そのストーカー被害が周囲に及ぶのを彼は知らない
「な、なんなのあの子は!」
お昼になって、僕らは学食で食事をしていた。
そこへ、不意に聞こえた声だった。
その少女を見れば、視線は忌々しげに僕らに向けられている。
否、その視線の先には三人娘があった。
アルセ、ネフティア、のじゃ姫の三人だ。
声を荒げていたのはこの前のハロイア嬢だ。
どうやらロリコーン侯爵と隣に座っていたのじゃ姫がお気に召さない様子。
ロリコーン侯爵に汚れた口元を拭かれたり、水の入ったコップを渡されてんぐんぐしてたりと甲斐甲斐しく世話されているのを見て憤慨しているらしい。
まぁ自分が惚れた相手が他の女の子、しかも幼女の世話をしてたら面白くはないよね。
人を殺しそうな目で見つめるハロイアさん。すぐ隣の友人たちがまぁまぁと宥めているけど、あまり意味をなしてない。
ハロイアさんはむすっとした顔でのじゃ姫を睨んでいる。
あー、これはまさかのじゃ姫とキャットファイトの予感ですか?
おいおい、あのロリコーンで変態な魔物に惚れるとか、奇人過ぎるでしょ、しかも嫉妬深いって。
嫌な予感ひしひしするなぁ。と思いながらアルセが笑顔と共に向けて来たイチゴと思しき青い果実をパクリ。うん、美味しいよ。ありがとうねアルセ。
お返しのケーキだよ、はいあーん。
そして僕もまた、ストーカーさんの嫉妬の視線を受けて慌ててケーキをルクルさんにあーん。
ふぅ、これはモテてると言えるのか、微妙なところだなぁ。ルクルさんがかなり怖いよ。
何しろいつでもどこでも僕の近くいるからなぁ。
食事を終えて休憩時間も少なくなったので中庭に向う。次の授業は召喚学だ。
そんなアルセとのじゃ姫のもとへ、ハロイアさんが現れた。
他の面々は各々の授業に向い、ロリコーン紳士はこちらにルグスがいるのでネフティアを見に行ってしまった。
「ご機嫌よう。のじゃ姫さん」
ハロイアさんは両手を胸のあたりで組んで不敵な笑みを向けて来ていた。
すぐ後ろに居る三人の女子がアルセに掌を縦にしてごめんね。とジェスチャーしている。
どうやらハロイアさんの暴走に付き合ってくれる気の良い友人たちらしい。
「のじゃ?」
「単刀直入に言うわ。侯爵様を賭けて、あなたに決闘を申し込みます!」
え? ええ。えええええええええええええええええええええええええっ!?
ちょ、いきなり何言ってんのこの娘。
暴走し過ぎでしょ。どんだけロリコーン侯爵好きなんだよ!
ハロイアさんの姿は確かにロリコーン侯爵好みのロリ体型だ。ただし、彼から言えばロリババアに類してしまうだろう。
残念ながら彼女の年齢がロリコーン侯爵の趣味から外れているのだ。
ちなみに、下はかなりの幼女でもイケるロリコーン侯爵なのだが、八歳以下はペドと呼ぶらしい。ロリコンは八歳からだそうだ。どうでもいい豆知識だけど、多分この世界の神様も知らなかったんだろう。幼女全てをロリコーン侯爵は好きらしい。
ついでに言えば年の離れた状態ならロリコーンで問題無い範囲だと思うんだけど、この侯爵様の守備範囲はぎりぎりネフティアが入るくらいなのだからソレ以上はアウトオブ眼中なのだそうだ。
不憫だなぁハロイアさん。もう少し若ければアイツの守備範囲だったのに。
のじゃ姫は何を言われたのか理解できずに呆然とハロイアを見上げていた。
そして「のじゃ?」と可愛らしく小首を傾げる。
その可愛さに一瞬キュンときたらしいハロイアさんはそれが悔しかったらしく地団太踏んで悔しがる。
「と、とにかく放課後戦闘よ戦闘! パーティー仲間三人を連れて来なさい! こっちの三人を含めた四人で勝負よ!」
自分のパーティーを連れて来い、と。でもさ、のじゃ姫のパーティー今居ないんだけど。
これ、もしかして召喚された奴だけで戦えってこと? いや、まぁ四人分のパーティーメンバーはいるけどさ。殿中でござるとか殿中でござるとか殿中でござるとか。
これは危険だな。
いや、でものじゃ姫のパーティーとしてなら……ふむ。まぁ負けてもロリコーン侯爵とあの娘がくっつくだけだし問題はないか。
珍しく侯爵好きになった女の子だし、むしろ嬉しいことだよな。
アルセも今回は手伝う気はないらしい。
大丈夫だよみたいにのじゃ姫の頭を撫でている。
背伸びするお姉ちゃんの図……カシャカシャカシャ。
ふぅ、いい絵が撮れた気がするゼ。
良い仕事ができました。脳内ファイルを見ながら自己満足。
あっと、そろそろ召喚学が始まっちゃうよ。
僕はアルセとのじゃ姫を引っ張って歩き出す。
ルグスとルクルは良く分かってない顔で顔を見合わせていたけど、こいつらほんと役立たなかったな。俺が助けてやるぜのじゃ姫。みたいな台詞一つ言えないのかい。
え? 僕? アルセに被害が及んでないから終始応援です。
今回はバグらせる人もいなさそうだから気が楽でいいよね。
アルセと一緒に楽しませて貰うとしよう。




