その兎達磨たちの激闘? を僕らは知る気はなかった
というわけで、翌日、僕らは海岸へとやってきた。
女性陣側にはリフィが不安気に中心に立ちつくしており、男性陣に囲まれた場所に居るヲルディーナを見ていた。
ヲルディーナもリフィを目の敵のように睨みつけている。
どうせなら女性陣、水着型防具で闘いません? 僕のカメラ小僧魂的にさ、……そうですか、ダメですか。
普通に冒険者ルックの皆様は、見届け人としてパルティ、ミルクティを中央にして男女に別れ、そのうちの代表が前に出て決闘する見たいな状況になってます。
少し前にやったハロイア戦の拡大版みたいなもんだね。
アレやってたから思いついたってのもあるんだけど、今回は大人数だし、僕らのパーティーだからあの時みたいな大勝は難しいと思う。
「じゃあ、第一試合はにっくんとにっちゃんでいいんですね。双方前へ」
最初の闘いはにっくんとにっちゃん。彼らは二人して闘い合おうみたいな話をしてたので前座として対戦することになった。
もともと闘ってみたかったらしいにっくんたっての頼みをにっちゃんが受け入れた形だ。
胸を借りるつもりで頑張るそうで、結果も分かり切っているので対戦結果には反映されない、本当のエキシビジョンマッチと言う奴だ。
「にっにっにっにっ」
「にっにっにっにっ」
にっくんとにっちゃんが互いに威嚇するように飛び跳ねる。
「にっにっにっにっ」
「にっにっにっにっ」
にっくんとにっちゃんが互いに威嚇するように飛び跳ねる。
「にっにっにっにっ」
「にっにっにっにっ」
にっくんとにっちゃんが……
長いよ!?
謎の飛び跳ね行動は約1分も続き、ようやく満足したのか同時に突撃を開始した。
ぷにょん
……兎達磨同士がぶつかった時何が起こるか。
予想してなかった訳じゃなかった。なんとなくそうなるんじゃないかなっと思ったんだ。
でもソレはあまりにも切ないというか癒されるだけなので考えないようにしていた。
自重に押しつぶされたように二体の軟体生物がクッションをぶつけたみたいにぐにゅりとくっつき、まるで一体の生物みたいに融合、反発力により吹き飛ばされ、兎達磨へと戻る。
うん、なんだこのほほえましい闘いは。
本人たちはやるようになったにっくん。にっちゃん! みたいな感じでどっかの専用人型兵器と白い人型兵器が闘ってるような臨場感を醸し出しているつもりなんだけど、傍から見れば愛玩生物がおしくらまんじゅうしてるだけという、ね。
思わず敵味方問わずほっこり見守ってしまった。
多分殆どの奴があの間に挟まれて見たいと思っただろう。
癒され度は抜群だろうな。にっちゃんが本気出しさえしなければ。
ぽこんっ、ぷにょん、ぷにゅん、ふにょん
二体の兎達磨が互いにぶつかり合う。
手に汗握る闘いのはずなんだけど、ああ、ほっこりしてしまう。
いいなこれ、ずっと見てたくなる。
最後には身体を寄せ合い直接対決。全身が平べったくなるほどに相手に攻め寄り、ヤバい、あの間に入ったら気持ち良さそう。左右から毛玉攻撃とか、モフり放題モフられ放題じゃないか!?
再び距離を取ったにっくんとにっちゃんは、どうやら最終局面に入るらしい。
にっにと鳴くにっくんが周囲に遅延魔法を展開し始める。
来るかにっくん。とばかりにつぶらな瞳を細めるにっちゃん。ごめん、嘘吐いた。つぶらな瞳が細まりません。つぶら過ぎるよにっちゃう共。
ステータスブースト、高速突破、大地弾の外装、火炎弾と水弾による爆発によるロケットダッシュ、風魔法による自身への衝撃吸収。
今できるにっくんの技術全てを突っ込んだ突撃が、今、放たれた。
それはにっちゃうの突撃にしてはあまりにも強力だった。
さすがににっちゃんの突撃に比べると雲泥の差だが、並みの魔物なら一撃昏倒、下手したらそのまま死亡する程の一撃だった。
にっちゃんもさすがに驚き目を見開……ごめん嘘付いた。つぶらな瞳は見開かれません。つぶら過ぎるよにっちゃう共。
にっちゃんは驚きはしたものの、たわんで一瞬、真上に思い切り突撃した。
特攻をしかけたにっくんの一撃が空を切る。
そんなっ!? と驚くにっくんの真上から降りて来たにっちゃんがにっくんを押し潰す。に゛っとにっくんの断末魔が聞こえた。いや、死んでないけどさ。
今ので勝負あり、かな。
地面に潰されたにっくんがふくよかな体を横たわらせている。その横にぴょんととび下りたにっちゃんは寝転がるにっくんに近づきにっにと鳴いている。
どうやらよくやったとか。成長したなとか褒めているらしい。
にっくんの方は悔しげだが、自分の全力を褒められて少し嬉しそうにしている。
うん、実にほほえましい闘いでした。
さぁて、心機一転決闘観戦と行きますか次は……ハロイアさんとロリコーン侯爵か。




