表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その島があった事実をもう誰も知らない
706/1818

その鬼退治が始まる事を僕ら以外知らない

「ヲルディーナさんっ!!」


 傷だらけのレックス君が走る。

 しかし海に連行されたヲルディーナたちを救う術は彼には無かった。

 波打ち際でチクショウと叫ぶ。


 本当にチクショウだ。サハギン共に連れ去られた。

 僕が居ながら何やってんだ。唯一の誰にも認識されてない存在だろう、なぜ手早く動いてパルティ達を助けられなかった!


「ど、どうしようっ、パルティさんがっ! リフィもっ」


「ルグス、行くぞ! 飛べる俺達だけでも救出に向かう!」


「それが主の望みなら、ある……主?」


 ルグスが確認のために振り向いた。

 主であるアルセの姿を認め、彼はゴクリと生唾を飲み込む。

 生唾あるかどうか知らないけどさ。


「おおおおお――――ッ!!」 


 怒っていた。

 あのアルセが、今、初めて怒りを露わに咆えていた。

 髪飾りにしてあった羽を取り去り羽笛を吹き鳴らす。


 殆ど時間のロスは無かった。

 遠方から高速で近づく空母雉が僕らの頭上を飛び去り、旋回して砂地に着陸する。

 口から飛び出た鳥たちが浜辺に整列し、空兵式の敬礼をアルセに送る。

 その数、およそ5000羽。空軍カモメたちの一糸乱れぬ敬礼を前に、アルセが一声。


 まさに軍団たるカモメたちが一斉に動き空母雉へと収納されて行く。

 アルセも迷うことなく雉の口へと入って行った。

 彼女の動きに素早く反応したのはミーザル。そしてワンバーカイザー。

 ……犬猿雉が揃ってる。

 離れ小島に存在する魚人たち。

 あれ、これ、もしかしてアレなパターンじゃないかな?


 空母雉に乗り遅れないように僕はリエラの手を引いて走る。

 飛び上がろうとしていた空母雉はリエラに気付いて留まり、口を開いた。

 さぁ、入って来なさい。そう言っているように見えます。


「え? あの、鳥の口に入るの!?」


「リエラさん、その鳥の口に入ればヲルディーナさんが連れ去られた場所に行けるのか!」


「うえぇ!? レックスくんも行くの!?」


「行くに決まってるだろ。これ以上彼女が辛い目に合うなんて黙ってみてられるか!」


 そう言うと、迷うことなく空母雉の口へと入り込む。

 続いてランドリックとフィックサスも突撃する。

 一瞬躊躇したリエラも、目を瞑って空母雉へと飛び込んだ。

 のじゃ姫とネフティアも少し遅れて空母雉に突入。僕とルクルが入り込むと同時に口が閉じられた。


 うわ、凄い、これ本当に鳥の体内?

 全天視界モニターみたいに外の景色が見渡せる、本当に空母より空母っぽい戦内だ。

 空軍カモメが物凄い数忙しなく動きまわり、何匹かがオペレーターみたいな恰好で鳴き声を上げている。

 そして中央に一段高くなった椅子のような場所があり、そこに一羽のウミネッコが座っていた。


「みゃー」


 ようこそ。とばかりに告げるウミネッコ。もしかしてこの雉に寄生でもしてるのかな?

 だが、彼は座席から降りると、アルセの元へやって来て座り込む。

 頭を垂れて、翼で座席を指し示す。


 アルセの前に居た空軍カモメたちがざざっと避け、座席への道を開く。

 コクリと頷いたアルセは毅然と歩き出し、そして座席に座る。

 目指すは魚人どもの住まう島。友人を攫った不届きモノに、裁きを!


「お――――ッ!!」


 発進! とばかりにアルセが声を上げる。

 全天視界モニターみたいなのが砂浜から空へと光景を移動させていく。

 無駄にハイテクというか、これ、雉の体内じゃなくてどっかのSF的な戦艦内部だよ!?


 空母雉が舞い上がる。

 艦長はアルセ。空軍カモメたちがアルセの指示に従い動きだす。

 僕らは何が起こったのかまだ理解できずにただただ景色を眺めてました。

 アルセ、海軍用のだけど帽子とかいる?


 瞬く間に陸地を離れ、海を越える空母雉、ふと隣を見れば、デヌに連れられたミルクティとルグスに背負われ、にっちゃんを抱きしめたアメリス。ついでににっくんまで一緒に抱かれている。

 飛行できる二人も空母雉を追って付いて来たらしい。

 さらに、下方では海を駆け抜ける一人の紳士。


 幼女たちが動きだしておいて自分が高みの見物など出来るはずもなかった。

 ロリコーン侯爵はハロイアさんに抱きつかれながら海の上を爆走して、いや違う、アレはサメだ! サメに乗ってやがる!


 仁王立ちするロリコーン侯爵が水上を進んでいる。首筋に絡まっているハロイアは船の帆のようにバタバタと風に揺れているが離れる様子は無い。アレ、首締まってないのかな?

 他のメンバーは浜辺に残ったままのようです。

 まぁ、宿屋にでも戻ってるか。


 ああ、見えてきた。

 アレがサハギンキングの待つ鬼ヶ島って奴か。

 ……あれ? そう言えば……あああっ! しまった、浜辺にファラムさん放置したままだ!?

 皆大丈夫かな!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ