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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その島があった事実をもう誰も知らない
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その別れがあることを皆は知りたくなかった

「それじゃぁ、本当にいいの?」


「はい。申し訳ありませんが」


 フラムジュブナの街を出る日。二台の馬車の横で、僕らは別れを惜しんでいた。

 宿屋に居残るのはリフィ。

 なんでも今回の事で魔王が軒並み全滅したため、この一帯の海がリヴィアサンの眷族に席巻されることになった。


 で、治めるのに人手が足りないから戻って来いということらしい。

 僕らに付いて来てコルッカに行ってみたいと思っていたリフィだったが、親孝行したいという想いを優先し、居残ることにしたのだ。


「しばらくはお母様のお傍で海を治めます。それで、その、もしも自由が手に入ったら。また皆さんの元に遊びに行ってもいいですか?」


「うん。コルッカか、マイネフランって国のどっちかに居ると思うから、よかったら来てね」


「それはいいけどリエラさん。海から離れたら危険なんでしょ。海水を何とかする術が無いと難しいよ」


「それなのですが。アルセちゃんに教わってマリン・ウォーターっていう魔法を覚えたの。だから丸一日以上魔力切れにならない限りは日常生活できます」


 リフィの言葉にえへへ。と照れ笑いするアルセ。

 相変わらず可愛いねアルセ。

 でも、最近ホント人間っぽくなってきたよね。元気で可愛らしいからいいけど、変なことは覚えちゃダメだよ。特に侯爵みたいな変人になったりルグスみたいなやられ役にはならないように……


「みーんなーっ」


 ん? なんか聞き覚えのある声が。

 コルッカ方面から何かがふよふよと飛んで来る。

 ……あ。


 居たよ。そう言えばコイツ居たよ。完全に忘れてたよ!

 空を羽ばたきながら小さな虫。ではなくアニアが現れた。

 そう、あの悪戯好きの妖精さんだ。

 そういえばこの旅の間見てなかったかな。と思い出す。


「え? アニア!? あ、あ――――っ!? ご、ごめん」


「いやー。アメリスの家で寝てたら皆居なくなってるんだもん。ギルドに問い合わせたらここに向ったっていうからさぁ。なんとか辿りつけてよかったぁ」


 皆、リフィとの別れを惜しんでいただけにちょっと気まずい。


「さぁーって遊ぶぞー」


 能天気に告げるアニア。

 皆困った顔をしている。

 視線が飛び交う。誰か真実教えてやれよ。嫌だよ。お前行けよ。無理だって。

 そんなアイコンタクトが交わされ合う。


「あ、あのねアニア。言いにくいんだけど……」


「ん? なになに?」


「帰るの、私達」


「……ん?」


 理解できなかったようでアニアは首を捻る。

 リエラは罪悪感を感じながらもさらに告げる。


「だからね、今、私達はコルッカに帰ろうとしているの」


「……帰……る?」


 確認するように、言葉を飲み込むアニア。

 そこでようやく皆を見渡す。

 丁度乗り込もうとしていた女性陣や、一部男性陣は既に乗り込んだ後だ。

 対面するリフィに見覚えはないがこの土地で知り合った人だろう。丁度別れを惜しむような形だ。


 アニアは気付いた。気付いてしまった。

 そして、直ぐに帰る彼らに付いて行かなければ、自分はまた長い旅路を引き返さなければならないという事実にも気付く。

 涙目になりながらよろよろとネフティアの頭に着地する。


「うぅ、酷い、酷ぃよぉ。私が一体何したのぉ。あんまりだぁっ」


 ネフティアの頭をぺしぺし叩きながら泣きだしたアニア。無表情でソレを見上げたネフティアは、アニアの頭を優しく撫でながら馬車へと乗り込むのだった。

 ほんと、妖精が一人でここまで飛んで来るとか。その努力に驚きだよ。

 よく頑張ったね、アニア。御褒美何も無いけど。


「えーっと、その。じゃあ、またいつか?」


「そ、そうですね。また、いつか会いましょうリフィさん」


 リエラとパルティがリフィと握手をして馬車に乗り込む。

 皆も一声かけながら馬車へと向かって行く。

 しっかし、驚いたなぁ。いや、何がって、その……


「レックス、あーん」


「ちょ、さすがに恥ずかしいからっ。あーん」


 男性側の馬車ではカップルが三つほど成立しており、今なんかもうすんごいです。

 誰だって? んなもん分かりやすいでしょ。

 あ。いや、四つか。デヌとミルクティさんもちょっと怪しいからね。


 ちなみに、見て分かるようにレックスヲルディーナペアはもはやバカップルとなっており、宿屋で作って貰ったお弁当を早速突っついてラブラブラビューンモードに突入している。

 隣に居るフィックサスとランドリックがやさぐれているのがちょっと可哀想です。


 その隣ではロリコーン侯爵に擦り寄るハロイア。こいつはもう積極的過ぎて侯爵の方が困ってる感じだ。いいぞ、やれ! そのまま侯爵をロリコーンから救ってやれ。というかロリコーンが幼女以外とくっついたらどうなるんだろう?

 そしてもう一組が……


「この艶やかな殻、やっぱり素敵です」


 回復魔法使いのキキルさんがうっとりした顔で虹色に輝く甲殻を撫でる。


「や、やめろ人間。その触り方は、あ、やめっ」


 そう、海岸に残してきた魔王、ファラムです。なんかツンデレ男に構ってる女の子って感じのほほえましさがある。なんでこうなったの? ねぇ、何が起こったの?

 僕の知らないところで何があったのぉ!?

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