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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その宗教の誕生を彼女は知りたくなかった
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その神の裁きを彼は知りたくなかった

「ふざけんな。ふざけんなクソがぁ――――ッ」


 不意に、男が叫び起ちあがった。

 聖女の列に並んでいた民衆がびくりと驚き怯えたようにそいつを見る。

 勇者、ヘンリー。

 彼は五体満足で立ち上がると、カインを睨む。


 僕は図鑑を開いたままアカネさんに手渡した。さぁ、上手く頼むよアカネさん。

 アカネは僕の意図を察したようで、黒い笑みを浮かべながら高らかに声を上げた。


「皆様落ち付いてください。もう、彼は何も出来ません。既に神は愚かな勇者に鉄槌を下されました」


 ざわつく民衆にアカネはリエラを指差す。


「神はアルセを我等に遣わし、聖リエラを聖女へと昇華されました。そして彼らをないがしろにし、国に黒死を齎したヘンリーに自ら裁きの鉄槌を降ろしたのです」


「ふざけんなテメェ! 殺すぞ変態女っ!」


 全裸で魔法を打ち出すアカネを見ているせいだろう。というか、今も本人気付いてないけど全裸なんだよね……まぁ、アカネさん普通に堂々としてるから慣れたのかな。ようこそ変態の園へ。

 ヘンリーが喚く。しかしアカネは見下すようにふふんと鼻で笑った。


「あなたこそ、自分の身体の変化に気付いてないのかしら? 茶道勇者様」


「茶道? 何言ってやがる。俺は……」


「スキル、使えるかしら?」


「はぁ? そんなもん英雄のリターン・帰還エインフェリアルっ、おふぉぅ!?」


 刹那、ヘンリーの尻から極太レーザーが飛び出し地面を抉った。

 ああ、一応もともとのスキルでも発動するんだこれ。英雄の帰還はすでにケツレーザーに変化している。良かったねヘンリー、一つ上のデッドランドハーヴェスト使ってたらハードモットさんたちが野獣のように襲いかかってきたところだぜ?


「な、なんだこりゃっ!?」


 尻部分の防具が消し飛んだのを見たハードモットさんたち三人組が生唾飲み込んでるのは見なかったことにしよう。

 何が起こったのか理解できなかったヘンリーは近くに飛ばしてあった剣を取ろうと動きだす。

 しかしその場から動けない。移動不可の彼はどんなに動こうと走ろうと、その場から動けないのだ。


 意味不明の現象に周囲の方が呆然としている。

 彼は何故その場から動くことなく走る真似をしているのだろう?

 跳ぼうがスライディングしようが寝転がって転がろうがその場に固定されたように動くことが出来ないでいる。


 まるでピエロのようなパントマイムに、思わず女の子がぷっと吹き出した。

 多分孤児の女の子だろう。汚い容姿の彼女を皮きりに、民衆もヘンリーを見て笑いだした。

 イラッとしているヘンリーに、アカネが笑いながら魔剣カカロッソ……魔剣の形状変わっとる!?

 猿の尻尾みたいな刀身の剣を受け取ったヘンリーは、ただただ唖然とその剣を見つめていた。

 そりゃそうか、さっきまで魔剣ガゾットだっけ、として存在していた剣が尻尾剣になってるんだから。


「真空波斬!」


 刹那、バグったスキル【飛べカツラ!】が発動し、周囲の男達のカツラが浮き上がった。

 本人から数センチ空高く上がったカツラ達はその場でくるくると回りだす。

 爆笑の渦が広がった。


「ば、バカなっ、くたばれツムトゥイヘル屑共デァアップシャオム


 刹那、初期魔法ア・シが発動し、ヘンリーの目の前に毛深い生足が地面から生えた。

 意味不明過ぎて腹が痛い。思わず笑っちゃうよこれ。腹捩れる。

 目を点にしたヘンリーは目の前に現れた、多分おっさんの足を呆然と見つめていた。次の瞬間、鼻を摘んで仰け反る。


「くっせぇっ!?」


 どうやら歩きまくって蒸れた足だったようだ。

 悪臭放つ生足を思わず切り裂く。攻撃属性・回復が発動し、足が回復した。

 うん、見た目全く変わらんわ。


「どうなってる? どうなってやがんだこれは!?」


「ほら、これがあんたの今のステータス。ぷぷーうぷっ」


 笑いながらヘンリーに近づき魔物図鑑を見せてやる心優しいアカネさん。

 またの名を鬼畜とも呼ぶのだけれど、彼女の持つ魔物図鑑を見たヘンリーは意味が分からずその場に崩れ落ちた。


「な、なんだこの意味不明なステータス?」


 種族EROニンゲンだしなぁ。ここまでバグって誤字だらけになってスキルなのにちゃんと別の効果が発動するのが訳分からん。多分神様が面白がって誤植のスキルをそのまま普通のスキルとして作りだしたんだろうけど。絶対、赤穂速突破とかのスキル今まで無かったはずだし。

 なんだよ阿呆人・起動って。


「ま、というわけで、アンタそこから一生動けなくなったみたいよ」


「……う、嘘だろ? な、なぁ? お、お前が何かしたんだろ? 直せよっ? 直してくれよっ! こんなの死罪より人としての尊厳無視してるだろ、なぁっ!」


「知らないわ。それに私がやった訳じゃないし。神様にお願いしなさい。もしかしたら、聖女様なら何とかしてくれるかもねー」


 あ、こらアカネ、これ以上リエラの心労増やさないで。いや、僕も結構負担増やしちゃった気がしないでもないけどさ。ほら、アルセの血でステータス回復したからリエラは慢性胃炎回復して……ちょぉっ!? なんでリエラのステータスにもう中度慢性胃炎付いてるの!?

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