系の一種。オーガ種に指定されている。二本角の青い肌の鬼。

  いつも怯えている。虎縞パンツがトレンディ。

 ドロップアイテム・鬼のパンツ(使用済み)、金棒、鬼角×2


 にこやか緑鬼

  種族:鬼族 クラス:オーガ

 ・ゴブリンの進化系の一種。オーガ種に指定されている。一本角の緑い肌の鬼。

  いつもにこやかパンチパーマの笑顔が怖い鬼。虎縞パンツがトレンディ。

 ドロップアイテム・鬼のパンツ(使用済み)、金棒、鬼角、慰謝料


  闇鍋奉行

 ・一目で奉行と分かる出で立ちの偽人。鍋奉行と比べるとかなり黒い武装。

  十手を持っており、敵を見付けると「なべ!」 と叫びながら襲いかかって行く。

  目の前で鍋を作ると割り入って来て指示を飛ばしてくる。

 種族:偽人 クラス:丁髷族

 装備:十手、和服

 種族スキル:

  威嚇・激

  ひっとらえよ!:うっかり御用だを多数生成する。

  真空波斬:横一線に走る剣閃にさらに衝撃波が加わる。

  武器破壊:十手で受け止めた刀などを破壊します。

  待たれよ!:相手が鍋を始めていると突然現れ待ったをかける。鍋に関して事細かく指示を出す。

  まだ煮えておらぬわ!:相手の攻撃を確実に受け止めるスキル。30%の確率で発動。

  鍋こそ我が人生:鍋物を食べることでHP・MP・TPが全回復。稀に瀕死または状態異常。

  逆鱗:鍋物を粗末にした者に対し全能力超強化。

  貴様が、鍋に、何をした!!:鍋物を粗末にした者に対し死ぬまで怒涛の連続攻撃を行う。

  闇鍋の乱:暗闇のフィールドを生成し、相手に強制的に闇鍋参加を促してくる。このフィールドを解除するには箸で必ず何かを掴まなければならず、掴んだ物は絶対に食べなければならない。

 ドロップアイテム・十手・和服・鍋・闇鍋の具

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