その男達の行動を女たちは知らない
「うわぁ、アルセがまた謎進化を……」
僕の横から図鑑を覗いたパルティが呆れた顔をする。
多分、海水を生成するマリン・ウォーターだっけ。これを覚えたかったんだろうねアルセは。
ついでに海水とか塩への耐性とか、タイダルウェイブとか覚えたみたいだけど。
「もしかして、リフィさんのためですかね?」
おそらくそうだろうね。
アルセって結構他人のために行動するようになりだしたみたいだし。
ちょっと暴走気味のところもあるけど、それは子供によくあることだから注意して見てれば大丈夫だろう。
「るーっ!」
「ギョォッ!?」
「へ?」
謎の悲鳴を聞いて図鑑から顔を上げた僕とパルティ。
すると目の前では丁度海から上がって来た魚人にルクルのカレーがヒットしたところだった。
ぐわぁぁぁぁっ。とのたうち回りながら海へと逃げる魚人。先制攻撃のせいで何もすることできずに海へと還って行った。
「「「「「「「「「「ギョ!」」」」」」」」」」」
ザバザバザバッと海から魚人たちが上がってくる。
想定外の現象にパルティはただただ呆然と見入っていた。
口が開くが悲鳴が出て来ない。
僕は咄嗟にアルセを抱えあげてパルティの手を引く。
宿屋に逃げようとしたがパルティが砂に足を取られてこけた。
逃走失敗だ。思わず舌打ちしながらパルティの前に躍り出る。
アルセ、先に逃げて、ルクル、アルセを連れてって!
後を追って来たルクルにアルセを手渡し、僕はポシェットから名刀桜吹雪を引き抜く。
パルティを救うため魚人の群れに相対するしかない。
そう覚悟した僕だったが、頭を掻きながら魚人の一人がぺこりと頭を下げた。
「すまヌ。驚かすつもりはナカッタ」
「ひぃっ!? 喋った!?」
あ、そうか。魚人は亜人枠だ。それってつまり意思疎通可能ってことだ。
スキュラのヲンディーヌ周辺に居た魚人の言葉が意味不明だったから意思疎通不可能だと思ってたけど、違うのか。
「すまぬニンゲン。我々は姫捜索のため夜間や人気のない時間この周辺を探している。人型の海月を見てはいないか。リフィ様のこと、間違ってスロームノワールとして討たれていまいか心配なのだが、それよりも早く居場所を確認せねばならんのダ」
こいつもリフィ繋がりか。
「リフィ……?」
知ってる名前が出てきたせいで、思わず呟くパルティ。
僕は剣をしまって彼女を立ち上がらせると、魚人さんも武器を背後の魚人に渡して話し合いに着く。
「知っておられますか? ならばリフィ様にお告げください。我等リヴァイアサン特攻騎士団はリフィ様の味方であります。この街周辺にスキュラ族の姫が上陸しているとの情報を入手致しました。安全のためにも海にお戻りくださいと。母君ももうヒトデとウニどちらが美味いかなどで口喧嘩はしないと言っておりましたし。ああ、ただリフィ様は虚げ……あっ」
不意に、魚人達が焦った顔になっていた。
なんだ? と思った僕らの背後から、ナーナーと鳴き声が聞こえて来る。
うん、知ってる。こいつらそう言えばこの海岸に居たね。
餌が自分からやって来た。
オッサットたちが目を光らせゆっくりと近づいていたことに気付いた魚人は、慌てて海へと逃げ出した。
僕らと話していた魚人も他の魚人達を掻きわけるようにして率先して海に飛び込む。
あー。逃げ遅れた魚人が数体群がられてる。
パルティが地獄絵図を見て吐きそうになってたので僕は彼女をお姫様抱っこで抱えあげて海岸を脱走することにした。
オッサットの姿が見えなくなった頃、パルティを降ろして民家の軒先で休ませる。
気持ち悪そうな青い顔でぐったりしたパルティは、なんとか僕にお礼を言って民家の壁によりかかる。
いやぁ、ホントこの街はブラクラフラグが一杯だよ。
「はぁ。なんか見ちゃいけない光景を見せられた気分」
「るー」
ルクルも辟易してる様子で鳴く。次の瞬間、顔を上げてあれ? っと首を傾げた。
どうしたのルクル?
あ、あれはレックス君達じゃんか。
レックスに案内されるようにデヌやらルグスなどなど、男性陣が揃ってぞろぞろ行列を作っていた。
どこに行くんだろうか?
あっちは海岸方面だよ。まさかあの地獄に飛び込む気か?
「今は行かない方がいいって伝えなきゃ」
まだ気分が悪いのかふらつきながらパルティが向おうとするので、彼女を支えながら歩き出す。
ルクルさん、今パルティ具合悪いから、そんな親の仇みたいな顔してカレーライス投擲用意とかしないであげて。
「あれ? 海岸……じゃない?」
男達はレックス君を戦闘にして海岸への道を横切っていく。
向うのは海岸を越えた先にある岩場のようだ。
ヲルディーナのいるところに行くのかな。
……ん? えっと、リフィは女性陣が匿ってて、その敵対者っぽいヲルディーナはこれから男性陣と出会うと。
あれあれ? なんかややこしくなってきた気がするぞ?
でもちょっと面白そうな予感です。




