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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第ニ話 じゃじゃ馬嬢を止める術を彼らは知らない
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迷子の説明時に迷子になったらどうすればいいか、誰もわからない

「ふふ。夢にまで見た冒険。ああ、楽しみですわ!!」


 金髪ドリルヘアのお嬢様。一応お付きの人が一人ついて来てるけどただのメイドさんらしい。

 あまり戦闘に秀でてはいないらしく、本人も護衛術を嗜む程度ですと言われては、カインたちが守る人物が増えただけになってしまっていた。


 そんな皆で森の探索である。

 カイン、ネッテ、リエラ、アルセ、バズ・オーク、ミミック・ジュエリー、クーフ。

 このメンツに僕とアメリス、メイドさんの結構な人数だ。

 でも戦闘が出来るのはそのうちの半分だ。

 あの森の深い部分に行くんだよね、これ、絶対死人でるよね?

 というか、にっちゃう・つう゛ぁいとか捕まる以前に見つかるんだろうか?


「さて、こっから森に入るわけですが。アメリスお嬢さん、ここからは俺らの指示に従って貰います。

いくら俺らでも勝手に行動されると守れるものも守れなくなりますので。いいですね?」


「むぅ。しかし。気になるものを見付けたら見に行きたいですわ」


「ダメです。行く前に周囲の確認と危険物の有無を見た後です。怪我程度なら完治させますが命まで失われるとどうにもなりません。嫌々でも従って貰います。それにこの森は冒険者でも毎年行方不明者が多発する危険地帯ですし、森も深いので一度でもはぐれるとそのまま魔物の餌になりかねない。そこを理解してください」


「う、うん……」


 ワザと恐がらせるように告げるカインにアメリスは不承不承頷いてみせる。


「では、まずもしも皆とはぐれた場合ですが……」


「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


 カインが先輩風吹かすように講釈垂れてる最中だった。

 彼の背後から突然走ってきたキルベア。

 咄嗟に剣で庇ったカインを拳の一撃で撥ね飛ばす。


「カインッ!?」


「ブヒッ!!」


 咄嗟に動けたのはバズ・オーク。

 新品のブローバ―で思い切りキルベアに打ち掛かる。


「ひ、ひゃああああああああああああ!?」


 そしてキルベアにブッ飛ばされたカインを見て恐怖に駆られたアメリスが走り出す。


「いけないッ!? リエラ、クーフ、彼女を追って! 見失ったら不味いわ!」


「は、はいっ」


「承知!」


 さすがに危険だと、僕もアルセを抱えて後を追う。

 ネッテたちは、まぁキルベアは前も倒してたし問題はないと思う。

 ネッテとバズ・オークだけでも十分勝てるだろう。


 ……

 …………

 ……………………


 と、いうわけで。

 僕は現状を把握するように周囲を見回す。

 いじけるように三角座りしているアメリス。その目の前でどうしたの? とばかりに顔を覗きこんで笑みを向けるアルセ。その頭上でプルプルしているスライムもどき。

 所在無げに佇み他のメンバーが来ないか見ているリエラ。

 少しして、様子見に出ていたクーフが森を掻きわけ戻ってきた。


「ど、どうですか!?」


「近くに彼らの気配はない。この森は初めてだしな。余り離れると我も戻れぬと帰ってきた」


 まぁ、つまり、要するにだ。

 絶賛遭難中であります。

 迷子になった時どうすればいいか、カインが話し終える前にこうなったのでどうすればいいか分かりません。


 ネッテやカインが居れば、あるいはバズ・オークが居ればなんとか合流も出来たかもしれない。

 でも、ここに居るのはド新人のリエラと少し前に目覚めたばかりの地理に詳しくないクーフ。そして能天気で何を考えてるか分からないアルセである。


 うん、詰んだ。

 回復魔弾があるから余程のことが無い限りは連闘は可能だし、攻撃力はクーフがいるからなんとかなる。でもサバイバル術は誰も持ってない。

 こういう時のメイドさんですよね。どこいった!?


「外は恐いですわ。もう、お家に帰りたい……」


 早いなオイ!?

 まぁわからなくもないけどさ。


「すまんな。この森はよくわからん。家に返そうにも帰り方がわからん」


「も、もうちょっとオブラートに包んでくださいクーフさん。うぅ、私がもうちょっとしっかりしてれば……」


 ただ一人、アルセだけがうろちょろうろちょろ笑顔を振りまいている。

 うーん、さすがにちょっと浮いてしまってるな。

 元気づけるのにはアルセの行動が一番なんだけど、今の彼らにはアルセに視線を向ける余裕すらないらしい。


 仕方ない。ここは僕が何とかするしかないね。

 えーっと、まずサバイバル技術についてだけど、僕はテレビで何度か見たよ、そしてうろ覚えなのさ。

 ……御免、うろ覚え過ぎて知識として使えない。


 思わず四つん這いで嘆いていた僕に、アルセは肩をぽんと叩いて笑顔で落ち込むなと勇気づけてくれた。

 うん。やるよアルセ。僕やるよ。

 絶対に君を守って見せるからねアルセ!


 再びやる気を燃え上がらせた僕はリエラのもとへ行く。

 独りで出来ないならば協力だ。

 やるぞリエラ。共にアルセを助けるんだ!

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