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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その黒死の暴威を彼らは知りたくなかった
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その骨が本当に役立つのかを彼らは知らない

「ぎぃやあぁあぁあぁあぁっ」


 辺り一面、男のきったない悲鳴が響き渡った。

 男、というか……骨のね。

 ただいまルグスさん、全身の骨に鼠のような犬のような生物にしゃぶりつかれてます。

 ラットドッグという魔物で、骨が好きなのようです。僕らを無視してルグスに突撃してしまった。

 ルグスに噛みついているので下手に攻撃出来ないし、皆困ったような顔で見るしかなかった。


 あ、こらアルセ、ネギで突かない。こっち来たらどうすんの!

 とりあえず、クーフがアイアンクローで一匹づつ撃破したり、カインとパルティが剣で撃破するが、全部引き剥がすのに結構時間が掛かった。

 殆ど戦闘をしてないらしい五階層の魔物達がこぞってルグスに集まってくるのだ。数が物凄いことになっていた。


 多分、先発隊は恐怖の生物エルフどもがいたせいで敬遠されたんだろう。その分の魔物たちがこっちに来ている感じすらする。

 肉食系、多いからなぁ。エルフとかエルフとかエルフとか。


「しかしルグス。その姿で犬に噛みつかれていると、大魔導師には見えんな」


「ええい、黙れ颯太」


「にしても、バットラットにラットドッグ、もう一種類くらいはいるかと思ったけど? いないわね」


「あのフリアールとかいうノミじゃないんですか?」


 ぎゃあぎゃあわめくルグスを放置して、ミルクティが周囲を見回す。

 そんな彼女に返答するパルティだけど、うん、多分それが三種類目だと思います。

 そういえばこのネズミンランド、大体一階層に三種類の魔物だよね?


「何階層まであるのかしら?」


「わからんが、とにかくあの外道勇者なら最下層で待ってるに違いない。そういうの好きな奴だからな。途中で俺らをやり過ごして地上に戻ってるなんてことは、多分やらない。俺が悔しがるのをみたいらしいからな。生死不明になるよりも力尽き掛けでやってきた俺を殺してネッテの前に晒す事を選ぶはずだ」


 どっちにしたって外道だね。再会一番バグ弾確定かな?

 ねぇアルセ? アルセ? 何してんの!?


「ひ、姫、いけません。それは、それは私の大腿骨ですぅっ」


 ラットドッグにより折り取られたらしい大腿骨をアルセが拾ってネギと一緒に両手で掲げて踊ってます。

 やめたげてアルセさん。ルグスが可哀想だから。

 というか、ここまで全く見せ場ないよルグスさん。何のために連れて来たの? まさかボケ要員?


 さすがにアルベルトやクーフもルグスがお荷物化してるのがなんとなく察せてしまっているようです。

 口にはしないけど生温かい目を送っている。

 あ、ワンバーカイザーまで参加しだした! 一応犬だから骨しゃぶってやがる。

 そして油塗れになった大腿骨を回収し、泣く泣くくっつけるルグスさん。

 アンデッド用の回復魔術で元に戻す。


 ああ、そうか。

 あの勇者、アンデッド操れるんだっけ。

 だったら確かにルグスを連れて来たのは正解だよアルセ。

 僕は思わずアルセの頭を撫でる。

 なぜ撫でられたのかは理解できなかったようだけど、アルセは微笑みで返してくれた。


「さて、この階段で六階層か。フレイムベアー、頼む」


「がぁーっ」


 フレイムベアーが先行する。地面を焼いてフリアールを撃破していく。


「お、やった、またレベル上がった」


「レベル?」


「ありゃ、パルティちゃん知らない? 魔物倒すと経験値入ってレベルが上がるんだよ。パーティー組んでるとパーティーメンバーが撃破した経験値も入ってくんの。人数分に分散されるけどね」


 マジかミルクティさん。この世界レベル制なの!?


「ちなみに私は独自のステータス表示で見れるけど、クーフさんだっけ、これ使える?」


「ふむ? いや、出来ないらしいな。おそらくユニークスキルの類だろう」


「私も出来ないな。世界が違うからか? それともそういうスキルを覚えていないからか、研究の価値はありそうだな」


 ルグスも参加してぶつぶつと思考の海に入りだした。

 あの、ルグスさん、またラットドッグがろっ骨に噛みついてるんだけど……

 ルクルさんがカレーぶつけて撃退してくれたけど、ルグスの肋骨がカレー塗れになりました。

 たぶんワンバーちゃんの食事になります。

 アルセがワンバーちゃん抱えてルグスに近寄ってったし。


 下層の安全を確保したフレイムベアーが戻ってくる。

 手招きされたのでカインを先頭にして後を追って階段を進む。

 パルティがまた僕の裾を掴んで不安げにぎゅっと力を込めた。


「なんだこりゃ……」


 五階層までとは一変し、六階層からは鍾乳洞みたいな洞窟になっていた。

 暗さは変わらないけど地面がでこぼことしだしていてひんやりしている。

 逆向きに地面から生えた氷柱のような突起が無数に突き出ていて歩くのに苦労する。

 しかも地面が濡れているせいで滑りやすい洞窟だ。

 周囲からは鼠の移動する音や気配が無数に聞こえる。


「お、こりゃあすげぇ……クリスタルラットじゃねぇか」


「アルベルト王、知ってる魔物ですか?」


「昔は希少種で有名だった。最高級クリスタルソードの材料だ」


 クリスタルソードの最高級って、結局一撃で壊れる儚い剣なのでは?

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