その英雄の誕生を彼は知りたくなかった
レックス
種族:ニンゲンE クラス:英雄
装備:学生服、タウンソード、アームガード、レザーバトルアーマー、ポーション×3、毒消し草、約束の腕輪、ヒールスクロール
スキル:
スラッシュ:横一文字に切り裂く剣技。
十字斬:十文字に切り裂く剣技。
二連撃:二回連続で切り裂く剣技。
薙ぎ払い:周囲に一閃を叩き込む剣技。スタン効果あり。
至る誓いの剣:遥か昔の約束を果たすために精霊たちの力を借りた剣技。弱点属性自動付与効果あり。
気合い溜め:気合いを入れて次回攻撃力を二倍にする。
例え全てを敵に回しても:ただ一人のために闘う決意をした英雄専用技。
ラ・ギ
常時スキル:
肉体強化Lv8
耐久強化Lv32
剣術Lv9
指揮Lv1
全魔法耐性・微
恐怖耐性・大
痛撃耐性・大
ど根性:HP25%以下で発動。被ダメージを50%軽減。
種族スキル:
精霊視
精霊の友達:精霊と契約した者に付くスキル。精霊の助けが得られやすい。
英雄の背中:背後に守る者がいた場合、不退転になる代わりに全能力に+補正。またくいしばりが連続発動する。
英雄補正:絶体絶命の時、必ず戦友イベントが発生する。
英雄の心得:英雄としての心構えを習得した証。クラスが英雄になる。
うわっ。いつの間にレックスバグ化が進んだの!?
図鑑見たら英雄とか凄いことになってるんだけど!?
あれか、ファラム倒した時攻撃加えたメンバー全員に経験値入っちゃった感じですか?
「なんだ、貴様は?」
「レッ……クス?」
「安心してヲルディーナさん。君は、僕が守る」
なんか凄く男らしくなってないですか? ねぇ、何があったの? 変なもん食べた?
あれか、ネフティアの料理でも食べちゃったのかいレックス君。ねぇ?
「な、何してるのよ。わ、私は、私はあんたを騙したのよ。リフィが魔王なんて嘘、あんたの親切心を利用して、攫って来ようとして、なのにっ」
「……知ってたよ」
力を入れて来たサハギンキングの銛がぐっとレックスに迫る。しかし、直ぐに剣で押し返し拮抗する。互いに敵を見据えたまま、レックスは小さく呟いた。
「……え?」
「知ってたさそのくらい。君がスキュラであることも、リフィさんが酷いことする訳がない事も、女性陣が本気で敵対する気もなかったことも! それでも、俺が君を守りたいと思ったんだ。君の万難、君の辛苦、その全てから守りたいと思った。だから、騙されるくらいで俺は君を見捨てたりしないっ」
「レックス……」
ヲルディーナが涙を流す。彼女の感情は僕には分からないけど、なんとなく感動してる気がする。
「ヲルディーナさん。こいつはもう、君の知ってるお父さんじゃない。俺が、呪縛を解き放つ。だから、君の父さんを、殺す」
「ま、待って、お父さんはっ」
「本当に、コイツなのか、君の父さんは、君が慕っていた人は、こんなゲスな思考回路の魚人なのか!」
サハギンキングの銛を剣で斬り払い、レックスが告げる。
なに君、なんか普通に勇者っぽいんだけど。なんでそんな強い感じになれてるの?
やっぱ初恋相手が目の前にいるからですか!? チクショウ、やっぱりリア充が強くなっていきやがるのかっ。言うんだろ。言っちまうんだろ。ただ愛のために。とか言っちゃうんだろ!
「私は……」
涙目のヲルディーナはサハギンキングを見る。
確かに、容姿は父だ。自分を大切に扱ってくれた。母と笑いあっていたはずの父だ。
だけど、ああ、なぜだろう。こうしてしっかりと見てみれば。
「ちが……う」
何かが違う。些細ではあるが、致命的な何かが違っている。
「お父さんじゃ、お父さんじゃないっ。違うっ」
それは果たして本心からの言葉だったのか? だが、レックスはその言葉で動きだす。
「君の父さんはきっと、この誰か分からない何かに内から喰い殺されたんだ。君を救いたい。君は、何を望む?」
「父さんを……父さんをっ……楽にしてっ」
「心得たっ」
力強く答えたレックスが踏み込む。
驚くサハギンキングに、銀光が煌めいた。
「至る誓いの剣!」
レックスの剣が七色に光り輝く。
幻想的な光が集まり、虹色の剣が振るわれた。
とっさに銛で自身を庇うサハギンキング。しかし、その銛ごとレックスの一撃が切り裂いた。
七色の光を放出しながらサハギンキングが絶叫を迸らせる。
さらに振り切った剣をそのままに、くるりと身体を回転。背面を通して真一文字に追撃。
レックスの二撃目がサハギンキングの胴を薙ぐ。
英雄レックス、爆誕しました。ああ、また一人バグキャラが……




