その初恋が実る気配が無いのを彼は知らない
「ラッキーリング? ふーん」
自分の腕に嵌ったリングを見回してヲルディーナは首を捻る。
多分、なぜこれを貰ってしまったのか理解していない顔だ。
まぁ、そうだろうね。少年の淡い恋心は理解できないだろうね。
分かりやすくはあるんだけど、ニンゲンには興味無さそうというか、利用するだけのつもりだからなぁヲルディーナ。
彼女は何度か首を捻りながら洞窟の中へと入って行く。
多分何度も腕輪を渡された理由を考えながらも理解が出来なかったんだろう。
オツムの乙女度は低そうだな。顔は綺麗なのに残念娘と見た。
「……レックスさん、あの人好きなんですかね?」
「多分そうなんでしょう。あ、でも恋心かどうかはわからないなぁ」
モスリーンとミルクティがどうでもいいといった顔で話だす。他人のコイバナは女の子にとって好物なのはどこも一緒か。
盛り上がりだした女性陣。ヲルディーナが不審に思って洞窟から出て来る前に僕らは宿へ向う事にした。
「レックスさん、あの状態だとヲルディーナさんが悪いと言っても聞きそうにないですね」
「そうね。レックスに釣られて他の男性陣も向こう側でしょ、パルティの提案もあながち間違いとは言い難いわね。どうせなら思い切りぶつからせてしまうのも確かにいいわ。それで私達は調停役+ヲルディーナが本性現した時の撃退役」
「ついでに魚人の横槍もあるかもですからその辺りの対応もですね」
「なかなか面白そうじゃない。いいわ、あんたの思惑に乗ってあげる」
私じゃないんだけどなぁ。と小さく呟くパルティ。僕に助けを求められても困ります。
宿に戻った後は女子部屋に向って皆と合流。
皆でワイワイと騒ぎながらリフィを構いまくっていた。
一応本日は僕も女子部屋に居る事許可されました。
ミーザルと一緒に端っこの方で体育座りしてます。
あ、ミーザルは縄で両腕を背中に縛られ正座させられてるんで体育座りしてるのは僕だけだからね。
ちなみに、女性に対して変な事少しでもしたらミーザルと同じ体勢にするそうです。リエラさんが座った目で教えて下さいました。
でも、CG激写するくらいは問題無いよね。うへへへへ。
あ、コラミーザル、体勢崩すな、視界に頭が入ってくるじゃないか、激写の邪魔だよ!
早朝。揺すられる僕はゆっくりと意識を覚醒させる。
誰だ揺するの……って、リフィ?
アルセも面白がって一緒に揺すってるけど、僕をメインで揺すってるのはリフィのようです。
零れそうな胸が目の前で揺れてるのはしっかり激写しておきました。
起き上がってマシュマロに包まれようとするが、丁度タイミング良くリフィが身体を引く。
すかっと顔面が空を切った。
チクショウ、なぜ僕にはラッキースケベがついてないんだっ!?
「あ、あの、起きられましたか?」
アルセを引き寄せ顔を使って頷いて見せる。
「その、皆様が起きる前に、貴方にお礼を言いたくて、ちょっと、こちらに来ていただけますか?」
僕はアルセを抱えあげてリフィの後に続く。
部屋から出て少し歩いた廊下で、リフィは僕に振り返った。
「あなたと出会えたおかげで皆さんに受け入れてもらえました。あのままだと、私はずっと引き籠もったまま。どうすればいいか途方に暮れるばかりでした。でも、少し前進できそうなきがします。サハギンキングはきっと、徐々にですが私の捜索範囲を狭めているはず、このまま黙っていればそう遠くない未来に捕まっていたでしょう」
両手を胸元で組んで、リフィは僕に礼をする。
「ありがとうございます。ただ、これ以上迷惑を掛ける訳にはいきません。きっとこのままここに居れば私とヲルディーナの間で皆さんが闘い合う事になってしまいます」
まぁ、僕がそうなるように仕組んでいるんだけどね。多分最初の方でヲルディーナとリフィが敵対関係だと男性陣にもリフィを紹介すればもっと楽なことになっていたと思う。
ただ、レックスくんの恋心がどう作用するかは分からないけど。
「皆さんに一緒に来ないかって言われて、私、凄く嬉しかった。でも、海の問題は海の生物だけで解決すべき問題なんです。ファラム様を訪ねてみることにします。魔王二体が手を組めば、いかなサハギンキングと言ってもきっと打倒出来るはずです」
お世話になりました。そう告げてさっさと去ろうとするリフィを、アルセが触手を掴んで繋ぎとめる。
勝手に決めて勝手に去るのは勝手だよ。うん、勝手なんだ。
でもさ、僕らがそれを呆然と見送るのは違うよね。
僕らも好き勝手するから。
皆はリフィを助けることを選んでいて、アルセが彼女を引きとめた。
ならば僕がやるべきことはただ一つ。アルセのやりたいことを実現させることだ。
さぁ、アルセ、君は、彼女をどうしたい? このままファラムとかいう魔王のもとへ行かせてしまっていいわけないよね?




