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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その街の影の守り手を彼らは知らない
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AE(アナザー・エピソード)・そのリエラが探す誰かを彼らは知らない

 いない。

 朝起きて、いつも通り顔を洗い朝食を取ったリエラは、昨日閉めだした透明人間に朝食を分けるべく一部持ち帰り、ふと気付いた。

 アルセも少し不安げに椅子の上で足を揺らしている。


 ルクルなど如実に焦った顔をしている。

 行ったり来たりしている様子から、彼がどこに居るのか見当付いていない様子だ。

 何故彼女が分からないのかはリエラには分からなかったけど、彼が居ないという事だけは直ぐにわかった。


「リエラさん、あの、ルクルさんが物凄く不安げにしてるんですけど?」


「あ、パルティ。えっと……どうも透明人間さんが居ないみたいで」


「ええ!? いつからですか!? 昨日はちゃんとこの街まで来ましたよね一緒に」


「ええ。昨日の夜私達の部屋で寝ようとしてたから閉めだしたんだけど……朝起きたら居ないみたい」


 二人して顔を見合わせる。

 他のメンバーは既に移動の用意を行っている。

 これからすぐにでもスロームノワール退治に向えるようだ。


「リエラ、パルティ、まだ用意できていないのか?」


「デヌさん。あーその、私達は後から合流するので皆さん先にどうぞ」


「いや、しかしだな……」


「デヌさん、お願いします。私達はもうしばらく掛かりますから。ルクルとアルセもまだ用意が済んででないみたいですし、彼女たちと一緒に行きますから」


 デヌに皆の統率を任せ、リエラとパルティは宿屋捜索を開始する。

 ルクルが外に出ないことから、おそらくまだこの宿に居るはずなのだ。

 アルセとパルティ、リエラとルクルで手分けして一部屋一部屋回って行く。

 さすがに人の居る部屋まで押しいる気にはならなかったけれど、脳内メモには書き込んでいく。最悪、どこかの部屋に監禁されている可能性すらあるのだ。


 ただ、ルクルはしきりに上を見上げながら戸惑っている様子から、この宿の上階に存在するのではないかと思われる。

 しかし……


「いない……」


 元々姿が見えないのでどこにいるか探すとなると彼を見付けられるルクル無しでは捜査は難しい。

 しかしだ。全ての部屋を見回ったというのにルクルに反応が見られないというのはどういうことだろうか? 相変わらず最上階でも上を見上げて右往左往するルクルを見ながら、合流したリエラとパルティは顔を見合わせる。


「どこに行ったんですかね?」


「私のせいだ。私が昨日押しだしたりしなかったら……どうしよう。透明だから何かの拍子で怪我したら誰も助けてくれないのに……」


 そう、彼は誰にも姿が見えない。声が聞こえない。

 致命的な傷を負って路頭に倒れていても、誰も素通りするばかりで助けてはくれないのだ。

 一人寂しく死にそうになっている透明人間の姿を脳裏に描き、リエラに不安が押し寄せる。


 不安感に押しつぶされ、涙を流し始めたリエラ。彼女の不安感を必死に無くそうと背後から彼女を包むようにパルティが慰める。

 一歩間違えば、透明人間を率先して追いだしていたのは自分なのだから、パルティだって不安に押しつぶされそうだ。

 自分のせいで仲の良い知り合いが死んでいたなんてことになったら、きっと彼女たちはどちらも心に深い傷を負うだろう。


「どうしよう。私、私、あの人のこと深く考えず酷いこと……」


「落ち着いてリエラさん。大丈夫だから。あの人だもの、きっと何でもない顔でひょっこり戻ってくるって」


「でも、でもっ、あの人が死にかけたことあるんだよっ! 私もまだ確証してなかったとき、アンブロシアツリーと闘って、私を庇ってくれて……蔦の直撃で……どうしようっ! またあの時見たいなの私嫌だよっ」


 パルティに食ってかかるように叫ぶリエラ。

 パルティが一緒に行動するようになってからはそこまで危険な時はなかった。

 沢山の仲間が居てくれたから彼が身体を張るようなことは必要がなかったのだ。


 でも、リエラは知っている。

 リエラだけは知っている。

 誰も知らない状況で、リエラを命がけで守ってくれた彼の行動を。

 アルセが必死に揺すっていたあの光景を。


 嫌だった。

 自分の知らない場所であの人が死んでしまうなど、そんな事になれば彼女は自分を許せない。

 まだそうと決まった訳ではないのだが、想像してしまうと涙が溢れて止まらない。

 自分は何という事をしてしまったのか、後悔が押し寄せ胃が痛い。


 ガコン

「るっ!?」


「パルティさん、私、謝らなきゃ。あの人が無事だったら、もう一人にしないって、謝らなきゃ」


「リエラさん。うん。そうだね。私も一緒に謝ってあげるよ。あの人が一人寂しくならないように、私達が一緒にいよう? ね?」


「る――――っ!!」

「お――――っ!!」


 慰め合うリエラとパルティの背後で、残りの二人がどたどたと動き出す。

 涙目で二人、顔を見合わせ、ゆっくりと後ろを見る。

 いつの間にか天井の一部が開かれ縄梯子が降りていた。

 ソレを掴んだルクルとアルセが物凄い速度で昇っている。


「隠し部屋?」


「「もしかしてっ!」」


 二人同時に涙を拭って走り寄る。

 頷き合ってリエラから、縄梯子を昇って行くのだった。

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