表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その街の影の守り手を彼らは知らない
672/1818

その魔王の出現を彼らは知りたくなかった

 眼福です。眼福であります!

 リエラ達が服屋で水着型防具を買うのを見ながら、僕はアルセと踊っていた。

 まさか本当に海で海水浴出来るとは思わなかった。スロームノワール退治したら海で遊べるんだって。何その理想郷!


 アルセ達と水着を選び、喜び勇んで海岸へとやってくる。

 そして僕らは呆然とした。

 海を、海岸を埋め尽くすほどのクラゲの群れ。


 もはやそれが海と言われても分からない程に、人型大の巨大クラゲが海岸を埋め尽くしている。

 そして、これを冒険者たちが嬉々とした表情で狩りまくっていた。

 ルグスが宙を浮いていた御蔭でメンバーの居る場所がすぐわかったので僕らは頭一つ飛び出たルグスを目的地にして彼らのもとへと向う。


「遅いぞリエラ。もう100匹は撃退したぞ?」


 デヌが声を掛けながら暗黒魔法弾でスロームノワールを撃破する。

 スロームノワールはあまりに大量に出現しているが、どうやら地上に居るニンゲンに対する攻撃手段を持たないらしい。剣で突き刺されたり、槍で突かれたり。海岸のそこかしこに遺体というか陸に打ち上げられたクラゲの死骸が積み上がっている。


 この一角の死骸は僕らのパーティーがやっつけたモノらしい。

 その横ではハロイアたちが倒した死骸の山と、レックス君達が積みあげた山がある。

 僕らの分はデヌたち冒険者組と山分けにするらしい。

 人数が多いのだからしっかり狩れとデヌに怒られ、慌ててリエラとパルティが動き出す。


「いいかリエラ、パルティ、あと特にアルセ! こいつらは近づきすぎなければ攻撃されることはない。ただし、絶対に海に入るな。こいつらが片付くまでは絶対にだ。刺されたらそこに買っておいたスローム中和剤を使え。刺された場所にかければいいらしい」


 と、ポーション瓶に黄色い液体が入った物を指差すデヌ。結構な数買っているようで、これも一角に山のように積み上がっている。

 ワンバーちゃんとアメリスが監視という名のお留守番をしていらっしゃった。どっかのリゾート地にありそうな寝そべられる椅子を瓶の山直ぐ横に設置して、アメリスが寝そべっている。当然ながらその周囲でにっちゃんが目を光らせている。


 どさくさまぎれで中和剤やスロームノワールの死骸を盗もうとしたらにっちゃんの餌食というわけらしい。まだ犠牲者はいないけど合掌は先にしておこう。

 というか、アレ、中和剤っていうより、お酢なんじゃ……


 リエラはいつものように剣を使い、雷撃を纏わせたライジング・アッパーでスロームノワールを一匹真上に弾き上げる。

 しかし攻撃の効きは悪そうだ。


「リエラさん、そいつら雷属性に耐性持ってるから普通に剣で斬った方がダメージ大きいわよ」


 ラ・ギライア弾を打ち込み対象の周囲を火の海にしているミルクティの言葉でリエラは直ぐに通常攻撃のアッパースイングに切り替える。

 やっぱり敵にも耐性持ちいるんだなぁ。

 ということは弱点属性もあるんじゃないか? クラゲに効くのってなんだっけ?


 パルティはこの機にあまり熟練度の上がっていない武器を使っている。

 斧を使ってみたり、細剣で突き刺してみたりといろいろと試しているようだ。

 敵は大量なので様々な武器をいくらでも試せる。


 アルセもお手伝いだ。

 近くに置かれていた銛を使ってプスッとクラゲを突き刺し抱えあげ、とったどー。みたいな感じで走りまわったり、花部分の口でぱくんちょして、まずっとばかりにぺっと吐き出してみたり、砂地に落下したスロームノワールに刺されてしびびびっとしてみたり。

 って、アルセぇぇぇぇ!?


「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」


 ステッキで無数のスロームノワールを突き殺しては背後の山へとポイ捨てしていたロリコーン侯爵も気付いて慌ててダッシュ。即座にアルセを陸に上がったクラゲから確保してクラゲ野郎を突き殺す。


「きゃあぁっ!? アルセ!? 中和剤中和剤っ、きゃあぁ!?」


 慌てたリエラが中和剤のところに駆けていって適当に取ったその瞬間、中和剤の山が崩れてリエラが遭難した。

 雪崩に巻き込まれて瓶の群れに消えたリエラを慌てて掻きだし引っ張り出して、アルセの刺された場所に中和剤をぶちまける。プーンと臭うお酢の臭い。うん、お酢だ。間違いなくお酢です。


 そして僕らが騒いでいる間に、海側でも騒ぎが起こっていた。

 なんか煩いなと思ってアルセの頭を撫でながら海を見れば、そこには海面から盛り上がった巨大な、巨大なタコの化け物が!!


「ら、ランドリ――――ック!!?」


 何アレ、すっげぇデカい。マッコウクジラよりデカいんじゃないか!?

 そんなタコの魔物がデヌを触手で掴みあげ、レックスくんを掴みあげ、ランドリックくんを今、まさに掴みあげ、パンツを取っ払う。

 うわぁ、そこなんで女性じゃないの?


 うぎゃあ。と悲鳴を上げるランドリックくん。残念ながらお色気タイムには程遠い状況だった。

 タコの触手に囚われる男達とか、誰得?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ