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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第八部 第一話 そのストーカーをストーカーしていた少女を僕は知りたくなかった
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その動いていた草がなんなのかを僕は知らない

 そこは森の一角だった。

 丁度クソ猿どもの居る山に登る手前の森。

 そーっと木々の合間からこちらを覗くのはカレーニャーの群れ。


 そういえばこの近辺こいつらが居たね。

 頭だけこっちに向けて来るカレーニャーが居れば、なぜか尻だけ向けているカレーニャーもいる。

 お尻向けてるカレーニャーは時々尻尾が上下に振れるのがちょっと可愛い。


「おー」

「れー「ちゅー」にゃー」


 アルセとレーニャがおーいと手を振る。

 ソレに気付いたカレーニャーたちが恐る恐る近づいて来た。

 そこへアルセがアルセギンの頭を差し出す……ってこら、アルセ、カレーニャーに玉葱ダメだからっ。


 カレールーバーを舐めるレーニャの横で玉葱出してたアルセから玉葱奪ってポシェットにしまう。

 アルセ、ポシェットから玉葱をだす。

 だからダメだってば。


「にっ」


 僕らのやりとりに気付いたらしいにっくんが寄って来てアルセを窘める。

 むーっと膨れるアルセだが、ネフティアが首を振るのを見て仕方無いっと諦めてくれた。

 え? 何これ、僕の行動じゃやめないのにネフティアたちに怒られたら言う事聞くの?

 こ、これが……反抗期っ!?


 カレーニャーたちの森を掻きわける。

 ガサリと何かが聞こえた気がした。

 どうやら上空の木に何かいるらしい。こちらからは見えないけど。


 しばらく森を歩いて行くと、少し開けた場所を見付けた。

 ふんだんに草が生えた場所だ。

 アルセは依頼の草を探してうんしょっと引っこ抜く。


「オルァァァァァァァァ――――――――――っ!!」


 ちょ、アルセ、それマンドラオルァ!? 喰った!?

 ネフティアとのじゃ姫は草を確認しつつ目的の草を引っこ抜いているが、アルセは別の珍しそうな草しか引っこ抜きません。


 にっくんは引き抜く術を持たないので応援だ。

 ワンバーちゃんとレーニャも引き抜きはしたのだが、油塗れにカレー塗れで使えそうになかったので応援と警戒に回って貰いました。

 ルグスと侯爵がせっせと幼女たちのために草を引っこ抜いているのを眺めていると、アルセさんがなんか変なの引っこ抜いた。


「もこっ」


「おー?」


 なんか動いているみたいなんだけどアルセに隠れて何を引き抜いたのか見え……Noっ!? やっぱ喰った!?


「もこ――――っ」


 断末魔の悲鳴が聞こえた気がする。いや、僕は何も見なかった。僕は何も見なかったんだ。

 もぐもぐしてるアルセがこちらを見ててへりと笑みを浮かべる。

 ほんと、やんちゃになって来たねアルセ。できれば僕の言う事も聞いてあげてね。反抗期は止めてください。


「かーれーにゃー」


 突如、そいつはやって来た。

 もぐもぐしていたアルセも気付いてそちらに顔を向ける。

 丁度ワンバーカイザーの前に姿を露わしたのは、レーニャを幾分スマートにした黒いカレーニャー。

 魔物図鑑を見るに、どうやら辛口カレーニャーらしい。

 じゃきーんとカレーで出来た爪を煌めかす辛口カレーニャー。

 アルセは笑みを浮かべてアンブロシアを取り出し……


 ばっとそれが奪われた。

 掲げたアルセの手からアンブロシアが消え去り、黒い影が地面に落下する。

 驚くアルセの横に居たのは……


 ミーザルじゃないか!?

 お前のアンブロシア奪ったの俺。俺俺俺っ。と自己主張しながらきーきーと鳴き叫ぶ。

 お、アルセが怒った。それは辛口カレーニャーにあげるのっ。とばかりに「おーっ」と叫んだアルセがマーブルアイヴィを発動する。

 しかし、華麗なステップで完全回避するミーザル。

 うっきゃうっきゃと両手を叩いてアルセを挑発する。


 ソレにイラッときたらしいアルセの花弁が回転を始める。

 高速で回転しだした頭上の花から、花弁という花弁がミーザル向けてガトリングガンのようにズダダダダと襲いかかる。

 何ソレ、今の何アルセさん!? なんか攻撃スキルにしか見えなかったんだけど!?


「うきゃーっうきゃっ、うっきゃーっ!?」


 慌てて逃げるミーザル。その光景を見たカラクチカレーニャーが恐れをなして逃げ出した。

 遠くの木に隠れ、頭だけをこちらに出して見つめだした。

 ちょっと可愛い。


 アルセの怒りを一身に受けるミーザルは周囲の木々をなんとか上手く使って三角飛びで木々を跳んで行く。

 アルセの花弁が全て無くなり、連撃が止まる。

 ふふぃと息を吐いたミーザルは、アンブロシアをカプリ。


「お、おおおぉ――――っ!?」


 あ、あ――――っ!? 食べた。私のアンブロシア食べたーっ。みたいな顔で頭上のミーザルを指差すアルセ。

 次第目元に涙が溜まる。

 嘘ッ!? アルセが、あの笑顔のアルセが泣く、だと!?


「フオォォォォォっ!?」


 幼女を泣かせるとはなにごとか。ロリコーン侯爵が木に突撃し、そのまま垂直に駆け上がる。

 あいつもいろいろおかしくなってきたなぁ……

 ミーザルのもとへ辿りつくと百枝刺しを叩き込む。

 先程の連撃よりも鋭く早い連撃を、しかしミーザルはことごとく避けていた。


 自己主張しながら侯爵の攻撃を避け続けるミーザル。

 イラッと来たらしいロリコーン侯爵の攻撃が乱れた瞬間、待ってましたと逃げ出すミーザル。

 さすがというかなんというか、さっさと逃げたミーザルはすぐさま見失ってしまった。

 僕は泣きだしたアルセの頭を撫でて慰めるしか出来ませんでした。

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