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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第九部 第一話 その仲間たちの思いを背負い塔を昇ることになる事を僕は知らなかった
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その少なくなる戦力を僕らは知りたくなかった

 キシャーっとすごんで見せる金髪白珠肌の女性。

 カミラという名称の吸血鬼がバサリとマントをはためかすと、後ろに待機していた吸血鬼ともゾンビともつかない生物群が動きだす。


「お嬢様、ここは私めが」


 アルセに優雅にお辞儀して、ロリコーン侯爵が立ちはだかる。

 正気か紳士、お前一人で相手できる群れじゃ……


「フォッフォッフォ。お急ぎを」


 人の言葉、というか単語を喋り出したロリコーン侯爵に押されるようにアルセ達が次の階層へと向かって行く。

 え? 本当にロリコーン侯爵だけ残して行っちゃうの!?


「小父様、お供いたしますわ」


 ガトリングソードランチャーを構え、ロリコーン侯爵の隣に侍るハロイア。

 なんか無駄にカッコイイ。特にガトリングソードランチャーが。照明に照らされてきらりと光ってます。

 そんな彼らにここを託して、僕らはさらに先へと進むのだった。


 流石に、二日程で駆け抜けるにはきつ過ぎる道程だった。

 僕らはなんとか80階まで向う事が出来たのだけど、流石に戦力的にそろそろきつくなっていた。

 二度目のキャンプ。アルセ、リエラ、パルティ、ルクル、レックス、ヲルディーナ、アニア、ミーザル、セキトリと、かなり少ないパーティーメンバーになってしまった。

 火力が足りない。


 80階までの闘いはパルティとレックスがメインアタッカーとなりヲルディーナとセキトリとアニアが後衛、ミーザルとアルセが遊撃を行いなんとか撃退できていた。

 回復魔弾も結構な勢いで減りだし既に100弾くらいは使用した。

 まぁのこり1900発あるし、パルティの持ってる分だけの計算だから僕らの合わせたら軽く10000発を越える在庫はあるんだけどね。


「二度目のキャンプ、ですね。地上では今三日目過ぎたくらいでしょうか? それとももう四日目に入っちゃったんですかね?」


「このダンジョン内だと分かりにくいよな。はいヲルディーナ」


 食料は事前に買い込みポシェットに入れておいたから問題は無いんだけど、レックスとヲルディーナがキャッキャウフフしてるのが辛いです。

 血涙流しながら見つめるセキトリくんに遠慮しろバカップル。




「朝ですよ透明人間さん」


 不意に、揺すられる身体に意識が覚醒した。

 眼を開くと、視界に飛び込む天使の微笑み。

 パルティが薄い笑みを浮かべながら揺り起してくれていた。激写しました。


 起き上がると、僕が起きた事を理解したらしくパルティが離れていく。

 丁度リエラが横に居たのでリエラを起こしているように皆には見えているようだ。

 セキトリ君やらヲルディーナさんは僕に一切気付くことなく朝食? の用意を行っている。


 相変わらずリエラは苦悶を浮かべ浅く息を吐いているだけだ。

 ひとまず状態異常回復魔弾を使っておく。

 少しは効果があるのか安らかな顔になる。


 ふと、気が付けば僕の横にアルセがやって来ていた。

 心配そうにリエラを見つめ、僕の視線に気付いたのか僕を見上げて来る。

 大丈夫だよね? そんな呟きが聞こえた気がした。

 アルセを元気づけるように頭をわしゃわしゃと撫で、リエラを抱えて皆の元へと向かう。


「やっぱり、皆追い付いて来ないな」


 不安げにセキトリが呟く。

 誰も返答はしなかった。

 ついつい沈みがちになるメンバー。しかし、未だにムードメーカーは存在していた。


「はいはいはーい。みなさんご注もーく!」


 皆の中央にふよふよとやってきたアニア。

 皆の視線を一身に集め、憂鬱を吹き飛ばすようにきらきらっと燐粉を撒き散らす。


「次で80階層入ります。残りは20階層。ボス部屋は5個。リエラを救うために皆が血路を開いてくれたんだよ! 私達で残りを踏破して、リエラを救う。そしたらリエラを含めた私達で皆を助けに行こう! ふっふっふアニアちゃんの凄さをこの機会に存分に見せつけて海に連れていかなかったことを後悔させてくれ……ぎゃいんっ」


「うきゃっ」


 話の途中で割り入るミーザル。注目を集めたアニアが許せなかったのか、注目浴びるの俺! とばかりにアニアをふっ飛ばしその起ち位置に収まった。

 はい、アルセ、ドロップキック。


「おーっ」

「うっきゃぁ――――っ!?」


 うん、掴みはオッケー。皆に笑顔が戻ったようだ。

 キャンプの後始末を終え、ボス部屋へと入る。

 80階層のボスは……マンモス?


 青白い毛のマンモスが一体。されどその巨体はそれだけで凶器と呼べる存在だった。

 早々にアニアとミーザルが戦闘放棄。両手を上げて万歳している。いや、ミーザルの手は自分を指しているので俺が万歳しているぜ。といった自己主張も同時にしているようだ。


「やるしかないか……」


「あんな巨体を相手に? だ、大丈夫なのレックス」


 皆を見て覚悟を決めるレックスと不安げに寄りそうヲルディーナ。

 だけど、二人を押しのけるように彼は前に出る。


「パルティさん、レックス。皆を連れて先に行ってくれ」


「セキトリ?」


「敵は一体だけだろう。なら、ここは引き受けるさ」


「正気か!? お前一人で敵うような存在じゃ……っ」


「一人じゃない。頼りになる相棒が居るからな」


「チュウセイシスライムか! そうか……わかった。なら任せる。本当に、いいんだな?」


「何度も言わせるなって、俺にだって少しくらいカッコ付けさせてくれよ」


 しっしとジェスチャーで追い払うようにして、セキトリはここに一人残る。

 皆が出ていくのを見終え、セキトリははぁっと息を吐いた。


「はは、頼りになる相棒……か。触れた瞬間周辺巻き込む爆散だぜ? 俺が死ぬっての」


 そうしてキッとマンモスを見上げる。


「やってやるさ、俺だって、冒険者なんだ!」


 扉が閉まる瞬間、突撃を開始したマンモスにより僕の視界からセキトリが消えた……

 ブリザーマンモ

  種族:魔象 クラス:マジックエレファ

 ・魔象の一種。マンモスの中でも氷魔法に特化した魔物。

 ドロップアイテム・象肉・象牙・象毛・麻雀牌

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