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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第ニ話 じゃじゃ馬嬢を止める術を彼らは知らない
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その柩の中がどうなっているのか、誰も知らない

「よぉ、生きてたのかカイ……」


「邪魔すんぜ」


「邪魔すんなら帰れクソガキ」


 武器屋に入ると同時におやっさんの言葉を遮りカインが告げると即行どこかの漫才みたいにおやっさんが怒鳴るような声を出す。


「相変わらず俺に酷くないか?」


「あぁん? モテる奴は皆そう言うぞ」


 カインだけじゃなく女の子侍らせているような男は全てこの態度なんだとか。おやっさん、僻み過ぎです。

 いや、わかるよ。

 自分は武器屋としてカウンターにいる厳つい男。

 その客として来るバカップル。剣の場所できゃいきゃい。斧を相手に私持てなーい。じゃあ見てろ。俺が持ち上げてやるぜ~。きゃぁ~。みたいなのが無数にやって来るのだ。

 そりゃあイラッと来るよね。


「はっ。いいのかクソ親父。俺をないがしろにしちまってよ? こんなの……あんだがなァ?」


「ぐぬぅっ!? 新作だと!?」


 カウンターに詰め寄ったカインが写真を数枚おやっさんに見せつける。

 あ、最新作だ。アルセ可愛い。

 あれは多分鮭の魔物と水掛けしてるところだな。


「ぐぅぅっ。チクショウ、テメェ大好きだコノヤロォ」


 おやっさんは写真を奪い取ると涙ながらにバンッとカウンターを叩く。


「そら、何が望みだカイン。買い取りだろ。しっかり色付けてやるぜ!」


「いいのか。今回は大量だぜ?」


 ニヤリとほくそ笑むカイン。

 なにせ最後の最後、ツッパリくんが倒した数十体の狼モドキの肉があるしね。

 うん、大量。


 しかもその大量の死体は全て持ってきている。

 どうやって? って?

 なんとクーフの柩が四次元なボックスっぽい感じらしい。要するにあの便利な空想世界の宝物、アイテムボックスらしいのだ。


 血だらけの死体を全てそこに詰め込んだ。

 スマッシュクラッシャーやワーダイルの死体を持ち運ぶのは難しかったけど、ワーダイルの皮だけは剥いだし、帰りのスマッシュクラッシャーの一部はアイテムボックスに入れられている。

 ちなみに、中にどれだけ入っても容量は一定、柩の重さらしい。

 それだけでも十分重いんだけどね。


 まさにその宝物庫の内部がどうなっているのか、誰も知らないってヤツだね。

 人間を入れると窒息するらしいから覗こうとしたカインたちが慌てて一歩引いてたのが思い出される。

 さすがのアルセもなんとなく危機感を覚えたらしく柩の中に入ろうとはしなかったしね。


 クーフ曰く、自分は既に死んだ身なので中に入っても問題無いらしい。

 本当、謎のアイテム箱というか柩である。

 普通の人には持ち運びすらできないからクーフ専用アイテム箱になるのか。

 盗難の心配がないからいいよね。


 クーフが柩……これからは宝物庫と呼ばせて貰おう。

 宝物庫から様々な死骸を取り出して行く。

 ああ、おやっさんの顔が見る間に青ざめている。


 まぁ、当然だね。部位を剥ぎ取りせずに死体を直接取り出したから、その……死臭が。

 ほら、密室に充満するというか……ちょっとクーフさん、これある意味テロ行為! ちょっと止めよう。店に人が来なくなるからっ!!


「待て、そこのバケモンちょっと待て! お前ら俺の店を潰す気かッ!?」


 涙目のおやっさんの心の叫びに、さすがにカインが止めに入る。


「お前らそれすぐにしまってこっち来いッ! 毛皮や爪とかならともかく死骸の引き取りは御免だ馬鹿野郎ッ。屠殺場かしてやるからテメェらで捌いてから売りに来いッ!!」


 ごもっともな御意見でした。

 というわけで、クーフとバズ・オークが死体を片しておやっさんに連れられて屠殺場という場所へと向かう。

 保護者としてネッテがかなり嫌そうに一緒に向って行った。


 カインはお前が責任者だクソガキッ! というおやっさんの命令により血で汚れた床の拭き掃除。

 リエラも屠殺場に行く気にはなれないようでカインの手伝いで拭き掃除である。

 アルセ? 当然いつもの如くくるくる踊っていらっしゃいます。

 ほんと、彼女はブレないねぇ。


 とりあえず、僕はリエラにアルセの監視をお願いして屠殺場見学へとやってきた。

 まぁ、アルセから目を離すのは恐いけど拭き掃除見てるだけとか暇だし。

 アルセを連れて行かないのは子供に見せるべき物じゃないでしょ魔物の解体とか。


 屠殺場。

 どうやら時々今回のカインたちみたいに現物しょってやって来る馬鹿がいらっしゃるようで、ならいちいち町から出て解体作業して鮮度落とすよりは屠殺場増築しちまえ。というおやっさんの剛毅さで造られた掘立小屋みたいな場所だった。


 血生臭いといった臭いはない。

 おやっさんの話だと毎回使った後には一滴の沁みすら残さず水洗いというか洗剤洗いで綺麗に部屋中掃除してるんだと。

 ちゃんと排水溝もあり、全体的に排水溝の辺りがくぼんでいるので水を流すと全てそっちに流れるように造られている。


 壁は木造でもコンクリートでもない。なんて言えばいいんだろうか? おやっさん曰く血が付いても洗い流す事の出来る鉱石らしく、ブラッドライトという名前の鉱石から造られた壁なんだと。

 材質自体がもうよくわかりません。おそらく僕の知ってる鉱石とは違いこの世界特有のモノではないかと思われます。


 で、そんな部屋も、クーフが柩から無数の獲物を取り出せば、たちまちに死臭漂う屠殺場へと早変わり。うん、普通に屠殺場と言われても納得できる状況になりました。

 ネッテさん頑張って。吐いちゃダメですよ。

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