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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その街の影の守り手を彼らは知らない
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その絶体絶命の危機を逃れる術を彼は知らない

「るー!」

「おぉー!」


 聞き覚えのある声が聞こえて僕の意識は覚醒した。

 ふぁっ? と意識を取り戻して起き上がる。

 気が付けば、ルクルの頭が光が漏れる床側からぬぅっと現れる。


 ああ、そっか、ここ屋根裏部屋だっけ。

 びくんと跳ね起きた海月娘が怯えた顔でルクルを見ていたので、安心するように頭を撫でてやる。

 うん、ぬめぬめですね。ちょっと手洗って来ていいですか?


「ルクルよく見つけたわね。こんな所に屋根裏部屋なんてあったんだ」


「リエラさん、気を付けてください。光ありますか?」


 光という言葉に反応し、アルセが発光する。

 アルセさん眩しい。ぺっかーっと光る笑顔のアルセ。

 意味が分からずあたふたする海月娘は、何を思ったのか自身を発光させる。

 ここに発光娘が二人、良く分からないけど対抗するように相手より眩しく発光し始めてます。

 何の対抗?


「うわ、アルセ光ってる。って、誰アレ?」


「パルティさん、武器は構えないで、なんだか怯えてる」


 咄嗟に警戒態勢に移ったパルティを制止、リエラがこちらにやってくる。


「あの、言葉は分かりますか?」


「ひゃ、ひゃいっ」


 弾かれたように声をだす海月娘。発光が収まり怯えた瞳で僕に抱きつく。

 あの、左半身が物凄くぬめっとべたっとしてるんですけど、胸が当ってこれはこれで役得な気も……


「るー……」


 うわっ、ちょ、半眼でカレーライス用意しないでルクルさん。ソレどうする気! パイ投げ状態みたいに構えないで!?


「あ、こらルクル、この子が怯えるからソレしまって」


「るっ!?」


 え? でもっ。みたいな反論の声を出すルクルだが、リエラは首を振るって彼女を止める。

 リエラはゆっくりと海月姫に近づくと、手を差し伸べる。


「初めまして、ここに多分透明な人がいると思うんだけど、そいつを探しに来たリエラっていいます」


 ニコリと微笑むリエラに、怯えたままだった海月姫は、しばらく、動くことなく待ち望むリエラに視線を向け、恐る恐る触手の一つを彼女の手に近づけて行く。

 ちょんっと触れて、引っ込める、ゆっくりと触れ、ごくりと喉を鳴らし、触手を引っ込めたあとに自分の手でリエラの手に触れた。


「は、初めまして、リフィといいます。魚人族です」


「へぇ、魚人族って噂は聞いたことあったけど初めて見たわ」


「パルティさんは知ってるんですか魚人族」


「ええ。海に住む人と意思疎通可能な魔物に近い種族よ。男性は顔が魚なのが多いけど女性型は下半身が魚介生物っていうのが多いかな? 彼女は……多分海月型ね」


 物珍しそうに少女を見ながら、あっと思い出したようにパルティがお辞儀をする。

 どうやら自分が自己紹介してなかったことを思い出したようだ。

 パルティが自己紹介して、リエラがアルセとルクルを紹介する。


 まだ怯えた様子のリフィに、何故こんな場所に居たのか尋ねることにしたらしい。

 よかった、僕がここに居る理由とか問いただされなくて。

 しかし、リフィちゃんだっけか。かなり訳ありっぽいなぁ。




「なるほどねぇ、海の中でも覇権争いってあるのねぇ」


「気の良いこの家の人たちに匿って貰ってたのね。悪かったわね私達のせいで。用事済ませたらすぐに出て行くから」


「あ、でもリエラさん。折角なんだし彼女をコルッカに連れていったらどうですか? 向こうならまず海からの刺客に怯える必要無いですよ?」


 リフィは海の中の覇権争いに巻き込まれ、追われる身となっているらしい。

 なんとか地上に逃げ、気の良い宿屋のニンゲンに拾われたことで安全は確保できたものの、下手に外に出ると人面猫に襲われる危険があるし、水の無い場所だと少々生き辛い。


「それはいいけど、しばらくこっちに留まってスロームノワール狩りでしょ。あれ? あれってリフィちゃんの眷族だったりするの?」


「スロームノワールですか? いえ、あれはただの魔物化したクラゲです。大量発生すると私達も狩ってますよ。多過ぎると赤潮やら青潮やら黄緑潮になって多くの生物が死滅してしまいますから」


 黄緑潮ってなんだろう。

 リエラ達はリフィをひとまずここに残し、討伐に向う事にしたらしい。

 リフィには討伐終了後にリエラの居る大部屋に来てもらう事をお願いし、僕らはリフィのいる屋根裏部屋を後にした。


「さて、それじゃあそろそろ言い訳を聞きましょうか透明人間さん?」


 ルクルさんに拘束という名の抱き付きをされた僕に逃げ場はなかった。

 もう放さないとキツい抱擁を行うルクルさんがいるので僕がどこにいるかなどまるわかりです。

 腰に手を当て怒り顔のパルティさんと、僕の目の前に中腰になって怖い顔をしているリエラさん。

 あの、怒ってますか? 怒ってますよね。あは、あはは。


「確かに大部屋から閉め出したのは悪いとは思ってますよ? でも、なんで別の女の子の側にいるのかなぁ? すっごく心配したんですよっ」


 だ、誰か助け……あの、お手柔らかにお願いします。

 僕が逃れられる術など、ある訳がなかった……

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