その襲撃者の名前を彼らは知らない
結局、神父さんの年齢についてはうやむやにされて僕らは教会を後にしていた。
アルセの満面の笑みを使ってすら口を割らなかったということは何かあるのだろうけど、まぁあの神父さんの秘密なんて知る必要性を感じないから良いよね?
「ネッテさん、これからどうします?」
「そうねぇ。折角女の子三人なんだし、ちょっと甘いものでも食べに行きましょうか」
「あ、いいですね。アルセも行く?」
リエラの言葉を理解できずに首を捻るアルセ。
ああもう、アルセまた指しゃぶってる。ダメだよアルセ、指って結構バイキンいるから病気になっちゃうよっ。
満面の笑み浮かべてもダメっ。
結局、リエラに片手を持たれたアルセはどこに行くかすら分かっていないのに楽しそうに歩きだした。
ネッテは少し考えつつも、行き先は決まったらしく歩みに雑念が無い。
そんなネッテと一緒に歩いていたリエラ。その背後からそろぉっと近寄って来る一人の男。
なんだこいつ?
なんとなく気になったので僕はリエラの前に行って観察する。
すると、魔銃とアルセソードを奪い取った男は一目散に駆け出した。
あっとリエラが気付くがもう遅い。その時には男はリエラからかなり離れた前方で……盛大にずっこけた。
ぎゃっと汚い悲鳴を上げて地面に顔面から追突する。
当然、僕が足ひっかけました。
慌てて駆け付けてくるネッテとリエラ。
なんてことをしてくれるとばかりに立ちあがろうとした男を踏みつける。
また汚い悲鳴が……というか、これスリだよね?
「やってくれたわねお間抜けさん」
ネッテが男の背中を踏みつけ立ち上がれなくしている間にリエラがアルセソードを拾い上げる。
そして、野放しになっていたアルセ様が魔銃を拾い上げて嬉々とした表情で男の側にしゃがみ込んで側頭部に一発。ガチンっ。と空砲が発射された。
その一撃で、男は顔を青くする。
もし、魔銃の中に魔弾が入っていれば、男は確実に死んでいたのである。
まぁ、回復魔法が入ってれば回復するだけだけどさ、銃口向けられて平気な奴はいないよね。
「あら、残念。弾込め忘れていたわね」
「わ、悪かった。もうしねェよ!」
「はいはい。よく言う台詞をありがとう。反省する気ゼロみたいだし、しょっ引くとしましょうか」
ネッテはそう言いながらも魔法を紡ぐ。
「ラ・グ」
一瞬、放電が起こった。
どうやら今のが雷撃魔法と言う奴らしい。
ネッテっていろんな魔法使えるよね。一体どれだけの魔法使えるんだろう?
あ、でもこの盗賊のことどうするのかな?
と思っていたけど杞憂でした。
ネッテが足を引き摺りながら近くの衛兵詰所へと連れて行ったのである。
うん、後頭部何度も撃ちつけていたけど、大丈夫かね?
まぁ相手は盗人だし別にいいか。
リエラも当然といった顔で見つめてたし。
アルセはごんごんとリズムのように鳴り響く後頭部と地面の接着音に楽しげに笑ってたし。うん、僕は何も見なかった。ここに盗人は居なかったんだよ。
衛兵さんに引き渡したネッテたちは再度甘味処へ向けて歩きだす。
実質は四人なんだけど、リエラは何も言って来ないし、僕も一緒でいいんだよね?
女性同士の遊びって見るの初めてだけど、どんなものなのかな?
男同士だとゲーセン行ったり、野球やサッカーする訳だけど、こっちの世界ではそう言うのなさそうだし、男性は酒場で飲んだくれっていうのが多いみたいなんだよね。
そのぶん女性陣の行く所は謎だったりする。
看板に謎の文字が書かれているらしいお店に入る。
らしいというのは僕が見るとなぜか英語でケーキショップと見えるからだったりする。
うん、これじゃこっちの文字勉強するとか無理だね。
お店の中は普通に木造喫茶店といった感じだった。
給仕さんは私服のお兄さんやお姉さんたちで、制服といった物はないようだ。
羊皮紙に書かれた商品を見ながらネッテとリエラがどれにしようかときゃいきゃい話しだす。
えーっと……何コレ?
ショートケーキとかは存在しなかった。
メインはパンケーキ。他はクラッシュナッツとかフルーツケーキとか。多分パンケーキにトッピングしたモノばっかりだ。
どうもケーキ関連は存在してないらしい。むぅ。美味しいアレが無くて何がケーキショップなんだ!
パンが無ければパンケーキのノリか。ケーキが無ければパンケーキでいいじゃないとかいいたいのか。ええい。せめてプリンを。僕はプリンを所望します!!
結局、アルセは木の実のパンケーキを選択させておいた。
下手なものよりこういうのの方が良いだろうと思ったからだ。
うう。時間があれば作るのに。今度リエラに材料買ってもらって作ってみようかな。卵さえあれば針で刺してぐりぐりした後遠心力で回して茹でればプリンっぽくなるみたいだし。
デザートとして作るのもアリだ。え? プリン? 僕が創り方知ってるわけないでしょ。
そもそもこの近辺砂糖無いんだよね。




