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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第八部 第一話 そのストーカーをストーカーしていた少女を僕は知りたくなかった
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その決着が付かないことを彼女たちは知りたくなかった

 モスリーン・ラーシェントは仲間内では頭一つ飛び出ない引っ込み思案の少女だった。

 いつも仲間の背中に隠れ、話に加わるのも相槌くらい。

 自分から何かを提案するようなことは今まで一度もない。


 でも、そんな自分でも仲間にしてくれたハロイアたちに報いようと、必死に頑張った。回復役が居ないと聞けば回復魔法を覚え、ハロイアが風邪引いたと聞けば攻撃魔法の代役になるため魔法を覚え、皆を鼓舞するために補助魔法を覚え、力が強かったので大ぶりのモーニングスターを持って皆のフォローに勤めていた。


 だから、彼女自身気付いていなかった。たぶん彼女がこのパーティーの要だってことに。

 僕もそんな話をハロイアが得意げに語っているのを聞きながら恥ずかしそうに顔を赤らめるモスリーンを見ていただけなんだけど、彼女、どうやら友達の役に立つために努力するガンバリ屋らしい。多分、彼女のガンバリが彼女たちを支えていたんだろうね。ちょっと泣きそうです。

 頑張る娘っていいよね。僕も応援したくなります。

 あ、アルセも応援するの? でも今は敵だよ?


 モスリーンと対決するのはまだまだ死なぬわ。

 殿さまみたいな容姿のそれは、鉄扇で自身を扇ぎながら決闘場へと大股で入る。

 先生の開始の合図で走りだすモスリーン。


「行け、モスリー!」

「出会え出会えぃ!」


 ハロイアの声に重なるようにまだまだ死なぬわが部下を召喚する。

 殿中でござるたちが多数出現……違う、殿中でござるじゃないぞ!

 十手を持った偽人たちは、逆の手に提灯みたいなものを持っている。


  うっかり御用だ

 種族:偽人 クラス:丁髷族

 装備:十手、和服、提灯アックス

 種族スキル:

  威嚇

  御用だ御用だ:仲間を呼びます。

  逃がして堪るか:提灯アックスを投げつけます。火炎瓶と同様の効果あり。

  武器破壊:十手で受け止めた刀などを破壊します。

  丁髷砲:頭の上にある筒で砲撃。

  武士は食わねど高楊枝:戦闘を行っていない時、立っているだけでHP・MP・TPが徐々に回復。

  うっかり:30%の確率でうっかり行動を行う。

 ドロップアイテム・十手・和服・提灯アックス・丁髷砲


 また新しい偽人が、しかも六体の出現したぞ。

 その一体が「逃がして堪るか」と提灯を投げつける。

 ……目の前に居たうっかり御用だに。


「ぎゃあああああああああああああ!?」


 そして斧を喰らったうっかり御用だが燃え上がった。

 他の奴らはこの状況に驚き「御用だ!? 御用だ!?」と喧しいくらいに叫び出す。

 一瞬で戦場が意味不明の混沌と化した。

 攻撃しようとしたモスリーンも、増えた敵に反論しようとしたハロイアもただただ呆然と対岸の火事を眺める。


 燃え盛る炎が伝播するように他のうっかり御用だたちを焼いて行く。

 うっかりすぎだよお前ら……

 そのうちの一匹がうっかり丁髷砲をまだまだ死なぬわに打ち込んだ。


 無防備で狙撃されたまだまだ死なぬわが一撃喰らって倒れる。

 え? 死んだ?

 と思わず唖然としたモスリーン。次の瞬間まだまだ死なぬわがムクリと起き上がった。


「まだまだ死なぬわっ」


「ふっ。お前なら立つと分かっていたさ」


 だからアメリスさんは何しに来たの。いちいち台詞言いながら顔変えないで。

 そのシリアス感止めて。アメリスさんっぽくないから。

 釣られるようににっちゃんも真剣そうな表情しなくていいから。君がカッコ付けても可愛いだけだから。つぶらな瞳がちょっと凛々しくなっただけだから。


「てや!」


 気を取り直したモスリーンの一撃がうっかり御用だの群れを薙ぎ散らす。

 場外に吹っ飛ばされたうっかり御用だたちが燃えながらハラキリしようとするが、それより先に焼死しては光の粒子と化して戻っていく。


 まだまだ死なぬわが口から何かを吐き出す。

 気付いたモスリーンが慌てて飛び退くと、彼女の直ぐ横を通過していく黒い粒。

 なんだあれ? と思ったけど、彼のステータスを見れば直ぐに分かった。

 種マシンガン。なぜかスイカの種を吐き出すらしく、その攻撃を使ったらしい。


「ラ・ギア」


 モスリーンの一撃が種マシンガンを飲み込む。

 しかし種の速射の方が早く、まだまだ死なぬわに届く前に炎が消えた。


「ステータスブースト、スネークペイン!」


 刹那、モスリーンの動きが格段に上がった。

 投げ飛ばされたモーニングスターの鉄球が蛇のように蛇行してまだまだ死なぬわに襲いかかる。

 咄嗟に飛び退くまだまだ死なぬわ。しかし、モーニングスターが逃げた先まで追って来た。


「ぷぐらっ」


 腹に喰らったまだまだ死なぬわが変な言葉を吐いて吹き飛ぶ。

 床面を滑走した彼は、どさりと横たわる。

 直撃受けて倒されたようだ。


「勝者モスリー……」


「まだまだ死なぬわっ」


 倒したと思い勝者名を読みあげようとした先生。

 しかし、まだまだ死なぬわは再び立ち上がる。

 モスリーンの闘いは、まだ終わってはいなかったらしい。というか、これって終わりってあるのかな?

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